新任担当者のための会社法実務講座 第325条の6 電子提供措置の中断 |
Ø 電子提供措置の中断(325条の6) 第325条の3第1項の規定にかかわらず、電子提供措置期間中に電子提供措置の中断(株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又は当該情報がその状態に置かれた後改変されたこと(同項第7号の規定により修正されたことを除く。)をいう。以下この条において同じ。)が生じた場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、その電子提供措置の中断は、当該電子提供措置の効力に影響を及ぼさない。 一 電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でか重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること。 二 電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の十分の一を超えないこと。 三 電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に電子提供措置の中断が生じたときは、当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の十分の一を超えないこと。 四 株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと。
ü 電子提供措置の中段の趣旨 例えば、電子公告については、ウェブサイトに使用するサーバーのダウン等により公告期間中に公告事項がウェブサイトに掲載されない期間が生じたり、ハッカーやウィルス感染等による改竄等によって公告事項とは異なる情報がウェブサイトに掲載されてしまう事態(公告の中段)が生じた場合に、常に公告を無効とすることは、会社にとって酷であり、また、公告の対象者である株主等を無用に混乱させることとなるから、救済規定が設けられ、一定の場合には、公告の中断は公告の効力に影響を及ぼさないこととされています(940条3項)。 電子提供措置についても、電子公告と同様に、ウェブサイトに使用するサーバーのダウン等や、ハッカーやウィルス感染等による改竄等が生じ得ることは否定できません。また、このような場合に、常に電子提供措置を無効とすることは、株式会社にとって酷であり、また株主を無用に混乱させることとなりかねません。 そこで、電子提供制度でも、電子公告に倣って一定の要件に該当するときは、電子提供措置の中段は電子提供措置の効力に影響を及ぼさないこととしています。 ü 電子提供措置の中断が生じた場合の救済の要件等 電子提供措置の中断とは、株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったまたはその情報がその状態に置かれた後改変されたことを言います。 電子提供措置の中断が生じた場合であっても、次に掲げる要件をすべて満たすときは、その電子提供措置の中断は、その電子提供措置の効力に影響を及ぼさない、つまり無効とならないこととしています。 1)電子提供措置の中断が生ずることについて株式会社が善意でかつ重大な過失がないことまたは株式会社に正当な事由があること(1号) 2)電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の10分の1を超えないこと(2号) 3)電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に電子提供措置の中断が生じたときは、その期間中に電子提供措置の中断が生じた時間がその期間の10分の1を超えないこと(3号) 4)株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後すみやかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと(4号) また、バックアップとして東京証券取引所のホームページにも掲載している場合には、メインとして掲載している自社ホームページ等に障害が発生したとしても救済されることになるだろうと思われます。 この内容も踏まえて、今後、中断が生じていないか、中断が生じた場合にそれが前記の要件を満たしているかについてどの程度管理・確認すべきかは、実務的にはっきりしていません。 関連条文
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