補充原則1−1.A
 

 

 【補充原則1−1.A】

上場会社は、総会決議事項の一部を取締役に委任するよう株主総会に提案するに当たって、自ら取締役会においてコーポレートガバナンスに関する役割・責務を十分に果たし得るような体制が整っているか否かを考慮すべきである。他方で、上場会社において、こうした体制がしっかりと整っていると判断する場合には、上記の提案を行うことが、経営判断の機動性・専門性の確保から望ましい場合があることを考慮に入れるべきである。

 

〔形式的説明〕

この補充原則は、株主総会決議事項の一部を取締役会に委任するよう株主総会に提案する場合には、取締役会においてコーポレート・ガバナンスに関する役割・責務を十分に果たしうる体制が整備されているか否かを考慮しなければならない。そのことで株主の権利が間接的に確保されるようにするというものです。

ここで言う取締役会への「委任」とは、会社法上「委任」と整理されているもの(例えば会社法200条)に限らず、「株主総会決議事項とされている事項を取締役会が決定することができる旨を株主総会で決定すること」全般を指すものと考えられます。会社法上、法定の株主総会決議事項のうち、このような意味での取締役会への委任が可能な事項は、

(1)取締役会が定めることができる旨の定款の定めを設けることにより委任することができる事項

剰余金の配当(459条)、中間配当(454条5項)、役員の責任免除(426条)、自己株式の市場取引等による取得(165条)、種類株式の内容の決定(108条3項)など

(2)会社法上の明文を持って株主総会決議により取締役会に委任することが認められている事項

株式や新株予約権の募集事項の決定(200条、239条)など

(3)解釈により株主総会決議により取締役会に委任することができると考えられている事項

株主総会での報酬等の総額の決定に基づく各取締役の個別の報酬等の決定など

ここで求められているのは、取締役会への委任を株主総会に提案する場合にコーポレート・ガバナンス体制が整っているかどうか、そして体制が整っていると判断できるのであれば提案がのぞましいか否か考慮するということです。つまり、この補充原則には次のような段階の条件があり、段階的に判断していく必要があります。

@)取締役会への委任を株主総会に提案する場合であること

このような提案を行なわない場合には、特段の対応は不要であり、また、すでに定款の定めを置いたり、株主総会の決議を行なって取締役会への委任を行っている場合、改めて特段の対応は必要ないと考えられます。

A)前段の場合で、取締役会においてコーポレートガバナンスに関する役割・責務を十分に果たし得るような体制が整っているか否かを考慮すること

この場合、体制が整っていないと判断される場合には、前段の提案自体を引っ込めるか、この補充原則に関して、エクスプレインすることになります。

B)前の2段階が当てはまる場合で、このような提案を行うことが、経営判断の機動性・専門性の確保の観点から望ましい場合があることを考慮に入れること

ここで、考慮に入れていると判断されれば、コンプレインということになります。ただし、そもそも、株主総会に議案として提起する場合に、事前に考慮されているはずなので、建前としては、コンプレインでなければおかしい、ということになるはずです。エクスプレインの必要があると判断した場合に説明のしようがないので、提案自体を引っ込めて、最初から、この補助原則を考慮する必要がないということになるのが、実際上の実務ということになるのではないでしょうか。

なお、ここで、考慮が求められていますが、考慮するということだけで、その結果、議案の提案に何らかの株主の権利保障がなされないといけないとか、結果を説明しなければいけないとか、具体的な実行を求められてはいません。単に考慮と言う行為をするだけです。

 

 

権限委任のあり方の基本方針の試み

 実例からは乖離しているようですが、コードの趣旨により沿うように、このような株主総会の権限を取締役会が行使する、さらには、取締役会の権限のうち業務執行に関する権限を委任する(補充原則4−1@)のはセットとして、考えてみました。これは、コーポレート・ガバナンス体制として報告できると思います。

 

コーポレートガバナンスの体制

(1)業務執行の体制

@会社の基本的事項の決定に関する状況

当社は、毎年6月に定時株主総会を開催し、会社の体制及び基本事項を決定しております。

@)株主総会の特別決議の要件

当社は、会社法第309条第2項に定める決議の方法について、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上をもって行う旨定款に定めております。これは、株主総会における特別決議の定足数を緩和することにより、株主総会の円滑な運営を行うことを目的とするものであります。

A)株主総会の決議事項を取締役会で決議することができる事項

剰余金の配当

当社は、株主への機動的な利益還元を可能とするため、会社法第454条の規定に従い、取締役会の決議により、剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。

自己の株式の取得

当社は、自己の株式の取得について、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能とするため、会社法第165条第2項の規定に従い、取締役会決議によって市場取引等により自己の株式を取得することができる旨を定款で定めております。

役員報酬額

当社の役員報酬は〔報酬の額又はその算定方法の決定方法の開示内容〕で説明しているとおり、株主総会で承認いただいた報酬枠と計算方法に則って、各取締役の報酬額を決定しております。

A経営上の意思決定、執行および監督に係る経営管理組織その他の体制の状況

当社は監査等委員会設置会社であります。

取締役会は取締役6名で構成されており、毎月1回開催し、経営の基本方針等経営に関する重要事項を決定しております。このうち、監査等委員としての取締役が3名でうち過半数となる2名が社外取締役で、監査等委員でない取締役が3名で業務執行に直接かかわっております。なお、取締役の定数に関して当社定款において監査等委員以外の取締役5名以内、監査等委員の取締役4名以内と定めております。

なお、取締役の選任要件については、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって行う旨を定めております。また、取締役の選任決議は累積投票によらない旨も定款に定めております。

取締役会で決定した方針に従い代表取締役が業務執行を担っており、毎月開催される取締役会において経過報告が行なわれております。代表取締役の下には、取締役会で選任された執行役員が各部門の責任者として業務執行を行っております。

監査等委員会は3名で構成されており、うち常任の監査等委員1名、社外取締役名であります。常任の監査等委員は締役会以外に、執行役員会、部長会を始め重要な会議に出席し、経営監視の役割を果たしております。

会計監査人である新日本有限責任監査法人からは、監査契約に基づく会計監査及び内部統制監査を受けております。

B業務執行の体制の状況

業務執行にかかる機関として、月1回執行役員の会議を開催し、代表取締役社長をはじめとした業務執行取締役、常任の監査等委員の取締役も出席し、業務執行について、状況の報告と業務執行のための重要事項の協議を行っております。

※代表取締役への権限委任に基づく執行役員会の決定権限

取締役会は重要な経営の意思決定を行いますが、その内容としては法定の決議事項の他には、経営の基本方針、中期経営計画及び当社グループ全体のかかわる組織変更や事業方針に関わる事項を決議しており、実際の事業部の個別の業務執行に係わる事項は、実際には執行役員会において協議しております。たとえば、事業部単位での事業計画、契約関係、設備投資、人事関係、などがそれに当たります。

また、執行役員会を補完するため、毎月部門会議を開催し、代表取締役と事業部、部門ごとに事業計画の進捗状況を確認しております。そして、隔月で部長会を開催し、各部署の部長以上が出席し、事業の状況把握と情報の共有化を図るとともに、事業部や部門を横断したヨコの連係を図っております。


関連するコード        *       

基本原則2.

原則2−1.

原則2−2.

原則2−5

補充原則2−5.@

基本原則4.

基本原則5.

 
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