新任担当者のための会社法実務講座 第325条の4 株主総会の招集の通知等の特則 |
Ø 株主総会の招集の通知等の特則(325条の4) @前条第1項の規定により電子提供措置をとる場合における第299条第1項の規定の適用については、同項中「2週間(前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては1週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっっては、その期間))」とあるのは、「2週間」とする。 A第299条第4項の規定にかかわらず、前条第1項の電子提供措置をとる場合には、第299条第2項又は第3項の通知には第298条第1項第5号に掲げる事項を記載し、又は記録することを要しない。この場合において、当該通知には、同項第1号から第4号までに掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 電子提供措置をとっているときは、その旨 二 前条第3項の手続を開示用電子情報処理組織を使用して行ったときは、その旨 三 前2号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項 B第301条第1項、第302条第1項、第437条及び第444条第6項の規定にかかわらず、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社においては、取締役は、第299条第1項の通知に際して、株主に対し、株主総会参考書類等を交付し、又は提供することを要しない。 C電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社における第305条第1項の規定の適用については、同項中「その通知に記載し、又は記録する」とあるのは、「当該議案の要領について第325条の2に規定する電子提供措置をとる」とする。 ü 招集通知 電子提供制度により株主総会を招集する場合であっても、株主が個別に承諾する場合(299条3項)を除き、招集通知(この場合は狭義の招集通知)は書面により発送しなければなりません。しかし、電子提供制度における株主総会招集通知は、株主に対して株主総会の日時・場所等の基本的な情報を通知し、アップロードされた資料にアクセスするように促すものとして位置づけられたもので、従前の招集通知に比べて特別な取扱いをしなければならないところがあります。 ü 招集通知の発送期限(1項) 電子提供措置をとる場合の招集通知の発送期限は、公開会社であっても、なくても、株主総会の日の2週間前までとされています(325条の4第1項による299条1項の読み替え)。なお、法定期限より早期に招集通知を発送することは妨げられませんが、招集通知の発送日には電子提供措置を開始していなければなりません(325条の3第1項)。 これは、株主総会の招集の通知のみであっても、その印刷及び郵送のためには一定程度の時間を要するため、その発送の期限を従来より前倒しにすると、会社の事務負担が過大となるおそれがあり、また、郵送費用の負担の経験のために、株主総会の招集の通知と書面交付請求をした株主に対する電子提供措置事項を記載した書面を併せて発送することができるようにしておくことが望ましいと考えられるためです。 ü 記載事項・添付書類(2項、3項) 電子提供措置をとった場合でも、株主総会の招集の通知に記載しなければならない事項が多くなる時は、結局、招集の通知の印刷や郵送に要する費用が過大となるおそれがあります。そこで、電子提供措置をとる場合における株主総会の招集の通知に記載または記録しなければならない事項については、株主がウェブサイトにアクセスすることを促すために重要である事項に限定するすることとしています。具体的に電子提供制度における招集通知の記載事項は以下の通りです。イメージとしては、はがき1枚で収まる程度のものです。 1)株主総会の日時及び場所(298条1項1号) 2)目的事項(同2号) 3)議決権行使書面を採用するときは、その旨(同3号) 4)電子投票を採用するときは、その旨(同4号) 5)電子提供措置をとっているときは、その旨(325条の4第2項1号) 6)EDNETによる例外を利用しているときは、その旨(同2号) 7)その他法務省で定める事項(電子提供措置に係るウェブサイトのアドレス等)(同3号) 電子提供制度は、株主総会参考書類等に関する情報について継続して電子提供措置をとることとする代わりに、株主に対して、株主総会参考書類等を交付または提供することを要しないこととする制度です。そこで、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある会社は、株主総会の招集の通知に際して、株主に対して、株主総会参考書類等を交付又は提供することを要しないとされています(3項)。そのため、株主総会資料については同封が不要です。 ü 招集の通知の方法 電子提供措置をとる場合であっても、株主総会に出席しない株主が書面または電磁的方法により議決権を行使することができることとする場合及び取締役会設置会社は、株主総会の招集の通知は書面によってしなければならない、とされています(299条2項)。ただし、これらの場合であっても、株主の個別の同意を得たときは、その株主に対しては電磁的方法によって株主総会の招集の通知を発することができることとなります(325条の4第3項)。 ü 追加の情報提供 会社が任意に招集通知にその他の情報を追記したり、書類を同封したりすることには問題はありません。ただし、法律上の手続きを踏んだ上で行う追加的な情報提供であること、株主を不当に誘導・誤導させるために虚偽を盛り込むような不公正はないことは、当然です。しかし、電子提供措置や招集通知の発送などの法律上の手続きはすべて履践する上で行う追加的な情報提供は、任意の情報提供であるので、広く許容されるべきと考えられます。例えば、会社が株主の正確な理解を促したり、自らの見解を強調等するために補足的な情報を盛り込むことや、剰余金の配当の支払手続きに必要な書面を提供することは問題になりません。株主提案権が行使されている状況下であっても、書面として交付される招集通知の決議事項の記載や議決権行使書面の記載から株主提案の有無が明らかであれば、会社提案に関する情報の要約のみを株主に対して書面で提供したとしても、株主は株主提案の内容その他必要な情報についてインターネットを通じて取得することができるので、問題ではないと考えられています。 関連条文
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