新任担当者のための会社法実務講座 第763条 株式会社を設立する新設分割計画 |
Ø 株式会社を設立する新設割計画(763条) @一又は二以上の株式会社又は合同会社が新設分割をする場合において、新設分割により設立する会社(以下この編において「新設分割設立会社」という。)が株式会社であるときは、新設分割計画において、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 株式会社である新設分割設立会社(以下この編において「新設分割設立株式会社」という。)の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数 二 前号に掲げるもののほか、新設分割設立株式会社の定款で定める事項 三 新設分割設立株式会社の設立時取締役の氏名 四 次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項 イ 新設分割設立株式会社が会計参与設置会社である場合 新設分割設立株式会社の設立時会計参与の氏名又は名称 ロ 新設分割設立株式会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 新設分割設立株式会社の設立時監査役の氏名 ハ 新設分割設立株式会社が会計監査人設置会社である場合 新設分割設立株式会社の設立時会計監査人の氏名又は名称 五 新設分割設立株式会社が新設分割により新設分割をする会社(以下この編において「新設分割会社」という。)から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務(株式会社である新設分割会社(以下この編において「新設分割株式会社」という。)の株式及び新株予約権に係る義務を除く。)に関する事項 六 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該新設分割設立株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項 七 二以上の株式会社又は合同会社が共同して新設分割をするときは、新設分割会社に対する前号の株式の割当てに関する事項 八 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項 イ 当該社債等が新設分割設立株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法 ロ 当該社債等が新設分割設立株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法 ハ 当該社債等が新設分割設立株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項 九 前号に規定する場合において、二以上の株式会社又は合同会社が共同して新設分割をするときは、新設分割会社に対する同号の社債等の割当てに関する事項 十 新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該新設分割設立株式会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権についての次に掲げる事項 イ 当該新設分割設立株式会社の新株予約権の交付を受ける新設分割株式会社の新株予約権の新株予約権者の有する新株予約権(以下この編において「新設分割計画新株予約権」という。)の内容 ロ 新設分割計画新株予約権の新株予約権者に対して交付する新設分割設立株式会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法 ハ 新設分割計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、新設分割設立株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法 十一 前号に規定する場合には、新設分割計画新株予約権の新株予約権者に対する同号の新設分割設立株式会社の新株予約権の割当てに関する事項 十二 新設分割株式会社が新設分割設立株式会社の成立の日に次に掲げる行為をするときは、その旨 イ 第171条第1項の規定による株式の取得(同項第一号に規定する取得対価が新設分割設立株式会社の株式(これに準ずるものとして法務省令で定めるものを含む。ロにおいて同じ。)のみであるものに限る。) ロ 剰余金の配当(配当財産が新設分割設立株式会社の株式のみであるものに限る。) A新設分割設立株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、前項第三号に掲げる事項は、設立時監査等委員である設立時取締役とそれ以外の設立時取締役とを区別して定めなければならない。 会社法763条は、新設分割により設立する会社が株式会社である場合の新設分割計画で定めるべき事項を規定しています。新設分割は、会社の設立手続と吸収分割手続を一体化した組織法上の作為なので、会社法はその条件の内新設分割設立会社の目的・商号・住所、新設分割により承継する権利義務や新設分割の対価等、強行法的に定めるべき事項を規定しています。 その意味は、第1に、新設分割計画で定めるべき事項を法定することによって、法的拘束力を有する新設分割計画の中心的な内容を確定させる意味をもつことです。法定の決定事項の定めを欠き、または違法な内容の定めがされている新設分割計画は無効となります(大審院判決昭和19年8月25日)。第2に、新設分割の当事会社の株主・社員が新設分割計画を承認するかどうかを判断する際に、提供されるべき情報の範囲を決める機能です。新設分割会社が株式会社または合同会社である場合に、新設分割計画が有効となるためには株主総会の承認決議または総社員の同意を受ける必要があるところ、その株主または社員の意思決定にとって必要な新設分割計画の本質的な事項は何かを決めています。また、議決権を行使できない株主や新設分割の承認決議に反対した株主にとっては、株式買取請求権等の株主権を行使し、または株式の売却等の措置を講ずるために必要な情報が提供される必要があります。新設分割計画の内容は、その法定の決定事項およびされに関する説明を中心に事前開示の対象さそれています。これは事後開示の場合も同じです。 ü
新設分割の手続きの概要 ・新設分割会社が株式会社の場合 @)新設分割計画の作成と株主総会の承認 新設分割会社は新設分割契約を作成します。新設分割計画は、原則として、株主総会で特別決議による承認を受ける必要があります(804条1項、805条、309条)。この株主総会の招集通知および株主総会参考書類に新設分割を行う理由や新設分割計画の内容の概要が記載されていなければなりません(298条1項、会社法施行規則63条3号)。 新設分割会社は、新設分割契約承認のための株主総会の会日の2週間前の日の前日までに、労働者との間で労働契約の承継に関する協議するとともに、会社分割により労働者の労働契約が承継されるかどうかの通知を行い、労働者の異議申述手続を行わなければなりません(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)。 A)債権者異議手続・株式買取請求手続・新株予約権買取請求手続 債権者異議手続は、新設分割の登記までに終了していればよい(924条1項1号)のですが、債権者が異議を述べることができる催告期間は1か月以上とらなければなりません(810条)。 反対株主保護のための株式買取請求手続については、新設分割会社は、新設分割する旨および設立会社の商号・住所等を、株主総会の新設分割計画承認決議の日から2週間以内に株主に通知または公告しなければなりません。株式買取請求が認められる期間は、この通知または公告した日から20日以内までの間です(806条)。 新設分割会社が新株予約権を発行している場合は、新設分割会社の新株予約権者に対し新株予約権に代えて新設分割設立会社の新株予約権が交付される旨の定めが新設分割計画にある場合、または、それ以外の新株予約権で新設分割に際し新株予約権者に新設分割設立会社の新株予約権を交付することとする胸の定めがある場合、763条10号や11号の定めが、分割会社の新株予約権の内容として定められた新設分割設立会社により交付される新株予約権の条件に合致しないときは、新株予約権者は新株予約権の買取請求が認められます。新設分割会社は、新設分割計画についての株主総会承認決議の日から2週間以内に新設分割をする旨および設立会社の商号・住所等を対象新株予約権者に通知または公告をしなければなりません。新株予約権買取請求が認められる期間は、通知または公告をした日から20日以内です(808条)。 B)開示 新設分割会社は、新設合併契約等備置開始日(803条2項)から新設分割設立会社の成立の日後6カ月を経過するまでの間、本店に法定の事前開示書類・電磁的記録を備置かねばなりません(803条1項2号)。また、新設設立会社の成立後、遅滞なく、設立会社と協力して法定の事後開示書面・電磁的記録を作成し、設立会社成立の日から6か月間、本店に備置かなければなりません。 C)効力発生・登記 新設分割の効力は新設分割設立会社の成立の日に生じます(764条1項、766条1項)。法定の日から2週間以内に、新設分割をする会社については変更登記を、設立会社については設立の登記を行わなければなりません(924条)。新設分割の登記をするためには、株主総会の承認決議を受け、株式買取請求手続・新株予約権買取請求手続を完了し、かつ、債権者異議手続を終了していることが必要です(924条)。 ・新設分割会社が合同会社の場合 @)新設分割計画の作成と総社員の同意 合同会社が新設分割会社となる場合は、合同会社を代表えする社員が新設分割計画を作成します。合同会社が新設分割会社となる新設分割では、新設分割会社の事業に関して有する権利義務の全部を承継させる場合には、合併に類似する効果が生ずることになるので、総社員の同意が必要となります(813条1項2号)。ただし、定款に別段の定めを置くことができます(813条1項但書)。 新設分割会社は、新設分割契約承認のための株主総会の会日の2週間前の日の前日までに、労働者との間で労働契約の承継に関する協議するとともに、会社分割により労働者の労働契約が承継されるかどうかの通知を行い、労働者の異議申述手続を行わなければなりません(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)。 A)債権者異議手続 合同会社が新設分割会社の場合には、株式会社である場合に準じて、債権者異議手続きが行われます(813条2項)。すなわち、新設分割の登記までに終了していればよい(924条1項1号)のですが、債権者が異議を述べることができる催告期間は1か月以上とらなければなりません(810条)。 B)効力発生・登記 新設分割の効力は新設分割設立会社の成立の日に生じます(764条1項、766条1項)。法定の日から2週間以内に、新設分割をする会社については変更登記を、設立会社については設立の登記を行わなければなりません(924条)。新設分割の登記をするためには、債権者異議手続を終了していることが必要です(924条)。 ü
新設分割計画 ・法的性質 新設分割計画の作成は単独行為であり、到達の必要のない意思表示です。新設合併契約とは異なり、1社の株式会社または合同会社のみで新設分割計画を作成することができます。また、新設分割計画の作成は組織法上の行為でもあります。そのため、原則として、株主総会の承認または総社員の同意を必要とすること、代表者が計画を作成すること、および第三者に対して効力を有するなど、単なる債権的効力を超えた効力を持つなどの特色があります。 2社以上の株式会社または合同会社が共同して新設分割をする場合には、共同して新設分割計画を作成しなければなりません(762条2項)。共同新設分割計画の作成は、合同行為としての性質を有してます。共同新設分割の新設分割対価の割当に関する事項は、実質的には契約に類似しており、双方的意思表示であって、かつ到達を要する意思表示であると考えられます。 ・新設分割計画の決定・効力発生 新設分割の場合は、新設分割計画作成の時点において、新設分割会社の権利義務の全部又は一部を承継する会社が未だ存在しないので、会社分割の契約相手が存在せず、契約を締結することはできません。会社法では、新たに設立する会社について権利義務を移転する形態の組織再編行為については統一的に計画の作成を要求されます。 新規分割計画の作成は、組織法上の行為であるので、分割会社の代表取締役・代表者により作成される必要があります。簡易分割の場合を除いて、取締役会設置会社では取締役会決議に基づくことが必要です。簡易分割に該当する場合でも、合現事業を立ち上げるなど重要な業務執行に該当する場合には、取締役会決議が必要となります。 新設会社分割計画が効力を生ずるためには、原則として株主総会の特別決議による承認が必要です(804条1項、805条)。2社以上の会社が共同して新設分割計画を作成する場合も含め、株主総会の承認決議より前に作成されても、決議後に作成されても構いません。 新設分割計画が有効となるのは、新設分割会社の株主総会で特別決議を要する原則的な場合なら、かあ゛節総会の承認決議がなされた時点であり、共同新設分割の場合はすべての新設分割会社の株主総会で新設分割計画の承認決議が為された時点です。 ・要式性 新設分割計画には、書面や電磁的記録による作成は会社法上、要求されておらず、不要式の行為とされています。ただし、実務上は、組織法上の行為が書面や電磁的記録によって作成されていなくて、代表者の署名もないと、新設分割計画の有効な作成とは、認められにくい。また、新設分割の登記申請には、新設分割計画の添付が必要とされているので、書面などで作成されるのが一般的です。 ・撤回・変更 単独行為であり、かつ到達を要しない法律行為である新設分割計画の作成は、新設分割の効力発生日である新設分割設立会社の成立の日までは、自由に撤回または変更することができます。株主総会の承認決議前の段階であれば、業務執行機関の決定により、撤回・変更が可能です。それに対して、株主総会の承認決議魏後には、施設分割計画の撤回・変更は、株主総会の決議が必要となります。 共同新設分割計画の撤回・変更は複数の当事会社が共同で行わなければなりません。 ü
法定の決定事項 ・新設分割設立会社の定款記載事項(763条1項1号、2号) 新設分割で設立するのは株式会社である場合、その株式会社の定款の絶対的記載事項のうち、新設分割設立会社の目的、商号、本店所在地および発行可能株式総数を決めなければなりません(763条1項1号)。目的、商号、本店所在地は株式会社の定款の絶対的記載事項であり(27条1〜3号)、発行可能株式総数は、原始定款の絶対的記載事項ではありませんが、会社成立時までには定款に記載しなければならない事項です(37条)。なお、この他の定款の絶対的記載事項について、設立に際して出資される財産の価額または最低額(27条4号)と発起人の氏名または名称および住所(27条5号)は、新設分割による株式会社の設立については適用が除外差されています(814条1項)。新設分割設立会社に実質的に出資される財産は、新設分割による承継の対象である新設分割会社の権利義務であり、そもそもその権利義務の承継の効果は新設分割設立会社の設立登記により発生し、出資の履行が設立に先だって為されるわけではなく、新設分割設立会社の資本金の額等は763条6号(後述)及び会社計算規則の諸規定に基づき決定されます。 また、会社の目的、商号、本店所在地および発行可能株式総数以外の事項で、新設分割設立会社の定款で定める事項を決定しなければなりません(763条1項2号)。新設分割設立会社の定款には、相対的記載事項および任意的記載事項を記載できます(814条1項)。新設分割設立会社の定款は新設分割会社が作成します(814条2項)が、新設分割会社で新設分割計画の承認決議がなされたら、新設分割計画に従って作成されます。なお、新設分割設立会社の定款は、新設分割による会社設立の登記申請の添付書類です(商業登記法86条)。 ・新設分割設立会社の機関の構成員に関する事項(763条1項3号、4号) 新設会社分割の新設分割設立会社の設立時取締役の氏名を決定しなければなりません(763条1項3号)。一般に、会社設立の際の設立時取締役は、発起人が出資の履行が完了した後、発起人により選任される(38条1項)ものですが、発起人が存在せず、出資の履行は新設分割の効力発生まで待たねばならない新設分割の場合には、設立時取締役を新設分割計画で決めておく必要がある、というわけです。また、設立時取締役と同時に、新設分割設立会社が会計参与設置会社、監査役設置会社、会計監査人設置会社である場合は、それぞれ会計参与、監査役、会計監査人を新設分割計画で決めておかなければなりません(763条1項4号)。 新設分割設立会社の機関の構成員は、定款の絶対的・相対的記載事項ではなく、新設分割計画の記載事項とされたにすぎないものであるので、763条1項1号および2号に掲げられた定款の記載事項とは趣旨が異なるものです。新設分割設立会社の機関の構成員を変更するような場合には、基本的には新設分割計画に基づき新設分割設立会社の株主となる者が決定権限を有するのだから、将来株主となる新設分割会社の意思に基づいているのであれば、新設分割会社の意思決定に加えてさらに株主総会の承認までは必要ないと解されています。 なお、新設分割計画に記載された取締役等などからは、新設分割計画の作成時点で就任承諾を得ておくことが、実務上望ましいと考えられます。 ・承継する権利義務(763条1項5号) 新設分割計画により新設分割設立会社が新設分割から承継する権利義務を定めることが必要です。新設分割計画に定められて権利義務が、新設分割の法定の効果として、新設分割会社から新設分割設立会社に一般承継されます。会社分割の対象は権利義務の一部であっても構わないので、承継される権利義務を明らかにする必要があります。したがって、承継される権利義務の対象を特定できるように決定しなければなりません。 新設分割会社の権利義務のうち、会社に留まるのか新設分割設立会社に承継されるのか不明なものがある場合には、原則として新設分割計画の効力がその権利義務に及ぶための要件を欠いているとして承継の対象とはなりません。しかし、承継される権利義務のすべてを個別に詳細に列記しなければならないとすると、実務上大きな負担となるばかりでなく、会社内部の秘密情報の漏洩をまねくおそれがあると憂慮されます。吸収分割契約の法定決定事項は、契約にとって本質的な重要事項を確定させるということだけでなく、議決権行使など株主等が合理的で適正な行動をとることができるように情報提供の範囲を決めるものでもある。通説では、承継する権利義務を逐一すべて決定する必要はなく、特定可能な仕方で決定されていれば足りるとしています。具体的には次のような点が挙げられます。 @新設分割会社の事業に関して有する権利義務の全部を承継させるときは、「新設分割会社の事業に関して有する権利義務の全部」という記載で足りる。 A事業ごとに権利義務の範囲を区分するときは、「新設分割会社の甲事業部門に属するすべての権利義務」という記載で足りる。 B新設分割会社に留まる権利義務を特定し、それ以外の権利義務の一切を新設分割設立会社に承継するという定めは、対象を特定するという観点からは問題がない。 C新設分割により承継される権利義務を特定することが重要であるから、その権利義務が貸借対照表に計上される能力を有するか否かを問わない。したがって、償却済みの資産や自家創設ののれんなども対象とすることができるし、事業を承継する場合には顧客などの事実関係も対象とすることができます。 会社分割による承継の対象となる権利義務に該当するかどうは、権利義務の種類や性質に応じて検討することになります。具体的には以下のとおりです。 @)公法上の法的地位 公法上の法的地位は会社分割の対象となります。それぞれの準拠する法令の趣旨を考慮し個別に判断されることになりますが、契約で承継される権利義務として定めることにより会社分割の対象となります。 例えば、分割会社にあった法人税法上の繰越欠損金は、適格分割型分割でその効果が合併に似ていて、かつ企業グループ内において租税回避目的で行われる分割と認められない場合には、新設会社に承継することができます(法人税法57条3項)。また、業務法上の許可や免許ではそれぞれの業務法に個別に規定が置かれていますが、営業の分割により、とくに認可を要することなく、当然に登録または届出によって地位が承継されると規定されている業務法もあります。 A)民事訴訟法上の法的地位 民事訴訟法上の地位は、会社分割の対象とはならないので、それだけを会社分割による承継の対象にすることはできずことはできず、民事訴訟法の一般原則に従います。 B)私法上の権利義務 @事業の全部または一部を対象とする場合 実務上、例えば、事業譲渡契約では一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する包括的な財産を譲渡の対象とするところから、細部に至るまで記載することまでは求めず、事業譲渡の対象が譲渡会社の現在の事業全部または一部、一部であるときはどの部門なのかを客観的に把握できればいいとても事業を構成する設備等のうち具体的に特定できる者は、譲渡財産として別に条項を設けるのが一般的であるとされています。 会社分割による承継の対象が事業の全部または一部である場合には、実務上は、前述のような事業譲渡と同じような仕方で、新設分割計画への記載は有効とされています。たとえば、「新設分割会社の事業のうち、甲に関する事業を承継し、承継権利義務明細表に効力発生日前日までの増減を加除した資産、負債及び権利義務を、効力発生日において吸収分割設立会社に引き継ぐ」といった記載をした上で、承継権利義務明細表および内訳表を添付するというものだ。 A権利義務の種類による記載 事業の全部または一部を吸収分割の対象とした上で、個々の権利義務を承継権利義務明細に記載する場合、または、事業概念を媒介することなく個々の権利義務を吸収分割の対象とする場合の記載について述べていきます。 a)不動産 不動産について、会社分割の対象を事業の全部または一部とする場合であって、事業を構成する不動産であっても、個別に特定したうえで記載することが望ましいと考えられます。不動産に関する共有権も吸収分割により承継可能です。 b)動産 自動車や船舶のような登記や登録の可能な動産については、不動産の場合と同様に、個別に特定して記載することが望ましい。「特定」されたと評価されるかどうかは、会社分割の対象が事業の全部または一部である場合には、事業譲渡契約と同じように考えることができる。 ※担保権の取扱い 担保権の対象となっている資産を会社分割の対象に含めて分割会社から設立会社に承継した場合には、担保権の負担もそのまま移転することになります。この場合の担保権者と設立会社との関係は、会社分割の実行前に担保権が設定されていれば、設立会社は対抗できないとされています。 ※根抵当権の取扱い 担保権の中でも、被担保債権とともに処分を行うことが必要とされていない根抵当権については、その会社分割における取扱いについては法律上特別な定めが置かれています。まず、@分割会社が根抵当権者である場合、根抵当権の被担保債権の元本が確定する前に根会社分割が実行されると、この根抵当権は、会社分割の実行時点で存在する分割会社の債権に加え、会社分割実行後に分割会社と設立会社の各々が取得する債権も根抵当権の被債券担保となります(民法398条の10第1項)。また、A分割会社が根抵当権の被担保債権の債務者である場合、根抵当権の設定されている不動産が会社分割の対象となるか否かにかかわりなく、会社分割の実行時点で存在する分割会社の債務に加え、会社分割実行後に分割会社と設立会社の各々が負担する債務も根抵当権の被担保債権となります(民法398条の10第2項)。 c)債権 金銭債権のような分割可能な債権については、その全部または一部を会社分割により承継させることができます。分割可能であるが当事者間の特約により分割を禁止された債権や合意に基づく譲渡禁止債権であっても、原則として会社分割による承継は可能であると考えられています。この点は一般承継という法的効果を有する会社分割の大きなメリットです。将来債権については、範例上、将来発生すべき債権を目的とする債券譲渡契約は、契約内容が譲渡人の営業活動等に対して相当とされる範囲を著しく逸脱したり、他の債権者に不当な不利益を与えるなどの特段の理由がない限り、有効とされます(最高裁判決幣制11年1月29日)。 債権または将来債権の特定については、譲渡の目的となるべき債権を譲渡人が有する他の債権から識別できる程度に特定されている必要があります。特定されているかどうかの判断要素として、発生原因となる取引の種類、発生期間等に加えて、取引関係や事業等の発生原因などの諸般の要素を勘案し総合的に判断される。 d)契約上の地位 契約上の地位を会社分割により承継させることの可否は、一般的に論ずることはできず、各契約の趣旨や会社分割の個別具体的な状況によって異なってきます。しかし、以下にあげる場合を除き、原則として契約上の地位を会社分割により承継会社に承継することができるとされています。 ア.契約上の地位に基づく権利義務の一部を承継させること、例えば、ある契約に基づく解除権や取消権などは、それ以外の権利から分離して、会社分割の当事会社に別々に帰属させることはできない。 イ.競業禁止契約に基づく競業禁止義務のように、権利義務の性質上、経済活動の自由に対する成約を含むためにそれ自体の譲渡が一般に認められていない契約上の地位については事案ごとに検討すべき ウ.信託契約、賃貸借契約などの長期間継続的な関係や、ライセンス契約等の契約相手方の専門性やノウハウなどに基づく契約上の地位は、事案ごとに検討すべき エ.事業全部の経営の委任・賃貸借契約や損益共通契約などについては、会社分割の対象になりません。 d)債務 一般的に、債務者が自らの債務を第三者に移転・承継する方法としては、移転・承継後債務者が債権者に対して債務から免責される免責的債務引受けと、移転・承継後も債務者が債権者との関係では引き続き債務を負担する重畳的債務引受けの二つの方法がある。分割会社の債務を会社分割の対象として新設会社分割計画に記載した場合には、原則として免責的債務引受けと同じ効果生じることとなります。しかし、新設会社分割計画で会社分割設立会社が会社分割の対象となる債務の全部または一部を、重畳的に承継する旨を規定した場合には、重畳的債務引受けの場合と同じように、会社分割の実行後も債権者との関係ででは分割会社も引き続き債務を負担することとなり、債権者は分割会社・設立会社のどちらにも債務の履行を請求できます。 なお、未発生債務や偶発債務について、基本的には。新設分割設立会社に承継させることができます。 e)労働契約・労働協約 会社分割の対象となる労働契約については、それ以外の一般の契約とは異なる例外的な法律上の取扱いが適用されます。すなわち、労働契約以外の一般の契約とは違い、労働契約の場合には、会社分割の対象となる事業に主として従事している労働者とそれ以外との区分に応じて、前者については、労働者本人が対象から除外されていることについて異議を述べれば移転・承継が認められ、後者については、労働者本人が異議を述べれば対象から除外されることとされています(労働契約承継法4、5条)。 ※新設分割計画作成後、効力発生日までに発生した権利義務等の帰属 新設分割計画作成時には存在していたにもかかわらず、新設分割計画において分割会社にとどまるのか新設分割設立会社に承継されるのか決定されていないもの、あるいは新設分割計画作成後に新設分割会社に生じた権利義務の取扱い、とりわけ、新設分割会社のある事業部門を新設分割の対象とするような場合は、新設分割計画には明示されなかった権利義務や新設分割計画作成後、新設分割の効力発生日までの間に発生した権利義務であっても、新設分割の対象ととなる事業部門に関する権利義務については、新設分割設立会社に承継されると解釈することができます。「一定の事業部門に属する権利義務すべて」といった文言で包括的に含まれるという理由付けです。 ※移転に制限のある権利義務を新設分割の対象に含めた場合の効果 例えば、ある種の営業許可など会社分割によっては承継の対象に含めることのできない権利義務を新設分割の対象とした場合、基本的には、その権利義務についてのみ移転の効力が否定されるにとどまり、新設分割全体がただちに無効となるわけではないと解されています。ただし、営業許可の移転が新設分割を行う全体条件となっているような場合には、営業許可の承継のための所定の手続等を捕っていなかったことが会社分割の無効原因となる可能性があります(名古屋地裁判決平成19年11月21日)。 ・分割対価となる株式等に関する事項(763条6〜9号) @)新設分割対価 吸収分割の場合と異なり、新設分割の場合は、新設分割に際して新設分割会社に交付する新設分割設立会社の株式の数またはその数の算定方法ならびに新設分割設立株式会社の資本金および準備金の額に関する事項を必ず定めなければなりません(763条1項6号)。新設分割に伴い株式会社が新設される以上、設立会社の株式が発行されないことは考えられないことから、新設分割設立株式会社は、新設分割に際して必ず会社の株式を発行することになります。 さらに、新設分割設立会社は、新設分割の対価として、その株式に加えて、社債等を交付することもできます(763条1項8号)。 2社以上の会社が共同して新設分割する共同新設分割の場合には、新設分割会社に対する新設分割設立株式会社の場合には、新設分割会社に対する新設分割設立株式会社の株式の割当てに関する事項を定めなければなりません(763条1項7号)。新設分割対価として、新設分割設立株式会社の社債等を交付する場合は、その割当てに関する事項を定めておく必要があります(763条1項7号)。なお、単独新設分割の場合、新設分割会社に対する株式の割当てをし、共同新設分割の場合、一部の当事会社に割当てをし、他の当事会社に割当てをしないという取扱いも可能です。 なお、新設分割対価について新設分割計画で定める理由として、ア〜ウの3点があげられます。 ア.新設分割計画を株主総会の特別決議により承認する原則的な場合には、新設分割の対価が適正かどうかを株主の判断に委ね、株主が合理的な判断を下すのに必要な情報を開示ないし説明する機会を与えるため。例えば、新設分割会社に不利な条件で対価が割り当てられることにより、その会社の株式価値が大幅に低下するおそれがある、など。株主は新設分割計画の内容・条件等の重要な情報の提供を受け、それに基づいて議案を承認するかを判断します。 イ.議決権の有無を問わず、新設分割では、簡易分割に該当する場合を除き、新設分割会社の株主に株式買取請求権が認められているので、株主が権利行使をする、あるいは株式を売却するかなどの議決権行使以外のとり得る対策を講ずるために必要な情報を提供するためです。 ウ.対価の適正・公正さの判断に加え、新設分割では、新設分割会社の権利義務が新設分割設立株式会社から交付される対価に返還されるという効果が生じ、そのこと自体に基づく影響をどのように考えるかについて無株主に判断する機会を与える必要があるということ。新設分割会社の株主の権限の一部が会社の経営陣の権限に移転するという、いわゆる株主権の縮減という事態への対処です。 A)新設分割設立株式会社の資本金等 新設分割計画には、新設分割設立株式会社の資本金および準備金の額に関する事項を記載しなければなりません。その資本金および準備金の額の算定方法については、会社計算規則で規定されています。 ア.単独新設分割の場合 単独新設分割の場合は、株主資本等変動額の範囲内で、分割会社が新設分割計画に従い、それぞれ定めた額とし、利益剰余金の額はゼロとする(会社計算規則49条2項)。株主資本等変動額の算定については次の二つの場合に分けて、会社計算規則で規定しています。 @企業結合に関する会計基準にいう事業を移転する新設分割 単独新設分割においては、設立会社は分割会社の完全子会社となり、したがって、この場合、株主資本等変動額は、新設型再編対象財産の新設分割の直前の適正な帳簿価額を基礎として算定する方法によって算定されます(会社計算規則49条1項、50条、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針261項、227項)。 A@の事業にあたらない権利義務を移転する会社分割の場合に この場合は、企業結合に関する会計基準は適用されず、新設型再編対象財産には時価が付されることになります(会社計算規則49条1項括弧書)。 会社法は、資本金の額及び資本剰余金の額を株主払込資本変動額の範囲内で、新設分割計画の定めに従い、ゼロ以上の額であるかぎり自由に配分することができます(会社計算規則49条2項)。その理由は、新設分割では資本金や準備金の減少の場合と同じように、債権者異議手続がとられることによるものです。これに対し、利益剰余金の額は、原則として変動しませんが、株主資本等変動額がゼロ未満の場合は、株主資本等変動額をその他利益剰余金の額とし、資本金、資本準備金及び利益準備金の額はゼロとするものとされています(会社計算規則49条2項但書)。資本金、資本準備金および利益準備金の額は分配可能額算定の基礎となる数値であり、会社財産を維持するための数値だから、負の値となることはなく、その他資本剰余金の定義上、設立時のその他資本剰余金の額を負の値とすることは不適切であるから、その他利益剰余金の額とされたものです。 イ.共同新設分割の場合 2社以上の会社が共同新設分割をする場合には、第1段階の計算では、仮に各新設分割会社が他の新設分割会社と共同しないで新設分割を行うことによって会社を設立するものとみなして、仮会社の計算を行うとしています(会社計算規則51条1項)。仮会社では、新設型再編対象財産に新設分割会社の分割直前の帳簿価額を付するものとして経験されます。第2段階の計算では、各仮会社が新設合併をすることにより設立される会社が新設分割設立会社になるものとみなして、新設分割設立会社の株主資本等の計算が行われます(会社計算規則51条2号)。 ロ.新設分割対価が新設分割設立会社の社債等の場合(763条1項8号) a.新設分割設立会社の社債(763条1項8号イ) 新設分割の対価が新設分割設立会社の社債であるときは、その社債の種類および種類ごとの各社債の金額の合計額またはその算定方法を記載しなければなりません。すなわち、社債の利率、償還方法・期限、利息支払いの方法、社債券を発行するときはその旨等を決定する必要があります(744条5号、会社法施行規則165条)。 b.新設分割設立会社の新株予約権(763条1項8号ロ) 新設分割の対価が新設分割設立会社の新株予約権であるときは、その新株予約権の内容まおよび数または算定方法を決定しなければなりません。新設分割設立会社が分割対価として発行する新株予約権については、募集新株予約権の募集に関する会社法の規定は適用されません。 c.新設分割設立会社の新株予約権付社債(763条1項8号ハ) 新設分割の対価が新設分割設立会社の新株予約権付社債であるときは、新株予約権先社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額または算定方法、社債に付された新株予約権の内容および数またはその算定方法を決定しなければなりません。 ・新設分割会社の新株予約権者の取扱い(763条10、11号) 新設分割において新設吸収分割会社の新株予約権の新株予約権者に対して、それにかわる新設分割設立会社の新株予約権を交付する場合。分割会社の新株予約権者の有する分割会社の新株予約権は、設立会社には承継されず、設立会社はそれに代わって新設分割計画に定める内容および数・算定方法に従い、かつ、割当に関する定め(763条10号)に従って設立会社の新株予約権を交付します(763条11号)。この場合、会社分割の効力発生日に新設分割計画新株予約権は消滅します(764条7項)。会社法は新設分割会社の負う新株予約権の債務の内容については分割会社の株式の交付であるため、設立会社がそれに代わる設立会社の新株予約権を交付する新株予約権を交付することを、新株予約権の承継という法律構成とするのではなく、いったん分割会社の新株予約権は消滅するものとしたうえで、設立会社の新株予約権を交付するという構成にしました。 新設分割設立会社の新株予約権が交付される分割会社の新株予約権者の有する新株予約権の内容(763条10号イ)および交付される承継会社の新株予約権の内容および数または算定方法(763条10号ロ)を決定します。また、分割会社の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、社債部分と新株予約権部分を切り離し、社債は債務の承継として、新設会社が新株予約権先社債の債務を承継する旨ならびにその方法を記載しなければなりません(763条10号ハ)。 吸収分割会社の新株予約権の新株予約権者に対して、それにかわる承継会社の新株予約権者を交付するときは、吸収分割契約新株予約権の新株予約権者に対する吸収分割承継会社の新株予約権の割当に関する事項を定めなければなりません(763条11号)。 新設合併の場合には、消滅会社の新株予約権者に対して新設合併設立会社の新株予約権または金銭を消滅会社の新株予約権に代わって交付することが認められている(753条1項10号)のに対して、新設分割の場合には新設分割設立会社の新株予約権の交付しか認められておらず金銭を交付することが認められていないのは、新設分割会社の新株予約権が当然に消滅するわけではないからです。もっとも、新設分割会社が新株予約権を発行する際に、新株予約権の内容として、新設分割を行う場合には、会社が金銭を対価として新株予約権を取得する旨の定めを置くことにより、金銭を交付することができます。 ・事実上の人的(分散型)新設分割(763条12号) 旧商法では認められていた人的分割は、会社法では原則として認められません。しかし、763条12号は、新設分割会社を通じて、全部取得条項付種類株式の取得または剰余金の配当という法形式で分割対価である承継会社の株式を分割会社の株主に交付・配当することにより人的分割と同様の効果を認めました。分割対価の一部を分割会社に、残りを分割会社の株主に交付することにより実質的に実現できるというわけです。会社法が人的分割や中間型の会社分割を廃止したのは、会社分割の対価および剰余金配当の対象財産の柔軟化を認め、承継会社の株式以外の財産を交付することが可能となった会社法の下では、人的分割や中間型の会社分割を、会社分割の対象資産等を単に売却して剰余金の配当等により金銭等を分割する場合と区別することが困難になったためです。 その手続きとしては、新設分割設立株式会社の設立の日に全部取得条項付種類株式の取得または剰余金の配当を行う旨を新設分割計画に明記します。全部取得条項付種類株式の取得には株主総会の特別決議が必要です(171条1項)。また剰余金の配当として吸収分割承継会社の株式を現物配当するときも株主総会の特別決議が必要となります(454条4項)。ただし、いずれの場合も、会社分割の対価が承継会社の株式な限られるときは、分割可能額規制の適用が除外されます(792条)。763条12号の規定により分配可能額規制の適用が除外されるためには、事実上の人的分割を行う場合に交付される新設分割設立会社の株式は、新設分割の対価として交付された新設分割設立会社の株式が新設分割会社の株主に交付される場合に限られます。 ※分割型新設分割の設立会社の資本金等 分割型新設分割の新設型再編対価の全部が新設分割設立会社の株式である場合には、新設分割設立会社の株主資本の額については、共通支配下の取引である分割型新設分割の場合には、分割型新設分割により変動する新設分割会社の資本金、資本剰余金および利益剰余金の額をそれぞれ新設分割設立会社の資本金、資本剰余金および利益剰余金の変動額にすることができるとし、新設分割会社で計上されていた株主資本の内訳を適切に配分した額をもって設立会社において計上することができます。 ü
法定の決定事項以外の事項 新設分割計画で決定すべき法定事項以外の事項等について任意に定めることはできますが、新設分割の効力発生時に当然に効力が生ずるものではなく、設立会社の定款が作成されてはじめて効力が生じ、また、共同新設分割において規定された任意的記載事項については、共同新設分割の当事会社で債権的効力を生ずるにすぎず、新設分割計画を承認する株主総会決議とは別に、それぞれ法定の手続きに従わなければなりません。 実務上は、新設分割設立会社の成立の日、新設分割会社の新設分割設立会社に対する競業避止義務等について規定が置かれることも多いです。なお、このうち新設分割会社の新設分割設立会社に対する競業避止義務は、事業が会社分割の対象となっている場合には21条の規定が類推適用されると解されています。したがって、競業避止義務についての約定が為された場合には、21条2項の類推適用により分割の効力発生日から30年の期間内に限り有効とされるものと考えられます。 また、新設分割設立会社に何らかの義務を課す場合には、会社は新設分割の効力発生日すなわち成立の日まで存在しないのだから、新設分割設立会社の定款に規定しておくか、会社が成立した後、あらためて新設分割会社との間で契約を取り交わす必要があります。 計算書類等の監査等(436条) 計算書
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