補充原則1−1.B
 

 

 【補充原則1−1.B】

上場会社は、株主の権利の重要性を踏まえ、その権利行使を事実上妨げることのないよう配慮すべきである。とりわけ、少数株主にも認められている上場会社及びその役員に対する特別な権利(違法行為の差止めや代表訴訟提起に係る権利等)については、その権利行使の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。

 

〔形式的説明〕

この補充原則の主眼は、一般に少数株主の権利行使が事実上妨げられるようなケースが生じ易いことへの注意を喚起し、そのための配慮を求める点にあります。それが前半の文で、上場会社に配慮を求めています。後半の文では、とくに少数株主権について、OECD原則を踏まえて配慮を求めています。これは、あくまでも株主の権利行使が妨げられないようにするということで、実際上、株主の権利行使の妨げをできるのは発行会社しかないので、上場会社が、そのような行為を行なわないということになります。例えば、委任状勧誘等の場合において、株主が株主名簿の閲覧を上場会社に求めた際に、その会社が不当に対応を遅延し、結果的に株主総会の開催日になってしまって、その株主が十分な勧誘行為をすることができなかったケースなどが想定されます。

従って、この補充原則に対しては、上場会社が株主の権利行使を妨げる行為をしたときに、エクスプレインの義務が生じると考えられます。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

@実務対応について

少数株主権に対する企業の実務対応で問題となるのは、上記説明で例示されている株主名簿の閲覧請求もありますが、株主提案権に対する対応もあるだろうと考えます。それは、株主からの提案に対して、定款や株式取扱規則において条件を付していることです。例えば、内容説明を400字以内にまとめなくてはならないとか。昨今の1人の株主が数十件の提案をするという非常識な提案に対して、企業側が防衛措置を講ずることは、この原則に抵触することになるのか。議論が岐れるのではないかと思います。このあたりの議論は企業が置かれた状況によって変わってくると思いますが、将来どうなっていくのかという議論は、その際に必要になってくると思います。

A投資家視線での改善策

日本の上場会社はリーガルリスクへの意識が高く、株主の権利行使に際して法令による形式的手続きを重視します。万が一の瑕疵が発生しないようにという姿勢は、海外の機関投資家からは、株主の権利行使を制限しているように受け取られるように感じられてしまうおそれがあります。例えば、株主名簿の閲覧請求に対する会社の対応が遅いとか、株主提案を制限していると見られてしまうことです。

これに対して、例えば、実際に株主権が行使された場合に、正確な法的手続を踏めるように事前に、その方法を事前に告知していくことが考えられます。株主名簿の閲覧であれば、申請のための書類の書式(必要な記載項目)と提出先と手続方法をホームページに掲載することが考えられます。

実例としてアサヒグループホールディングスなどがあります。

 


関連するコード        *       

基本原則2.

原則2−1.

原則2−2.

原則2−5

補充原則2−5.@

基本原則4.

基本原則5.

 
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