新任担当者のための会社法実務講座 第774条 株式移転の効力の発生等 |
Ø 株式移転の効力の発生等(774条) @株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得する。 A株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、前条第一項第六号に掲げる事項についての定めに従い、同項第五号の株式の株主となる。 B次の各号に掲げる場合には、株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、前条第一項第八号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。 一 前条第1項第7号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの社債の社債権者 二 前条第1項第7号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの新株予約権の新株予約権者 三 前条第1項第7号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者 C前条第1項第9号に規定する場合には、株式移転設立完全親会社の成立の日に、株式移転計画新株予約権は、消滅し、当該株式移転計画新株予約権の新株予約権者は、同項第10号に掲げる事項についての定めに従い、同項第九号ロの株式移転設立完全親会社の新株予約権の新株予約権者となる。 D前条第1項第9号ハに規定する場合には、株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、同号ハの新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する。 株式移転の効果は、一般的に株式移転の効力発生日に、株式移転完全親会社が株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得し、株式移転完全子会社の株主は株式移転計画の定めに従い株式移転完全親会社の株主になることで、完全親子会社関係が創設されることです。 ü
効力発生日(774条1項) 株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得します(774条1項)。新設型再編受入会社では、受入会社を新たに設立するので、株式会社成立の日、すなわち設立登記の日に、株式移転の効力が発生します。株式移転の登記申請書には、債権者異議手続きが適法に終了したことを証する書面を添付します。 ü
株式移転完全子会社の株主の地位(774条2項) 株式移転における完全子会社の株主は、株式移転の効力発生日に、株式移転計画の移転対価の割当てに関する定めに従って、移転対価は株式移転完全親会社の株式なので、完全親会社の株主となり(774条2項)、移転対価が完全親会社の社債である場合には、その社債の社債権者となり(771条3項)、 移転対価が完全親会社の新株予約権である場合には、その社債の新株予約権者となります(771条3項)。 ü
社債、新株予約権の取扱い(771条3項) 株式移転完全子会社が社債、新株予約権あるいは新株予約権付社債を発行している場合、社債権者、新株予約権者等は株式移転の効力発生日に、株式移転計画に従って、それぞれ株式移転完全親会社の社債権者、新株予約権者等になります。 ü
株券の提出手続 株式移転により株式移転完全子会社の株主は、株式移転完全親会社の株主となるわけですが、そのために株式移転完全子会社の株主は保有する株式を提出し、代わりに株式移転完全親会社の株式の交付を受けることになります。そのために、株式移転完全子会社が株券発行会社である場合は、株式移転の効力発生日までに会社に株券を提出しなければならない旨を株式移転の効力発生日の1ケ月前までに公告し、かつ株主および登録株式質権者に対して各別に通知をしなければなりません(219条1項)。株式交換完全子会社の株券は株券提出日(株式交換の効力発生日)に無効となります(219条3項)。 株券提出手続の制度趣旨は、株式移転によって完全子会社の株主の地位に重大な影響が生じることから、公告によって株式の名義書換を促し、新たな権利者を可及的に正確に確定するとともに、完全子会社の株券が株式移転の効力発生日をもって無効となることから、株券をあらかじめ完全子会社に提出させ、効力発生後に無効となった株券が流通することを防ぐことにあります。 株式移転完全親会社は、株券を提出しない株主名簿上の株主に対しては、株券の提出があるまでの間、交換対価の交付を拒むことができます(219条2項)。 ・株券提出手続が不要となる場合 株式移転完全子会社が株券発行会社であっても、現実にすべての発行済株式について株券が発行されていない場合には、株券提出手続をとることが求められません(219条1項柱書但書)。例えば、すべての株主が株券不所持の申出をしたことにより株券が一切発行されない場合(217条)や、完全子会社が全株式上制限会社であり、すべての株主から株券発行の請求がないために株券が発行されていない場合(215条4項)などです。 ・通知対象となる株主の確定 株券提出手続において通知対象となる株主は、株式移転承認のための株主総会において議決権を行使できる株主を特定するために設定された基準日における株主とは異なることになり、また、株式買取手続の株主への通知(785条3項)とは異なり、株券提出手続は必ずしも株主総会の議決権行使に関連するものではないことから、理論的には、通知を発送する直近の株主名簿を確定したうえで、その株主に通知するものと考えられます。 この点については、株券電子化の実施前では、上場会社が完全子会社となる場合に株券提出手続を行う場合、実質株主を含めて株主名簿を確定するためには別途基準日を設けて実質株主を確定する必要があり、上記の株券提出の通知発想の目的でこの作業を行うのは現実的ではなかったため、問題とされていました。しかし、株券電子化により上場会社は株券不発行会社となり、株券提出手続の必要がなくなったので、上記論点が実質的に問題する意味がなくなりました。 ・通知および公告 株券提出手続の目的は、株主の名義書換を促して新たな権利者を確定するとともに、旧株券を回収することにあることから、株券提出手続において株券の提出を求められるのは株式移転完全子会社の株主名簿上の株主だけでなく、名義書換未了のまま旧株券を所持する株主も含まれます。そこで、株券提出手続においては、株主名簿上の株主および登録株式質権者に対して個別に通知するだけでなく、定款所定の方法によって公告をしなければならないとされています(219条1項柱書)。 ・旧株券の紛失・喪失の場合 株券提出手続において、株式移転完全子会社の株主が旧株券を紛失などして提出することができない場合には、異議催告手続をとることが認められています。すなわち、株式移転完全子会社は、株券を提出することができない者の請求により株式交換の効力発生後に、利害関係人に対して、異議があれば3ケ月以内の一定の期間内に述べることができる旨を公告して、その期間内に異議を述べる者がいなければ、株式移転完全親会社は、異議催告手続の請求をした者に対して交換対価を交付することができます(220条1、2項)。その広告の費用は異議催告手続を請求した株主の負担となります(220条3項)。 異議催告手続の効果は、異議申立期間内に利害関係人から意義の申立てがなかったことにより、その請求者が権利者と推定され、株式移転完全親会社は、請求者に交換対価を交付すれば免責されるという点にあります。 ・株券不所持の場合 株券不所持の申出があった場合には、会社は遅滞なく株券を発行しない旨を株主名簿に記載または記録することにより、株券不発行の措置をとらなければなりません(217条3項)。この場合には株主が会社に提出した旧株券は、株主名簿に記載または記録された時点で無効となります(217条5項)。したがって、株券不所持の申出があって株券不発行の措置がとられている株券については,株券が発行されていないことになるから、その株式の株主は株券提出手続がとられている場合でも、特段の手続をとる必要はないことになります。実務上は、株券提出の株主への通知の中で、株券不所持の申出をしている株式については、株券提出の手続は必要ない旨を注記することが一般的です。 ・上場会社の株式の取扱い 上場会社の株券は電子化されたため、上場会社を完全子会社とする株式移転では、完全子会社について株券は発行されていないことになるため、株券提出の手続は不要とされました。 ü
株式移転の登記 会社法925条各号に掲げる日のいずれか遅い日から2週間市内に、株式移転により設立する完全親会社の本院所在地を管轄する登記所に、完全親会社設立の登記を申請しなければなりません(925条)。 株式移転では、通常は、完全子会社については株主構成の変更が生じるだけなので登記事項の変更は生じません。ただし、完全子会社の新株予約権者に対して完全親会社の新株予約権が交付される場合には、完全子会社についても株式移転による新株予約権のへんこう(消滅)の登記が必要となります。これは完全親会社の設立の登記申請と同時にしなければなりません(商業登記法91条2項)。 ・完全親会社についての変更の登記 @)登記事項 完全親会社について、株式移転に伴って登記すべき事項としては、通常の瀬率の登記事項と同じで(925条、911条3項)、完全親会社が株式移転にあたって完全親会社の新株予約権を交付したときは、それに関する事項があります。 A)申請と添付書類 完全親会社による会社設立の登記申請に必要な書類を添付します。 計算書類等の監査等(436条) 計算書
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