新任担当者のための会社法実務講座
第4章.機関 
第3節.役員及び会計監査人の選任及び解任
 

 

第4章.機関

第3節.役員及び会計監査人の選任及び解任

株式会社の所有と経営を車の両輪のようにして成り立っています。役員とは、その経営を担うもので、その経営を誰に任せるかによって、実際に株式会社の経営は大きく左右されます。ここでは会社法実務について述べていますので、実務面として、会社法のベースになっている役員の原則的なものと実情について簡単に述べておこうと思います。

ü 役員とは何か

会社法では役員を取締役、会計参与及び監査役をいう(329条1項)、としか言っていません。その意義については説明していません。同じ法律でも法人税法では、役員は経営に従事しているかどうかで判断され、会社法にはない「みなし役員」として税法上の経費判断を行っています。

ここでは、株式会社の経営を担っているものとして、3つの視点から役員の意義と機能、つまり役員に求められているものについて考えてみます。

@会社の視点

会社の視点から導き出される役員像は、全社的な意思決定や業務執行、監督等を担う会社組織のリーダーという姿です。多くの社員を擁する組織の舵取りを担う経営者としての役割で、そこに期待されているのは経営パフォーマンス最大化や持続的な成長です。

A株主の視点

株主から見れば、役員とは、会社の所有者である株主からの委任を受けて経営に当たる代理人です。企業価値を高め、株主と利益をともにする代理人としての役割で、そこに期待されているのは株主との利害の共有です。

B役員個人の視点

役員個人としては、高度な知識・能力・経験を要求され、日本ではそうではないかもしれませんが、海外の企業では人材獲得競争の対象となる。アメリカ企業のOfficerは経営の専門家として、優秀な経営者は業界を超えて引っ張りだこである一方で、業績があがらなければ解雇されます。

ü 日本の役員の特徴

一般的な原則としての役員像を見てみましたが、では日本の企業の中で役員とはどうなっているのかを簡単に見たいと思います。

@日本的経営と役員

ある時期の日本の高い経済成長をつくりだした日本的経営と呼ばれるものの大きな特徴は、企業組織が一体となって一つの方向に突き進んでいく、というもので組織内では終身雇用制のもとで社員は人生の大半を過ごし、中で横並びの競争をしていました。

役員も従業員も同じ企業の構成員同士であり、いずれも会社全体をよくしていこうという意識を共有している。役員が強いリーダーシップを発揮するというよりは、従業員からのボトムアップと社内関係者の調整のうえで物事が決まり進められていく。従業員のキャリアの連続性の先にあるのが終身雇用制のゴール、最高到達点としての役員というポジションが位置付けられ、従業員の誰もが役員になる可能性を持っていると意識させることで従業員の頑張りと組織の一体感が支えられていました。その結果、役員と従業員の間にあえて明確な線を引き、従業員のそれとは非連続的なスキル・経験を求めたり、従業員とは異次元の格段に高い報酬を払うということは日本企業の経営には馴染まない。これは役員も含めて人材流動性が低い状態をつくりだし、各企業における個別性・独自性を強め、組織内部で同じ背景を共有していることを前提とするハイコンテキストな企業文化を作り出していきました。結局、外部からは見えない暗黙的な常識・ルールが各企業の中で発達していきました。これが一時期の日本企業の成長を支えたのですが、その高い成長の後で、日本経済は構造的な長期不況に陥ります。

A日本企業の役員選任の手順

会社法では役員選任は株主総会の決議による(329条1項)と規定されていますが、実際には、どのような手順で役員の候補者が会社から株主総会に提案されるのかは、会社法を呼んでいるだけでは分かりません。上述の日本企業の役員の姿をみると、役員の原則で見た3つの視点のうち、株主の視点と役員個人の視点が欠けているのが分かります。それが例えば、株主、とくに海外の機関投資家の立場からは原則にのっとっていないように映るわけです。そこで、ある程度企業の実態を概括しておくことは、株主対策、あるいはコーポレートガバナンスの点からも必要になってきている。そのような知識があった上で会社法を読んでいく必要があると思います。

簡単に概観しますと、上場会社の半分以上しめる監査役会設置会社の場合、その多くの企業において、経営トップを含む取締役候補者の人選は、定時株主総会の選任議案の承認等といった形で取締役会決議事項にはなっているものの、取締役会における審議は形式的なものにとどまることも少なくなく、伝統的に、社長などの現在の経営トップが、役員候補者の人選を実質的に掌握している。つまり、社長が社内の従業員の中から候補者を選別し、それを形式的に取締役会が承認している。

このような実態について、役員候補者の選抜のプロセスが透明性を欠いている、あるいは、経営トップを含めた役員候補者の実質的な決定権が現在の経営トップの専権となっていることで、例えば、業績が低迷している局面手も経営トップを含む役員交代が行われないといった非効率を生んでいるのではないか、という指摘が近年なされています。とくに海外の機関投資家や議決権行使助言会社といったところから声がでていて、金融商品取引所や政府関係においても、それが企業の「稼ぐ力の強化」を阻んでいるのではないかとして、コーポレートガバナンス・コードにおいて役員選任の透明化や選任基準の公開を進める動機となっていると言えます。

〔参考〕海外主要国の役員の選任やガバナンス

@イギリス

イギリスと日本の取締役に関する法制上の共通点は機関構造として単層式の取締役会構造をとっていて、両国とも株主総会が取締役を直接任用します。イギリス。日本とみに取締役は経営執行と監督の両方を担う存在ですが、イギリスでは業務執行取締役と業務監督を行う取締役の役割を明確に区分することが求められています。イギリスの取締役会は監督機関であり、上場会社の場合は取締役会議長を除く過半数を独立取締役で構成することが求められています。監督を行う取締役は基本的に独立取締役である必要があり、業務執行取締役の監督の実務を司る指名・報酬の各委員会の構成委員は独立取締役中心に構成することが求められています。さらに業務執行を行う最高経営責任者(MD)と取締役会議長は兼務できず、アメリカなどに比べても、監督と執行の分離が徹底しています。

イギリスの会社法では業務執行取締役の任期は定められていませんが、ガバナンス・コードで上場会社についすては3年、FTSE350(ロンドン証券取引所に上場する企業の時価総額上位350社)の大企業については1年間の任期とされています。報酬契約については、年次で更新され、条件は毎年見直されます。

上場会社は取締役会の中に指名委員会を設置することを求められており、その過半数が独立の非業務執行取締役から構成されなければならないとされています。また、指名委員会は委員会に課せられた役割と権限についての文書を備えることが求められています。指名委員会は単に取締役の選任案を策定するにとどまらず、対象となる取締役に求められる能力、スキル、経験等を評価し、適切な役割と権限を設定することまで求められているなど、相当に強い権限が認められています。したがって、指名委員会のその活動について、年次報告書に年間の具体的な活動とその活動ポリシーについて開示することも求められています。

Aフランス

フランスでは法制度上、上場会社の場合は日本同様に単層式の取締役会構造あるいはドイツ型の2層構造を任意で採用できます。しかし、フランス企業の大半は単層式を採用し、2層式は一部の外国企業のみが採用するに止まっています。単層式の場合、取締役会は主に経営執行を監督する機関として機能しています。この場合、独立取締役が取締役会の過半数を占める必要があります。また、フランスでは「株主構成に近い取締役の構成」を重要視する傾向があります。とくに女性の登用については数値で目標値が定められているなど、取締役会のダイバーシティの維持に留意しているのが特徴的です。取締役会の業務執行取締役の人数は明確に規定されて這いませんが、単層式の取締役会を作用する場合に、取締役会に所属する業務執行取締役は最高経営責任者(CEO)だけであることが多く、アメリカに近いと言えます。取締役の報酬は取締役会の諮問機関である各種委員会で検討・起案されますが、これらの各種の委員会は、あくまでも諮問機関として取締役会への答申を行い、最終的な意思決定は取締役会で行うべきものとされています。また、上場会社の取締役の定年制を規定しているのも、フランスの大きな特色です。

上場会社の業務執行取締役は任用された時点で、会社との雇用契約を解除しなければならないとされています。フランスの上場会社の任用期間は最大4年で、年次報告書は取締役の任用開始日と終了日を開示することが求められています。

フランスの上場会社もイギリスと同様に、取締役会の中に指名委員会を設置することが求められています。上昇会社の指名委員会は、その過半数が独立の非業務執行取締役から構成されなければなりません。指名委員会の大きな特徴は、将来にわたる取締役の候補者計画策定を含めて、取締役についての検討と指名を行うことであり、株主から求められる取締役会の適正な多様性の維持、より適切な取締役の指名をする意味で中長期的なコミットメントが求められていると言えます。加えて、適切な後継者計画のため、報酬委員会と密接に情報連携することも求められています。

Bドイツ

フランスのところで少し踏ましたが、ドイツでは取締役会と監査役会の2層構造になっていて、日本の指名委員会等設置会社のモデルになっているとも言われています。ドイツの特徴は、経営執行に携わる取締役が監査役会のメンバーになることができないことで、監査役は株主から直接任用されます。また、共同決定法に見られる従業員の経営監督業務への参画は、日本にはないドイツ制度の大きな特徴です、また、取締役の任用・解任は監査役会の専権事項であり、取締役会の権限で取締役を選任・解任することはできません。ドイツの監査役会は、これまで見てきたイギリスやフランスの非業務執行取締役が一つの機関を構成しているものだと考えると分かり易いかもしれません。

ドイツでは、上場会社の業務執行取締役は、監査役会が監査役会内に設置した指名委員会の提案をもとに任命します。取締役の任用期間は最長で5年であり、再任は可能です。企業が従業員を取締役に任命した場合は、雇用契約を継続したまま任用することが多いです。さらに、取締役の解任も監査役会が行いますが、従業員取締役が解任された場合、同時に従業員として解雇するには重大な事由の証明が必要になるため、通常は会社を解雇されることはありません。指名委員会は取締役候補者の提案に加え、将来のサクセッションプランについても監査役会に提案することになっており、フランスと同様、コーポレートガバナンスの一環としてサクセッションプランが取り組まれています。

Cアメリカ

アメリカの場合は州ごとに根拠法が異なるので、一様ではないのですが、上場会社の本社の60%以上がデラウェア州に登記上の本社を置いているので、デラウェア州をアメリカ全体に一般化して見ていきたいと思います。

アメリカでは、イギリスや日本と同様に単層式の取締役会構造が採用されており、株主総会が取締役を任用する形となっています。しかし、日本とは異なり、アメリカでは取締役会は純粋に経営の監督機関になっています。事業執行に関しては専門職経営者としてのオフィサーを任用し、執行と監督が分離する形を採用しています。しかしオフィサーのトップである最高経営責任者(CEO)が、取締役会議長(Chairman)を兼務している場合も多く、執行のトップによる監督機関の支配として、しばしば議論にのぼり、近年、その分離問題が注目されていると言います。オフィサーは従業員として雇用契約を残したまま任用され、日本の執行役員制度の参考にもされていると言われていますが、株主から見れば一般に日本の執行役員制度は株主代表訴訟の当事者になることができない点でアメリカのオフィサーとは違います。

アメリカの取締役の任期は上場会社では通常1年であり、株主総会の過半数の投票をもって任用(再任)されます。一方、オフィサーの任用については定款で定めることになっていますが、5〜6年が最も多いとされています。アメリカではCEOが途中で辞任、もしくは解任されることは珍しくありませんが、定款や任用契約で任期途中の解任の場合の諸条件を定めている場合が多いため、フランスのように訴訟になることはありません。また、アメリカでは、CEOの解任を大株主の側から取締役会に働きかけることもしばしば見られます。

ニューヨーク証券取引所の上場会社規則は上場会社に対するコーポレートガバナンスについて規定していますが、アメリカの上場会社が設置している指名委員会は独立取締役から構成される組織で、取締役及びオフィサー候補者の要件定義、選定、評価、株主総会に対する提案の作成が主な任務となっています。また、アメリカの指名委員会が他の国と異なる点は、独立取締役から構成される小委員会に業務の一部を再委託できることです。

一つの事例として、実際の中堅企業(M社としましょう)CEO選任プロセスを簡単に見ていくと、このようなことが行われています。M社では1年前にプロジェクトをターとさせます。エグゼクティブ・サーチ・コンサルティング最初はエグゼクティブ・アセスメント、その会社の各々の評価を行うプロジェクト、その役員が外部、例えば同業他社に比べてどのような水準にあるのかというベンチマークすることから始まります。次いで次期CEOの人物像の設計、つまりどのような人材要素を求めるのかを固める。それに2〜3ヶ月。取締役会で定義された人物要件は幅広い経験と能力で、具体的には、業界に関する専門知識、業界における権力構造の正しい理解、グローバルに活躍するリーダーシップの専門性、株式市場における様々な経験、戦略的なビジョンと優れたオペレーション能力、ということだった。それに次いで9人リストアップされた内部候補者に対して徹底的なアセスメントと併行して外部人材を探す。半年前には、その候補者達にアセスメントのフィードバックとアドバイス、そのレポートを受けて取締役会(指名委員会)と候補者を絞る。指名委員会は、その絞った最終候補者との少人数ミーティングと面接を繰り返す。その数ヶ月で最終的に次期CEOを決定する。そういうプロセスでした。

ü コーポレートガバナンス・コードでの役員選任・解任についての項目

公開会社が実際に役員を選任及び解任する際のプロセスについて、会社法は形式的な手続きを規定しているだけですが、実質的な内容については、コーポレートガバナンス・コードが踏み込んだ内容の原則を示しています。ただし、コーポレートガバナンス・コードは法律ではなく、従って、規定内容に一言一句従わなければならないものではなくて、その原則の趣旨を理解した上で、自社の実状に応じたやり方を自身で考えるというものです。

該当する原則を以下にあげておきます。なお、これらの原則に関する説明は別のところで行なっているので、興味のある方はリンクで参照して下さい。

【原則3−1.情報開示の充実】

上場会社は、法令に基づく開示を適切に行なうことに加え、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から、以下の事項について開示し、主体的な情報発信を行うべきである。

(C)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続

 

【原則4−3.取締役会の役割・責務(3)】

取締役会は、独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行なうことを主要な役割・責務の一つと捉え、適切に会社の業績などの評価を行い、その評価を経営陣幹部の人事に適切に反映すべきである。

【補充原則4−3@】

取締役会は、経営陣幹部の選任や解任について、会社の業績等の評価を踏まえ、公正かつ透明度の高い手続に従い、適切に実行すべきである。

 

【原則4−9.独立社外取締役の独立性判断基準及び資質】

独立社外取締役は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定・開示すべきである。

 

【補充原則4−10@】

上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬等に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

 

【原則4−11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】

取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、多様性と適正規模を両立させる形で構成させるべきである。

【補充原則4−11@】

取締役会は、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。

第1款 選任

Ø 選任(329条)

@役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

A監査等委員会設置会社においては、前項の規定による取締役の選任は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別してしなければならない。

B第1項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この項において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。

取締役、監査役、会計参与等の役員は株主総会の決議によって選任します(1項)。

ü 取締役の選任

以下の説明は、便宜上、取締役の選任として進めますが、監査役や会計参与の場合は、取締役に準ずると思って下さい。取締役の選任は株主総会の普通決議、つまり議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で定足数を3分の1以上に定めた場合はその割合以上)を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の過半数(定款で、それを上回る割合を定めた場合は、その割合以上)の賛成で成立しますが、定款の定めによっても、その定足数を、議決権を行使することができる株主の議決権数の3分の1未満と定めることはできません(341条)。

2人以上の取締役を同じ株主総会で選任する場合、定款に別段の定めがない限り、各株主は、会社に対して累積投票により取締役を選任すべきことを請求することができます(342条)。ただし、実務上はほとんどの会社が定款に累積投票によらない旨を定めて、それを排除しています。なお、累積投票の場合、最多数を得た者から順次取締役に選任されますが、同数を得た者がいることによって選任する取締役の数を上回る場合には、同数を得た取締役のどちらを選任するかは、累積投票によらず株主総会の決議により選出します(会社法施行規則97条4項)。

※株懇モデルの定款

(取締役の選任)

第19条 取締役は、株主総会において選任する。

2 取締役の選任決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって行う。

3 取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする。

〔参考〕定時株主総会における取締役選任議案について、どのような手続で選任するか、株主総会参考書類における議案の説明について会社法施行規則73条、74条に規定があります。それに関する説明はこちらに。

ü 取締役の就任

会社と選任された取締役との関係は330条に規定されている通り委任の関係となります。従って、委任に関する民法の規定(民法643条〜656条)に従って、選任された者が取締役に就任するのは、会社とその人の間で委任契約が締結された時からとなります。つまり、株主総会で選任されたことが取締役の就任となるわけではないということです。しかし、実務上は、株主総会終了時に就任承諾書の提出を受けることになりますが、株主総会での選任決議を条件として、事前に就任承諾書の提出を受けるとてる会社が大部分で、その場合は、委任契約が株主総会の選任決議をもって発効するということになります。

ü 監査役の選任

監査役の選任手続きは、取締役の場合とほとんど同じで、原則として株主総会での決議によります。ただし、監査役の選任決議の際には、取締役の選任で認められていた累積投票が認められていない点が違います(342条)。監査役の選任手続において取締役の場合と違うのは次の点です。

・選任議案に関する監査役の同意権(343条1項、3項)

取締役は、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にはその過半数、監査役会設置会社である場合には監査役会)の同意を得なければなりません。言い換えれば、監査役・監査役会は、取締役が株主総会に提出する監査役選任議案に関しての拒否権を有していることになります。監査役の地位を強化するための一方策として定められているものです。

この同意を欠いたまま株主総会で決議した場合には、総会決議の取消事由になります(東京地裁平成24年9月11日)。

・選任議題・議案に関する監査役の提案権(343条2項)

監査役(監査役が二人以上ある場合にはその過半数、監査役会設置会社である場合には監査役会)は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とするよう請求することができまい。監査役の候補者を特定して、取締役に対しその選任議案を株主総会に請求することもできます。すなわち、監査役・監査役会は、監査役の選任に関し、取締役の意向に対する拒否権を有するだけでなく、積極的イニシアティブもとれる仕組みになっているというわけです。

・株主総会における意見陳述権(345条)

監査役は、株主総会において、監査役の選任について意見を述べることができます。他の監査役の選任について、また自分が再任されないことについて意見を述べることができます。監査役は、取締役が株主総会に提出する議案・書類に違法または著しく不当な事項があるときは総会に意見を報告する義務がありますが、345条の意見陳述権は違法または著しく不当な場合に限らす、たんに適当かどうかについても認められます。監査役が総会で意見を求めたのにその機会を与えなかった場合には、決議取消の事由になります。このように監査役に株主総会における意見陳述権を保障することにより、監査役の選任議案に対する取締役会の決定に監査役の意向がよりよく反映すること期待しているというわけです。

ü 取締役に欠員が生じた場合の措置(346条)

取締役が欠けた場合または法令もしくは定款で定めた員数が欠けた場合には、任期が満了または辞任により退任した取締役は、新たに選任された役員が就任するまでの間、なお取締役としての権利義務を有するものとされています(346条1項)。この場合でも、利害関係者は必要がある場合には、裁判所に一時的に取締役の職務を行うべき者(いわゆる一時取締役)の選任を申し立てることが出来ます(346条2項)。なお。欠員時における選任を怠った場合には100万円以下の過料の制裁が課せられます(937条1項2号イ)。

ü 補欠の役員の予選(3項)

辞任・死亡等により取締役や監査役に欠員が生じた場合または法令・定款で定められている最低限の員数を欠くことになる時に備え、株主総会において補欠の役員を選任することができます(329条3項)。補欠役員の選任は、一種の停止条件付の取締役選任ということなので、上述の規制が適用されます。なお、補欠役員の選任決議が効力を有する期間は、定款に別段の定めがない限り、その選任した株主総会直後の定時株主総会の開始のときまでです(会社法施行規則96条3項)。だし、株主総会の決議によってその期間を短縮することは可能です。

なお、補欠の役員を選任する場合には。次に掲げる事項も併せて決定しなれければなりません(会社法施行規則96条2項)。

ア.当該候補者が補欠の会社役員である旨

イ.当該候補者を補欠の社外取締役として選任する場合は、その旨

ウ.当該候補者を1人または2人以上の特定の会社役員の補欠として選任するときは、その旨及びこのT社の会社役員の指名

エ.同一の取締役(2人以上の補欠として選任された場合にあっては、当該2人以上の取締役)につき2人以上の補欠の取締役を選任するときは、当該補欠の会社役員相互間の優先順位

オ.補欠の取締役について、その就任前にその選任の取り消しを行うための手続

Ø 株式会社と役員等との関係(330条)

株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

ü 善管注意義務

会社と選任された役員との関係は、一般に委任に関する規定に従うこととされています(330条)。したがって、役員は、その職務の遂行においては、善良な管理者としての注意義務、いわゆる善管注意義務を負います(民法644条)。この注意義務の水準は、その地位・状況にある者に通常期待される程度のものとされ、とくに専門的能力を買われて役員に選任された者については、期待される水準は高くなります。

とくに取締役は、不確実な状況で迅速な決断を迫られる場合が多いので、その判断を事後的・結果論的に評価して注意義務違反の責任を問うのでは取締役の業務執行を萎縮させてしまう。そこで、たとえ取締役の積極的な行為によって損失を蒙ったとしても、その判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがなく、意思決定の過程・内容が経営者として特に不合理・不適切なものでない場合には、経営判断の原則により、善管注意義務違反には問われないとされています。

取締役が善管注意義務を問われる可能性が高いのは、他の取締役・使用人に対する監督(監視)義務の違反を含む不作為(懈怠)の分野です。

ü 不作為による懈怠となる監督(監視)義務の違反

取締役が善管注意義務は、他の取締役・使用人に対する監督(監視)義務の違反を含む不作為(懈怠)の分野で問題となるケースが多くなっています。監督義務に関しては、上場会社の代表取締役には、業務執行の一環として、会社の損害を防止する内部統制システムを整備する義務が存在します。

取締役の監督(監視)義務については、取締役が自己の業務執行権限外の事項に関して会社の損害が発生すると疑われるような事実を知った場合に、どこまで行動すべき義務があるか、例えば、取締役会において発言し、監査役に報告したにも関わらず何の措置もとられないとき、取締役は何をすれば注意義務違反(懈怠)とならないかという問題です。その取締役の能力等により違いがでてくることはあり得ますが、弁護士に相談する、事実を公表すると代表取締役に迫る、あるいは辞任する等の行動をすることが必要ではないかと解されています。

ü 経営判断の原則

取締役がその職務の執行にあたり善管注意義務等を尽くしたかどうかの判断にあたって取締役の経営判断は、不確実な状況で迅速に行う必要があることなどから広い裁量が認められるべきだと考えられています。これが経営判断の原則です。取締役の職務執行については、@取締役等の行為当時の状況に照らして合理的な情報収集・調査・検討等が行われたか、Aその状況と取締役等に要求される能力水準に照らして不合理な判断がなされなかったかを基準に問われるべきであり、事後的、結果論的な評価が為されてはならないということが、下級審裁判例における確定的な判断基準とされていました。

これに対して、近年、最高裁は、A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合であって、A社の取締役にB社株式の買取価格の決定(あらかじめ株式交換に備えて算定された上記株式の評価額が1株当たり6,561円ないと19,090円であったとしても、買取価格をB社設立時の株式の払込金額を基準として1株あたり5万円としたこと)についてA社取締役の善管注意義務違反が問題になった事例において、「本件取引は、…このような事業再編計画の策定は、完全子会社とすることのメリットの評価を含め、将来予測にわたる経営上の専門的判断に委ねられていると解される。そして、この場合における株式取得の方法や価格についても、取締役において、株式の評価額のほか、取得の必然性、Aの財務上の負担、株式の取得を円滑に進める必要性の程度等をも総合考慮して決定することができ、その決定の過程、内容に著しく不合理な点がない限り、取締役としての善管注意義務に違反するものではない」(最高裁判例平成22年7月15日)と判示しました。従来までの判断基準とされてきた経営判断過程の合理性を問題にするよりも、むしろ経営判断の内容の合理性に重点を置いた判断を示したと言えます。

〔参考〕取締役の法定義務

善管注意義務以外に会社法では取締役に義務を規定していますので、以下で概観します。

・忠実義務(355条)

取締役は、法令・定款の規定及び株主総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を行う義務を負う、というものです。これは善管注意義務を、会社法においてその内容を明確化したものと考えることが主流になってきています。ただし、善管注意義務ということが別に言われているので、便宜上、法律の範囲内で、会社のために、注意を尽くして働きなさいということのうち、「注意を尽くす」のが善管注意義務、「会社のために働く」のが忠実義務とわけているということです。

・競業禁止義務(356条1項1号、365条1項)

取締役は、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、重要な事実を開示して、取締役会の承認を得なければならない。

・利益相反取引回避義務(356条1項2号、365条1項)

取締役会設置会社では、取締役は、自己または第三者のために会社と取引をしようとするとき(直接取引)及び会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において会社と当該取締役が相反する取引をしようとする時(間接取引)は、重要な事実を開示して、取締役会の承認を受けなければならない。

※監査役の善管注意義務

監査役は業務執行を行わないので、取締役のような会社との利害対立に関する細かい規定は設けられていませんが、それは予防的・形式的な規制がないというだけであって、監査役が職務上知り得た会社の営業秘密を利用して私利を図る等の行為により会社に現実に損害を生じさせた場合には、善管注意義務市販の責任を免れません。

Ø 取締役の資格等(331条)

@次に掲げる者は、取締役となることができない。

一 法人

二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者

三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第197条、第197条の2第1号から第10号の3まで若しくは第13号から第15号まで、第198条第8号、第199条、第200条第1号から第12号の2まで、第20号若しくは第21号、第203条第3項若しくは第205条第1号から第6号まで、第19号若しくは第20号の罪、民事再生法(平成11年法律第225号)第255条、第256条、第258条から第260条まで若しくは第262条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成12年法律第129号)第65条、第66条、第68条若しくは第69条の罪、会社更生法(平成14年法律第154号)第266条、第267条、第269条から第271条まで若しくは第273条の罪若しくは破産法(平成16年法律第75号)第265条、第266条、第268条から第272条まで若しくは第274条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者

四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮(こ)以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

A株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし、公開会社でない株式会社においては、この限りでない。

B監査等委員である取締役は、監査等委員会設置会社若しくはその子会社の業務執行取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。

C指名委員会等設置会社の取締役は、当該指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。

D取締役会設置会社においては、取締役は、3人以上でなければならない。

E監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければならない。

ü 欠格事由(1項)

会社法は、取締役の欠格事由を次のとおり定めていて、これらの事由に該当する者は取締役になることができません。

・法人(1号)

→取締役は自然人に限られるということ

法人取締役を認めない理由として、取締役の職務は個人的性質であること、または個人に民事責任を課すことにより経営の適正を図る必要があることなどがあげられています。しかし、海外では法人の取締役資格を認める例が少なくないし、また、会計監査人や更生管財人には法人がみとめられていることから、法人の取締役を認めるべきという議論もあります。

・成年被後見人もしくは被保佐人または外国の法令上これらと同様に取り扱われている者(2号)

成年後見制度の対象は精神上の障害により判断能力を「欠く常況にある」者(民法7条)で、保佐人制度の対象は精神上の障害により判断能力が「著しく不十分な」者(民法10条)です。したがって、原則として、これ以外の自然人は取締役となる資格があります。したがって、未成年者も資格があるわけです。ただし未成年者の就任には後見人の同意が必要です(民法331条)

・犯罪者、とくに会社法、一般法人法、金融商品取引法、及び破産法等の倒産法制上の罪を犯した者(3号)

この者たちは罰金刑でも欠格事由となり、かつ、執行猶予中及び刑の時効が完成した後2年経過するまでの間も失格者となります。

なお、会社法上の罪を犯しても、執行猶予の判決を受け、執行猶予祖期間を満了したときは、刑の言い渡しが効力を失う(刑法27条)、その時に欠格者でなくなります。

・上記以外の犯罪者

この場合は禁固以上の刑に処せられ、その執行が終わるまでの間で、執行猶予中の者は、ここから除かれます。それだれ、前号の犯罪者はより厳しい規制を受けることになります。

欠格事由に該当する者を取締役に選任しても、その選任決議は無効であり、選任決議の内容の法令違反として無効確認訴訟の対象となります(830条2項)。

ü 定款による資格制限(2項)

定款上取締役の資格を一定の者に限ることは、会社の具体的事情に応じ不合理な内容でない限り許される、と考えられています。例えば、年齢(定年)、住所(本店所在地の居住者に限る)などによる資格制限は、合理的な内容の制限であり適法とされています。ただし、公開会社の場合は、取締役の資格を株主に限ることはできません(2項)。その趣旨は、取締役に広く適材を求めることが公開会社制度の理念と認識された結果であるためとされています。

ü 取締役の兼業の規制(3項、4項、335条、333条)

・取締役と監査役、または親会社の監査役とを兼任することは、取締役と監査役の職務の性質には相反する点があるため認められません(335条2項)。

・取締役と会計参与、または親会社の会計参与とを兼任することは、同じように認められません(333条2項)。

・監査等委員である取締役は、監査等委員会設置会社若しくはその子会社の業務執行取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができません(331条3項)。

・指名委員会等設置会社の取締役は、当該指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができません(331条4項)。

※取締役と同じ会社の使用人とを兼務する使用人兼務取締役は一般的です。

ü 取締役の員数(5項、6項)

取締役会設置会社の取締役は3人以上でなければなりません(5項)。しかし、取締役会設置会社以外の株式会社の取締役は、1人以上でも認められます(326条1項)。いずれの場合も、定款上、最低限あるいは最高限度の員数に関する定めをすることができます。実際には、取締役会設置会社の定款には取締役の員数の最高限度のみを定めて、最低限度は会社法の3人に従っているケースがほとんどです。

ü 取締役の員数について監査等委員会設置会社の特則(6項)

監査等委員会設置会社の場合は、前項の定めに加えて監査等委員である取締役は3名以上で、その3人の過半数以上は社外取締役でなくてはなりません。つまり、実際の最低限の員数としては監査等委員である取締役でかつ社外取締役が2名、その2名を含めて監査等委員である取締役は3名。これで、取締役会設置会社で求められる最低限の取締役3人は確保していますが、監査等委員である取締役は業務執行取締役と兼任することはできないので、業務執行取締役として業務執行に関する意思決定をするために監査等委員ではない取締役が必要となります。この場合は、取締役会設置会社としての取締役の最低限の人数は監査等委員である取締役の3人でクリアしているため、業務執行取締役は1人でも会社法の違反とはなりません。実務上は、監査等委員会設置会社の定款には、監査等委員である取締役と監査等委員でない取締役の員数が別々に規定されています。

Ø 取締役の任期(332条)

@取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

A前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

B監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員であるものを除く。)についての第1項の規定の適用については、同項中「2年」とあるのは、「1年」とする。

C監査等委員である取締役の任期については、第1項ただし書の規定は、適用しない。

D第一項本文の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査等委員である取締役の補欠として選任された監査等委員である取締役の任期を退任した監査等委員である取締役の任期の満了する時までとすることを妨げない。

E指名委員会等設置会社の取締役についての第1項の規定の適用については、同項中「2年」とあるのは、「1年」とする。

F前各項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、取締役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

一 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更

二 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更

三 その発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社がするものを除く。)

ü 取締役の任期

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうちの最終のものに関する定時株主総会の終結の時までが基本です。つまり、実質的には選任されてから2年後の定時株主総会まで、ということになります。定款または株主総会の決議によって、その任期を短縮することができます(1項)。実際のところ、最近の上場会社の少なくない会社が、コーポレートガバナンスや機関投資家の基準を重視して取締役の任期を1年と、定款に規定しています。

なお、剰余金の配当等を株主総会でなくて取締役会が定め得る旨を定款で規定する場合には、取締役の任期を1年とすることが条件となる(459条1項)ので、上述の事情と相俟って、取締役の任期を1年としている会社も少なくありません。

※株懇モデルの定款─取締役の任期を定款で1年に短縮している例

(取締役の任期)

第20条 取締役の任期は、選任後1年以内に終了すね事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

※全株式譲渡制限会社の取締役は10年まで取締役の任期を伸長させることができます。

※指名委員会等設置会社の取締役の任期は1年間です。

※監査等委員会設置会社の監査等委員でない取締役の任期は1年で、また、監査等委員である取締役の任期は2年で、かつ定款の規定による任期の短縮はできません。

※一般的終任事由

取締役の任期は、任期満了のほか、取締役の辞任、死亡、会社の解散、欠格事由への該当などにより終了します。任期途中で取締役が退任した場合、選任される取締役の任期を他の取締役と合わせるため、定款に取締役の任期について前任者の任期を引き継ぐ旨を規定している場合もあります。

※株懇モデルの定款─補欠・増員の任期を規定している例

第○条 補欠または増員として選任された取締役の任期は、前任者または他の在任取締役任期満了の時までとする。

ü 取締役の任期の起算点

会社法では、取締役の任期の起算点について、旧商法において「就任時」(選任後被選任者の就任承諾がされた時)とされていたものを、「選任時」(選任決議をした時)に改めました(1項)。これは、任期の起算点を「就任時」とすると、就任承諾は被選任者の意向に委ねられる結果、株主総会の選任決議と就任決議との間に長期間の隔たりがある場合などにおいて、任期の終期が株主総会の意思に反する事態が生じるおそれがあります。そこで、そのような事態を避けるため、会社法では、任期の起算点を株主総会のコントロールが及ぶ「選任時」とすることとしたものです。また、補欠の役員の選任決議は役員の条件付選任決議に当たるため、会社法上の役員の任期に関する規律は、補欠の役員として選任された者が、被補欠者が欠け、正規の役員に就任することとなった場合であっても適用されます。したがって、たとえば、補欠取締役として選任された者が正規の取締役に就任した場合には、当該取締役の任期については、就任時ではなく、補欠役員としての選任時を起算点とすることになります。

ü 経営体制を変更した場合の取締役の更新

経営体制の変更、例えば監査役会設置会社から指名委員会等設置会社あるいは監査等委員会設置会社に移行した場合、またはその逆の場合には、体制の変更の時点で役員の任期は満了となります。例えば監査役会設置会社から指名委員会等設置会社への移行が株主総会で承認されたとき、任期3年目の監査役は、その時点で任期満了となります。

同様に、全株式譲渡制限会社から株式の譲渡に対する取締役会の承認を撤廃した場合、つまり譲渡制限会社から公開会社に移行したときも同じように、役員の任期は満了となります。

Ø 会計参与の資格等(333条)

@会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない。

A会計参与に選任された監査法人又は税理士法人は、その社員の中から会計参与の職務を行うべき者を選定し、これを株式会社に通知しなければならない。この場合においては、次項各号に掲げる者を選定することはできない。

B次に掲げる者は、会計参与となることができない。

一 株式会社又はその子会社の取締役、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人

二 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者

三 税理士法(昭和26年法律第237号)第43条の規定により同法第2条第2項に規定する税理士業務を行うことができない者

株式会社は定款の定めにより会計参与を置くことができます(326条1項)。会計参与を置く株式会社が「会計参与設置会社」ということになります(2条8号)。会計参与は、公認会計士(監査法人を含む)または税理士(税理士法人を含む)の資格を有する者が就く会社の機関です。会計参与は、取締役と共同して計算書類を作成する権限を有します(374条1項)。

会計参与制度は、会社法の制定時に導入されました。主に会計監査人設置会社以外の会社で税理士をそれに選任する形で制度が運用され、中小企業の計算に会計専門家が関与することによって適正化を図ることを目的として導入されました。会計参与は、株式会社が任意に置くことができます(326条2項)。ただしも取締役会設置会社であって監査役を置かない会社は、会計参与を置く必要があります(327条2項)。

ü 会計参与の資格

会計参与は公認会計士もしくは監査法人、または税理士もしくは税理士法人でなければなりません(1項)。つまり、会計参与は自然人に限っているわけではないことになります。ただし、会計参与に選任された監査法人又は税理士法人は、その社員の中から会計参与の職務を行うべき者を選定し、これを株式会社に通知しなければならない(2項)。

会社法は、会計参与の欠格事由を次のとおり定めていて、これらの事由に該当する者は会計参与になることができません。

・株式会社またはその子会社の取締役、監査役、執行役あるいは使用人となっていること

会計参与は、その会社の業務執行者と兼任できません。これは、会計参与に期待される会社の業務執行からの独立性を保持するためです。また、監査役、会計監査人との兼務もできません。会計参与が自己の作成した計算書類を監査することができないのは当然ですから。

・業務停止処分を受け、その停止期間が終わっていない者

会計参与は、この業務停止処分により、処分日にその地位を失うとされています。

・税理士法43条の規定により同法第2条第2項に規定する税理士業務を行うことができない者

ü 会計参与の員数

会計参与の員数については規定がなく、とくに制限はありません。複数選任された場合には、それぞれが独任制の機関となるので、すべての会計参与と取締役の意思の合致がないと、計算書類を作成するもの支障となります。 

Ø 会計参与の任期(334条)

@第332条(第4項及び第5項を除く。次項において同じ。)の規定は、会計参与の任期について準用する。

A前項において準用する第332条の規定にかかわらず、会計参与設置会社が会計参与を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計参与の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

ü 会計参与の任期

会計参与の任期については取締役と同じ規律が当てはまられます(1項)。つまり、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうちの最終の年度に関する定時株主総会の終結の時までです。全株式譲渡制限会社においては、定款の定めにより、任期を10年まで伸ばすことができます。 

Ø 監査役の資格等(335条)

@第331条第1項及び第2項の規定は、監査役について準用する

A監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。

B監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

ü 監査役の資格(1項)

監査役の資格として自然人に限られること、一定の欠格事由が法定されていること、及び公開会社の場合には定款による資格限定に一定の制限があることは、取締役の場合と同じです。

ü 監査役の兼任の制限(2項)

監査役は、会社の取締役・使用人または子会社の取締役・執行役・使用人を兼ねることができません。監査する者と監査される者が同一であっては、監査の実があがらないからです。同じ理由から、監査役は、会社または子会社の会計参与を兼ねることはできません。

この規定は、監査役の欠格事由を定めたものではなく、監査役に選任される者が取締役等の地位を辞任することは選任決議の効力の要件ではない。兼任禁止にふれる者が監査役に選任された場合には、それまでの地位を辞任して監査役に就任したとみなされ、その監査役が事実上、それまでの地位を継続した場合には、監査の効力がないとは言えないが、その監査役の任務懈怠となり、監査の公正さ疑問を生じさせるという裁判所の判断例があります(最高裁判例平成元年9月19日)。ただし、ある者が監査役を務めるA社が同人が取締役であるB社を子会社にした等、監査役が後発的に兼任禁止にふれる地位についたときは、B社の取締役の地位を辞任せずにした監査は向こうとする見解が有力となっています。

※弁護士の資格を有する監査役が特定の訴訟事件について、会社から委任を受けて訴訟代理人となる場合、上記の兼任の制限に抵触しないという裁判例があります。ただし、顧問弁護士が監査役を兼ねることができるかについては実態をみて実質的に判断すべきとされています。

ü 監査役の員数(3項)

監査役会設置会社においては、監査役は3人以上でなければなりません。そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。これは過半数ではないので、例えば、監査役が3人の場合には、社外監査役は最低2人必要ですが、監査役が4人の場合には社外監査役は半数の2人が最低必要な人数となります。その他の監査役設置会社では1人でもよく、定款で事由に員数を定めることができます。

旧商法の下で、昭和56年以前には監査役の員数は1人とされていました。しかし、大会社の場合には取締役の業務執行を監査することが無理だという認識が広がり、2人以上とされました。さらに、平成5年の商法改正によって、企業の内容が複雑になったという一般的理由と合わせて、社外監査役制度が導入されたことに伴い、この制度の導入について、常任の監査役の員数の減少をもたらして総体的に情報収集能力を低下させるという批判に応えるという理由から、監査役の員数を3人以上とすることになりました。 

Ø 監査役の任期(336条)

@監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

A前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

B第1項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。

C前3項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

一 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更

二 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更

三 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

四 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

ü 監査役の任期

監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうちの最終の年度に関する定時株主総会の終結の時までです。法に定める場合にその任期が短縮されること(3項、4項)は別として、法定の任期を定款・株主総会決議により短縮することは認められません。これは、監査役の地位を強化し独立性を高めるためです。

なお、全株式譲渡制限会社においては、定款の定めにより、任期を10年まで伸ばすことができます。

取締役の任期と比較して重要なことは、監査役の任期の方が取締役の任期より長いというだけでなく、取締役の任期は2年を超えることができないというように最長限度だけが定められているのに対して、監査役の任期は、それを伸長できないだけでなく、短縮することもできないことです。このことは、監査役の独立性を保障するためで、監査役の任期を短くすることができるとすると、落ち着いて十分な監査をすることができなくなってしまうおそれがあるためです。監査役の任期については、会社の大小の規模による差異はありません。小会社の監査役についても、その独立性および地位の安定性は保証される必要が在るからです。

Ø 会計監査人の資格等(337条)

@会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならない。

A会計監査人に選任された監査法人は、その社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、これを株式会社に通知しなければならない。この場合においては、次項第2号に掲げる者を選定することはできない。

B次に掲げる者は、会計監査人となることができない。

一 公認会計士法の規定により、第435条第2項に規定する計算書類について監査をすることができない者

二 株式会社の子会社若しくはその取締役、会計参与、監査役若しくは執行役から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者

三 監査法人でその社員の半数以上が前号に掲げる者であるもの

会計監査人は、監査役と同じく株主総会で選任されるものですが、監査役とは異なり、会社の機関を構成するものではなく、会社の外部の者であって、会社との契約によって会計監査の委任を受ける者に過ぎないと一般的に解されています。

ü 監査役の資格(1項)

会計監査人の資格として公認会計士または監査法人であることが規定されています。会計監査の実効性を期すために、会計監査人の資格を、会計監査についての専門的能力を有する者に限定したわけです。取締役や監査役の場合と違って、会計監査人は自然人に限定されません。監査法人という法人でもいいのです。ただし、会計監査人として監査法人が選任された場合、その監査法人は、その社員の中から、その職務を行うべき社員を指名して、これを会社が通知しなければなりません(2項)。

ü 監査役の欠格事由(3項)

会計監査人の被監査会社からの独立性を維持し、監査の公正さを保障するとともに、会計監査人としてふさわしくない者を排除するため会計監査人の欠格事由を定めています。

会計監査人としての資格を有しない者または欠格事由のある者を会計監査人に選任しても、その選任は無効であり、また選任後にそれに該当すれば、その時点から会計監査人の地位を失うことになります。そして、そのような者が監査報告書を作成しても法律上の効果を生じません。

欠格事由の「公認会計士法の規定により、第435条第2項に規定する計算書類について監査をすることができない者」の具体的内容として、以下の者があげられます。

・その会社の役員(取締役又は監査役)であり、もしくは過去1年以内に役員であった者など、会社と著しい利害関係がある公認会計士(公認会計士法24条)

・その会社の株式を所有する監査法人なと、会社と著しい利害関係がある監査法人(公認会計士法34条の11)

・公認会計士または監査法人が虚偽または不当な監査証明をし、または公認会計士法またはそれに基づく命令に違反した等の理由により業務停止処分を受け、業務停止期間中のもの(公認会計士法29〜31条、34条の21)

Ø 会計監査人の任期(338条)

@会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

A会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。

B前2項の規定にかかわらず、会計監査人設置会社が会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計監査人の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

会計監査人の任期は、選任後選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(1項)で、これは、監査役の任期と同じように、伸長することも短縮することも許されません。任期が1年とされたのは、従来からの実務を考慮したものですが、任期が長すぎると会社との癒着が生ずる可能性もあるというしてきもあります。

取締役や監査役の場合と異なるのは、会計監査人の場合、選任の1年後の株主総会で別段の決議、つまり会計監査人を再認しない、または他の会計監査人に変更する決議がない場合には、その総会で再任されたものとみなされて、自動的に任期が更新されることになっている(2項)点です。

 

第2款 解任

Ø 解任(339条)

@役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

A前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

ü 株主総会の解任決議(1項)

役員及び会計監査人と会社とは委任の関係にありますから、委任は各当事者がいつでも解除することができます(民法651条1項)。この場合の決議は議決権を有する株主の過半数以上を有する株主が出席し、その出席した株主の過半数以上をもって行う(341条)、といういわゆる普通決議です。

旧商法においては、株式会社の取締役の解任は、その地位の安定に配慮し株主総会の特別決議を擁するものとされていました。これに対して、会社法は、株主総会による取締役の選解任を通じた取締役に対するコントロールを重視する観点から、決議要件を普通決議に改めました。なお。定款で解任要件を加重することはできます(341条)。なお、監査役の解任については、監査役の地位の安定のために特別決議とされていて、取締役の解任より重きをなしています。ちなみに、取締役の解任議案が提出された株主総会において、解任の対象とされている取締役には、監査役の場合とは異なり、意見陳述権を認められていません。

ü 正当な理由のない場合の損害賠償請求権(2項)

会社側からの委任関係の解除は、解任という形をとります。したがって、会社は、いつでも株主総会の決議によって解任することができる(339条1項)、ということになります。委任の解除は各当事者の一方的な意思表示によってできるものですから、解任の際に正当な理由の有無を問わず解任することができます、しかし、正当な理由がなく解任された者は、会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(339条2項)。このことは、株主に解任の自由を保障する一方で、役員及び会計監査人の任期に対する期待を保護し両者の利益の調和を図る趣旨で一種の法定責任を定めたものとされています(大阪高裁判決昭和56年1月30日)。従って、賠償すべき損害の範囲は、解任された者が解任されなければ在任中及び任期満了時に得られた利益(報酬、賞与、退職慰労金その他)の額とされています。

※正当な理由

裁判では正当な理由の存否がしばしば争われます。例えば、つぎのようなものが正当な理由として認められています。

・担当事業部門の廃業(横浜地裁平成24年7月20日)

・取締役の職務遂行上の法令・定款違反行為(東京地裁平成26年12月18日)

・心身の故障(祭高裁昭和57年1月21日)

・職務への著しい不適任(能力の著しい欠如)(東京高裁昭和58年4月28日)

・独断的職務遂行(監査役の解任)(秋田地裁平成21年9月8日)

なお、経営判断の失敗も正当な理由に含める見解もありますが、確定したものではありません。

ü 株主総会の解任の効力の発生

取締役の解任は、決議によりその地位が剥奪されれば直ちに効力が発生し、当人に対する告知を要しない(最高裁昭和41年12月20日)。つまり、解任決議が成立した時点で、取締役は、その地位を失うことになります。

ü 解任の訴え(854条)

役員に解任されるべき理由があるにもかかわらず、総会における取締役解任が否決された場合に、その総会30日以内に、少数株主が裁判所に解任を請求するのが解任の訴えです。これは、多数派から取締役が選任されていて、多数決による解任決議が成立しない場合に、判決によって多数決原理を修正することを認めたものです。

この請求が認められるのは、取締役が不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があるにもかかわらず、総会がその解任を否決した場合です。経営方針についての意見の相違や能力の不足といった理由では訴えを起こすことはできません。

この請求をすることができるのは6ヶ月前から引き続き総株主の議決権数の3%以上を有する株主です、判決確定までこの要件を満たす必要があり、総会における多数決の結果の修正を求めるものであるため、議決権を有しない株主には、この権利は認められません。この解任判決は形成判決であるため、判決が確定した時点当該役員は自動的にその地位を失います。

この訴えの相手方は会社と役員の委任関係の解消を求めるものですから、会社と当該役員を共同被告とすることになります(855条)。

〔参考〕コーポレートガバナンス・コードが求める取締役の解任手続の開示

以前にも触れましたが、コーポレートガバナンス・コードでは、取締役の選・解任の方針や手続についての開示を上場企業に求めています。とくに2018年6月のコード改訂では、日本企業においては取締役選任についての開示は進んできているが、解任については進んでいないとの現状認識から、とくに解任についての開示を強く求めるものになりました。

しかし企業の側としては、選任手続に比べて、解任手続は、解任の理由、事実認定、継続困難性の評価のいずれにおいても厳密さが求められます。これまでは、能力・資質、欠格事由の非該当など取締役の選任基準を定め、この選任基準に欠けたときは解任する、と定めるのが一般的でした。しかし、これでは抽象的過ぎて、実際の発動が難しい。今後、解任基準をより具体的に定めようとする企業が増えると思われますが、一筋縄ではいきません。例えば、「不祥事で会社の名声・信用を損ねて多大な損失を生じた場合」と定めた場合、@名声・信用を損ねた事実を同判断するか、A多大な損害の金額規模をどう考えるか、B再発防止の費用発生は現任トップだけの責任か、C業績の影響が軽微だったら解任は不要か、等々の疑問が生じてしまいます。経営トップの解任は、組織内の力学や世論の空気に左右される要素が多く、ましてや辞任を固辞する経営トップに退場してもらう手続ならば、解任事由は低めに設定せざるを得ません。そうすると、解任を必要としない事案まで適用される外観を呈してしまいます。議決権行使助言組織が標榜する「〇期連続赤字」といった基準も、一律に解任事由とできるとは思えません。また、解任手続の主導は社外取締役が担当する形が多いと思われますが、社外取締役候補者と経営トップの距離が近かったり、反トップ派が社外取締役を懐柔したりするリスクも想定されますので、公明正大なプロセスをどのように確保するか、なにか「特別な手当」を考える必要がある。このように実際のことを考えると、かなりハードルの高い課題になっていると思われます。

ü 会計監査人を株主総会で解任する際の監査役あるいは監査役会の同意(344条)

監査役設置会社においては、取締役が会計監査人の選任議案の提出、解任、不再任を株主総会の目的とするには、監査役(二人以上あります場合にはその過半数)の同意を得なければなりません。監査役会設置会社では監査役会の同意が必要です(344条1項、2項)。

また、監査役(監査役会)は、取締役に対し、会計監査人の選任議案の提出、選任・解任、不再任を株主総会の目的とすることを請求することができます(344条2項、3項)。

Ø 監査役等による会計監査人の解任(340条)

@監査役は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができる。

一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。

二 会計監査人としてふさわしくない非行があったとき。

三 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。

A前項の規定による解任は、監査役が2人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければならない。

B第1項の規定により会計監査人を解任したときは、監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければならない。

C監査役会設置会社における前3項の規定の適用については、第1項中「監査役」とあるのは「監査役会」と、第2項中「監査役が2人以上ある場合には、監査役」とあるのは「監査役」と、前項中「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)」とあるのは「監査役会が選定した監査役」とする。

D監査等委員会設置会社における第1項から第3項までの規定の適用については、第1項中「監査役」とあるのは「監査等委員会」と、第2項中「監査役が2人以上ある場合には、監査役」とあるのは「監査等委員」と、第3項中「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)」とあるのは「監査等委員会が選定した監査等委員」とする。

第342条第1項中「の取締役」の下に「(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この条において同じ。)」を加える。

E指名委員会等設置会社における第1項から第3項までの規定の適用については、第1項中「監査役」とあるのは「監査委員会」と、第2項中「監査役が2人以上ある場合には、監査役」とあるのは「監査委員会の委員」と、第3項中「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)」とあるのは「監査委員会が選定した監査委員会の委員」とする。

会計監査人に信頼関係を失わせるような重大自由または業務の遂行に支障をきたし、またはこれに堪えがたい事由が生じたときには監査役会(監査役、監査等委員会、監査委員会に場合も当てはまりますが、ここでの記述は代表して監査役会で行います。ここの説明での「監査役会」を適宜「監査役」「監査等委員会」「監査等委員会」に置き換えて、もらうと説明が一度で済みますので)の決議でその会計監査人を解任することができます。この決議は、監査役の全員一致をもって行うものです。会計監査人の解任は、株主総会でなされるのが原則ですが、緊急に会計監査人を解任しなければならない事由が生じたときには、臨時株主総会を招集するまでもなく、監査役会の決議による解任の方法が認められています。

解任の自由は次の3点です。

@職務上の義務に違反し、または職務を怠ったとき

(例)粉飾決算がなされていることを知りながらそれを指摘せず、または当然行うべき監査をしなかったとき等

A会計監査人たるにふさわしくない非行があったとき

(例)帆の会社の監査において、粉飾決算を見逃したとき等。また、私行上の非行も破廉恥罪に該当するような場合

B真摯の故障のため職務の遂行に支障があり、またはこれに耐えられないとき

(例)心身の病気により、補助者を使用しても、その職務を遂行することができないとき等

監査役会が会計監査人を解任したときは、監査役会が選任した監査役は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければなりません。また、監査役会によって解任された会計監査人は、その株主総会に出席して、その解任について意見を述べることができます。

 

第3款 選任及び解任の手続に関する特則

Ø 役員の選任及び解任の株主総会の決議(341条)

第309条第1項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。

Ø 累積投票による取締役の選任(342条)

@株主総会の目的である事項が2人以上の取締役の選任である場合には、株主(取締役の選任について議決権を行使することができる株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、株式会社に対し、第3項から第5項までに規定するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。

A前項の規定による請求は、同項の株主総会の日の5日前までにしなければならない。

B第308条第1項の規定にかかわらず、第1項の規定による請求があった場合には、取締役の選任の決議については、株主は、その有する株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の株式)につき、当該株主総会において選任する取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、株主は、1人のみに投票し、又は2人以上に投票して、その議決権を行使することができる。

C前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任されたものとする。

D前2項に定めるもののほか、第1項の規定による請求があった場合における取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。

E前条の規定は、前3項に規定するところにより選任された取締役の解任の決議については、適用しない。

累積投票制度とは、少数派からもその持ち株数に応じて取締役を選出する可能性を与える制度であって、取締役選任にあたって広い意味での比例代表制を実現する制度と言って良いものです。

通常の取締役選任決議は、1人の取締役選任が1議案を構成するので、普通に賛否を問う決議をすれば、多数派が取締役のポストを独占する結果となりやすくなっています。累積投票制度は、全取締役の選任を一括し、各株主は1株につき選任すべき取締役の数と同数の議決権を持ち、その議決権のすべてを1人の候補者に集中的に投票することも、適宜分散して投票することも認められた制度です。このような累積投票を行えば、少数派も持ち株数に比例した取締役のポストを獲得できます。

昭和49年以前では、株式会社については定款で累積投票を排除しても、発行済み株式総数の25%以上に当たる株主が請求すれば累積投票により取締役の選任を行なわねばならないとされていました。現在は、定款に累積等投票によらない旨を規定して、これを排除しています。

※株懇モデルの定款

(取締役の選任)

第19条 取締役は、株主総会において選任する。

2 取締役の選任決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって行う。

3 取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする。

なお、累積投票制度は取締役選任の際に限って認められている制度で、監査役、会計参与、会計監査人の選任については条文の規定がないので、認められていないということになります。

Ø 監査等委員である取締役の選任等についての意見の陳述(342条の2)

@株主監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができる。

A監査等委員である取締役を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができる。

B取締役は、前項の者に対し、同項の株主総会を招集する旨及び第298条第1項第1号に掲げる事項を通知しなければならない。

C監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の選任若しくは解任又は辞任について監査等委員会の意見を述べることができる。

Ø 監査役の選任に関する監査役の同意等(343条)

@取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。

A監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる。

B監査役会設置会社における前2項の規定の適用については、第1項中「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは「監査役会」と、前項中「監査役は」とあるのは「監査役会は」とする。

C第341条の規定は、監査役の解任の決議については、適用しない。

Ø 会計監査人の選任に関する議案の内容の決定(344条)

@監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定する。

A監査役が2人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監査役が」とあるのは、「監査役の過半数をもって」とする。

B監査役会設置会社における第1項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。

Ø 監査等委員である取締役の選任に関する監査等委員会の同意等(344条の2)

@取締役は、監査等委員会がある場合において、監査等委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査等委員会の同意を得なければならない。

A監査等委員会は、取締役に対し、監査等委員である取締役の選任を株主総会の目的とすること又は監査等委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出す''''ることを請求することができる。

B第341条の規定は、監査等委員である取締役の解任の決議については、適用しない。

Ø 会計参与等の選任等についての意見の陳述(345条)

@会計参与は、株主総会において、会計参与の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができる。

A会計参与を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができる。

B取締役は、前項の者に対し、同項の株主総会を招集する旨及び第298条第1項第1号に掲げる事項を通知しなければならない。

C第1項の規定は監査役について、前2項の規定は監査役を辞任した者について、それぞれ準用する。この場合において、第1項中「会計参与の」とあるのは、「監査役の」と読み替えるものとする。

D第1項の規定は会計監査人について、第2項及び第3項の規定は会計監査人を辞任した者及び第340条第1項の規定により会計監査人を解任された者について、それぞれ準用する。この場合において、第1項中「株主総会において、会計参与の選任若しくは解任又は辞任について」とあるのは「会計監査人の選任、解任若しくは不再任又は辞任について、株主総会に出席して」と、第2項中「辞任後」とあるのは「解任後又は辞任後」と、「辞任した旨及びその理由」とあるのは「辞任した旨及びその理由又は解任についての意見」と読み替えるものとする。

Ø 役員等に欠員を生じた場合の措置(346条)

@役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。

A前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時役員の職務を行うべき者を選任することができる。

B裁判所は、前項の一時役員の職務を行うべき者を選任した場合には、株式会社がその者に対して支払う報酬の額を定めることができる。

C会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた会計監査人の員数が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役は、一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない。

D第337条及び第340条の規定は、前項の一時会計監査人の職務を行うべき者について準用する。

E監査役会設置会社における第4項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。

F監査等委員会設置会社における第四項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査等委員会」とする。

G指名委員会等設置会社における第4項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査委員会」とする。

ü 退任後の役員の権利義務(346条1項)

役員、例えば取締役会設置会社における取締役の員数は3人以上とされていますが、取締役が最小限の3人であった会社で、その内の1名が欠員となってしまった場合、その取締役会は有効でなくなってしまうので、遅滞なく、後任の取締役を決めなければなりません(976条)。ただし、取締役は株主総会で選任する必要があります。しかも、株主総会を開催するためには取締役会の決議が必要です。この時に取締役会に欠員がでてしまっていれば、決議が有効とならず、取締役を選任するための株主総会を開くことができないわけです。

そこで、欠員を生じた理由が任期の満了または辞任による退任の場合には、民法の受任者の委任終了後の善処義務(民法654条)にならって、退任した取締役が、新しく取締役が選任されるまで、依然として取締役の権利義務を有するとされています(346条1項)。

ü 一時取締役、一時監査役(346条2項)

取締役が死亡したり欠格事由が生じた場合や解任によって欠員となった場合には、退任した取締役に権利義務を有するとすることは不適当であり、また、退任や辞任のときでも退任取締役に取締役の権利義務を有するとすることが不適当なことがある(例えば、退任が健康上の理由による場合や他の取締役との意見の対立による場合等)。そこで、取締役に欠員が生じた場合において、必要がある時は、利害関係人の請求により、裁判所が一時取締役の職務を行うべき者を選任することができます(346条2項)。一時取締役の権限は、職務代行者とは異なり、本来の取締役と同じ権限を持ちます。

ü 上記の制度は取締役に限らず、監査役、会計参与、会計監査人の場合にも同様です。


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