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第771条 合同会社に発行済株式を 取得させる株式交換の効力の発生等 |
Ø 合同会社に発行済株式を取得させる株式交換の効力の発生等(771条) @株式交換完全親合同会社は、効力発生日に、株式交換完全子会社の発行済株式(株式交換完全親合同会社の有する株式交換完全子会社の株式を除く。)の全部を取得する。 A前項の場合には、株式交換完全親合同会社が株式交換完全子会社の株式(譲渡制限株式に限り、当該株式交換完全親合同会社が効力発生日前から有するものを除く。)を取得したことについて、当該株式交換完全子会社が第137条第1項の承認をしたものとみなす。 B前条第1項第2号に規定する場合には、株式交換完全子会社の株主は、効力発生日に、同号に掲げる事項についての定めに従い、株式交換完全親合同会社の社員となる。この場合においては、株式交換完全親合同会社は、効力発生日に、同号の社員に係る定款の変更をしたものとみなす。 C前条第1項第3号イに掲げる事項についての定めがある場合には、株式交換完全子会社の株主は、効力発生日に、同項第4号に掲げる事項についての定めに従い、同項第3号イの社債の社債権者となる。 D前各項の規定は、第802条第2項において準用する第799条(第2項第3号を除く。)の規定による手続が終了していない場合又は株式交換を中止した場合には、適用しない。 株式交換の効果は、一般的に株式交換の効力発生日に、株式交換完全親合同会社が株式交換完全子会社の発行済株式の全部を取得し、株式交換完全子会社の株主は株式交換契約の定めに従い株式交換完全親合同会社の社員になることで、完全親子会社関係が創設されることです。 ü
効力発生日(771条1項) 株式交換は、株式交換契約で定められた効力発生日に、その効力を生じます(771条1項)。ただし、債権者保護手続が終了していない場合、または、株式交換を中止した場合には、株式交換契約に定められた効力発生日に、株式交換の効力が発生することはありません(771条5項)。株式交換の中止とは、株式交換契約の締結や株主総会承認決議の時から前提となる事情が大きく変化した場合などに、株式交換の効力発生に向けた手続を取りやめることを意味し、当事会社が取締役会設置会社であれば、両当事会社の取締役会決議を経て、株式交換契約を合意解除して中止を決定することが多いようです。 ü
株式交換完全子会社の株主の地位(771条3項) 株式交換における完全子会社の株主は、株式交換の効力発生日に、株式交換契約の交換対価の割当てに関する定めに従って、@交換対価が完全親合同会社の持分である場合には、完全親合同会社の社員となり(771条3項)、A交換対価が完全親会社の社債である場合には、その社債の社債権者となります(771条4項)。 完全子会社の株式が完全親合同会社の社員となることが株式交換契約に定められている場合について、株式交換契約の効力発生日に、株式交換契約の定めに従い、完全親合同会社の社員となる場合、完全親合同会社において新たに社員を加入させることになり、定款の変更が必要になります。そこで、770条3項後段は、株式交換手続き以外の手続きにより完全親合同会社が定款を変更する煩わしさを避けるために、「効力発生日に同号の社員に係る定款の変更をしたものとみなす」旨の規定を設け、株式交換契約に記載された内容に従い、完全親合同会社の定款が合併の効力発生日に自動的に変更される旨を規定しています(771条3項後段)。 ü
株式交換の対価としての完全親会社の社債の交付(771条4項) 771条4項は、株式交換契約に、完全親会社が完全子会社の株主に対して社債を交付することを定めた場合には、771条5項の場合を除き、完全子会社の株主は株式交換契約の効力発生日に、株式交換契約の定めに従い、社債権者となる旨を規定したものです。 株式交換契約に定められた金銭等が社債以外のものである場合には、771条5項の場合を除き、完全子会社の株主は、株式交換契約の効力発生日に、対価である目的物についての引渡請求権を有することになります。 ü
株券の提出手続 株式交換により株式交換完全子会社の株主は、株式交換完全親合同会社の社員となるわけですが、そのために株式交換完全子会社の株主は保有する株式を提出し、代わりに株式交換完全親合同会社の持分の交付を受けることになります。そのために、株式交換完全子会社が株券発行会社である場合は、株式交換の効力発生日までに会社に株券を提出しなければならない旨を株式交換の効力発生日の1ケ月前までに公告し、かつ株主および登録株式質権者に対して各別に通知をしなければなりません(219条1項)。株式交換完全子会社の株券は株券提出日(株式交換の効力発生日)に無効となります(219条3項)。 株券提出手続の制度趣旨は、株式交換によって完全子会社の株主の地位に重大な影響が生じることから、公告によって株式の名義書換を促し、新たな権利者を可及的に正確に確定するとともに、完全子会社の株券が株式交換の効力発生日をもって無効となることから、株券をあらかじめ完全子会社に提出させ、効力発生後に無効となった株券が流通することを防ぐことにあります。 株式交換完全親会社は、株券を提出しない株主名簿上の株主に対しては、株券の提出があるまでの間、交換対価の交付を拒むことができます(219条2項)。 ・株券提出手続が不要となる場合 株式交換完全子会社が株券発行会社であっても、現実にすべての発行済株式について株券が発行されていない場合には、株券提出手続をとることが求められません(219条1項柱書但書)。例えば、すべての株主が株券不所持の申出をしたことにより株券が一切発行されない場合(217条)や、完全子会社が全株式上制限会社であり、すべての株主から株券発行の請求がないために株券が発行されていない場合(215条4項)などです。 ・通知対象となる株主の確定 株券提出手続において通知対象となる株主は、株式交換承認のための株主総会において議決権を行使できる株主を特定するために設定された基準日における株主とは異なることになり、また、株式買取手続の株主への通知(785条3項)とは異なり、株券提出手続は必ずしも株主総会の議決権行使に関連するものではないことから、理論的には、通知を発送する直近の株主名簿を確定したうえで、その株主に通知するものと考えられます。 この点については、株券電子化の実施前では、上場会社が完全子会社となる場合に株券提出手続を行う場合、実質株主を含めて株主名簿を確定するためには別途基準日を設けて実質株主を確定する必要があり、上記の株券提出の通知発想の目的でこの作業を行うのは現実的ではなかったため、問題とされていました。しかし、株券電子化により上場会社は株券不発行会社となり、株券提出手続の必要がなくなったので、上記論点が実質的に問題する意味がなくなりました。 ・通知および公告 株券提出手続の目的は、株主の名義書換を促して新たな権利者を確定するとともに、旧株券を回収することにあることから、株券提出手続において株券の提出を求められるのは株式交換完全子会社の株主名簿上の株主だけでなく、名義書換未了のまま旧株券を所持する株主も含まれます。そこで、株券提出手続においては、株主名簿上の株主および登録株式質権者に対して個別に通知するだけでなく、定款所定の方法によって公告をしなければならないとされています(219条1項柱書)。 <記載例>株券提出手続の株主への公告 株式交換につき株券提出公告 当社は、○○株式会社との間で、当社を株式交換完全子会社として、○○株式会社を株式交換完全親会社とする株式交換を実施することにいたしましたので、当社の株券を所有する方は、効力発生日である令和○○年○月○○日なでに当社にご提出下さい。 令和○○年△月△△日 東京都○○区○○町○番地 ○○株式会社 代表取締役 □□□ ・旧株券の紛失・喪失の場合 株券提出手続において、株式交換完全子会社の株主が旧株券を紛失などして提出することができない場合には、異議催告手続をとることが認められています。すなわち、株式交換完全子会社は、株券を提出することができない者の請求により株式交換の効力発生後に、利害関係人に対して、異議があれば3ケ月以内の一定の期間内に述べることができる旨を公告して、その期間内に異議を述べる者がいなければ、株式交換完全親会社は、異議催告手続の請求をした者に対して交換対価を交付することができます(220条1、2項)。その広告の費用は異議催告手続を請求した株主の負担となります(220条3項)。 異議催告手続の効果は、異議申立期間内に利害関係人から意義の申立てがなかったことにより、その請求者が権利者と推定され、株式交換完全親会社は、請求者に交換対価を交付すれば免責されるという点にあります。 ・株券不所持の場合 株券不所持の申出があった場合には、会社は遅滞なく株券を発行しない旨を株主名簿に記載または記録することにより、株券不発行の措置をとらなければなりません(217条3項)。この場合には株主が会社に提出した旧株券は、株主名簿に記載または記録された時点で無効となります(217条5項)。したがって、株券不所持の申出があって株券不発行の措置がとられている株券については,株券が発行されていないことになるから、その株式の株主は株券提出手続がとられている場合でも、特段の手続をとる必要はないことになります。実務上は、株券提出の株主への通知の中で、株券不所持の申出をしている株式については、株券提出の手続は必要ない旨を注記することが一般的です。 ・上場会社の株式の取扱い 上場会社の株券は電子化されたため、上場会社を完全子会社とする株式交換では、完全子会社について株券は発行されていないことになるため、株券提出の手続は不要とされました。 ü
効力発生日における株式交換の効力不発生(771条5項) 株式交換当事会社か株式交換を中止した場合または株式交換契約に定めた効力発生日までに当事会社による債権者異議手続が終了しない場合は、769条1項〜5項で定めている株式交換の効果が発生しません(769条6項)。株式交換の効力発生日までに債権者異議手続が終了しない場合は、債権者保護の観点から、効力発生日に、株式交換の効力は発生しません。株式交換の当事会社の合意により決めたのですから、当事会社の合意により効力発生日を変更して、このような場合の対処がされる(790条1項)ことになります。 ・株式交換併中止の手続き 株式交換の中止は、通常の契約と同じように完全親会社と完全子会社の合意によって行われることになりますが、その手続きの進行の程度に応じて、分けて考える必要があります。 当事会社が取締役会の承認を得た上で、株式交換契約を締結し、株主総会で、その株式交換契約が承認される前の段階では、取締役会の決議により、当事会社の合意により中止することができます。 また、株式交換契約が当事会社のいずれかまたは両方の株主総会で承認された場合には、効力発生日の変更(790条)のように特段の規定が設けられていないので、その中止について改めて当事会社の株主総会の承認決議が必要になると考えられています。 なお、株式交換契約において解除事由を具体的に特定して記載した解除条項が規定されており、この解除時要項に従って株式交換契約が解除され、その結果株式交換が中止される場合には、解除条項を含んだ株式交換契約が株主総会で承認されているので、株式交換の中止について株主総会の承認を得る必要はないと考えられます。ただし、実務の実際では解除事由を具体的に特記した解除条項が規定されることは稀で、相互に協議の上解除することかできるという包括的に規定されているのが一般的です。この場合には、株主総会で注視の承認を得ることが適当と考えられています。 ・債権者異議手続が終了しない場合 株式交換契約に記載されている株式交換の効力発生日が到来する時点で、全部または一部の債権者に対しての債権者異議手続が終了していない場合、効力発生日に認められる合併の効力は発生しないこととされています(771条5項)。 債権者異議手続は次のような手続です。第1に、完全子会社および完全親会社が債権者に対して公告をすることから始まります。そこでは、株式交換を行なう旨、完全親会社および完全子会社の商号・住所・計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの、および、債権者が1ケ月以内に異議を述べることができる旨を公告します(789条2項、799条2項)。第2に、完全親会社及び完全子会社各社は、知れている債権者に上記と同じ内容を各別に催告しなければなりません(789条2項、799条2項)。第3に、会社債権者から1ケ月という期間内に異議を述べられて時は、会社は、その債権者に対して弁済するか、相当の担保を提供するか、または財産を信託する等して対応しなければなりません(789条5項、799条5項)。当事会社の権者異議手続が終了していない場合とは、債権者に対して、上記の第1、第2、第3のいずれかが行われていない場合を言います。 ü
株式交換の登記 株式交換では、完全親会社に発行済株式の総数等の変更登記義務が生じるので、変更が生じたときから2週間以内に完全親会社の本店所在地を管轄する登記所において変更の登記をしなければなりません(915条1項)。また、完全子会社は株主構成の変更が生じるだけであるため登記事項に変更が生じるわけではないのですが、新株予約権者に対して完全親会社の新株予約権が交付される場合には、株主交換による新株予約権の変更の登記が必要となり、これは完全親会社についての変更の登記と同時に完全親会社の変転所在地を管轄する登記所に申請します(商業登記法91条1、2項)。 ・完全親会社についての変更の登記 @)登記事項 完全親会社について、株式交換に伴って登記すべき事項としては、変更後の資本金の額に関する事項です。なお、株式交換と同時に定款の変更や役員の選任等を決議した場合には、これらも併せて登記します。 A)申請と添付書類 完全親会社による変更の登記申請に次の書類を添付します。 ア.株式交換契約書 イ.完全親会社の手続に関する書面 a.株式交換契約の承認に関する書面:合併契約の承認を行った株主総会の議事録等です。 b.債権者の異議手続の履行を証する書面: 債権者保護手続きのための公告及び個別催告をしたことを証する書面、そして、異議を述べた債権者がいた時の弁済・担保提供等をしたことを証する書面 c.資本金の額が適法に計上されたことを証する書面: 株式交換により完全親会社の資本金が増加する場合は、資本金の額が445条5項、会社法施行規則116条9号、計算書類規則4条または39条の規定に従って適法に計上されたことについての証明書 ウ.完全子会社の手続に関する書面 a.完全子会社の登記事項証明書 b.株式交換契約の承認に関する書面:株式交換契約の承認を行った株主総会の議事録等です。 c.
債権者の異議手続の履行を証する書面 債権者保護手続きのための公告及び個別催告をしたことを証する書面、そして、異議を述べた債権者がいた時の弁済・担保提供等をしたことを証する書面 d.株券提供公告をしたことを証する書面:広告を掲載した官報や日刊新聞紙、電子公告調査機関の報告書 f:登録免許税規則12条7項の規定に関する証明書 計算書類等の監査等(436条) 計算書
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