新任担当者のための会社法実務講座 第328条大会社における監査役会の設置義務 |
Ø 大会社における監査役会の設置義務(328条) @大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。 A公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。 ü
監査役会設置の経緯 上場会社における第二次世界大戦後の会社の機関に関する法改正の歴史の相当部分は、監査役制度の強化の歴史と言っていいものです。現在の制度の源となった改正を遡って概観してみると、昭和49年の商法改正で、この契機となったのは昭和40年の山陽特殊製鋼事件をはじめとした粉飾決算による倒産の発生です。このとき監査役は株主総会で粉飾決算の計算書類を適正・妥当と報告しでおり、監査制度への強い批判が起こったことからです。この改正で、株式会社を規模に応じて大中小の三種類にわけて、中会社では会計監査人には会計監査の権限しか与えられていなかったのに、新たに業務監査権が加えられました。また大会社では、監査役に業務監査権が与えられるとともに、会計監査人による会計監査を義務付けられました。そして、すべての会社で監査役の任期は2年に延長され代表取締役からの独立性を高められました。 その後昭和56年の商法改正は、ロッキード事件などの大型疑獄事件で会社資金不正支出という不祥事が明るみに出たことなどから、監査役制度の充実のため、次のような改正がありました。監査役の報酬や監査費用の独立性、監査役の取締役会招集権、取締役の取締役会への報告義務など、その他大会社においては監査役の複数名選任と常勤監査役制度。 そして、平成5年には証券・金融不祥事の続発を契機に監査役の任期を3年に伸長し、大会社での監査役人数の増加、社外監査役制度及び監査役会制度の導入が決められました。 この監査役会導入の理由は、大会社において監査役の員数が3人以上とされて、取締役が3人以上で取締役会が設置できるのと同じように監査役会も設置できるようにするのが自然ということ。また社外監査役の導入も併せて決まったことに関連して、監査役の間で役割を分担し、かつ、それぞれが担当した調査の結果を監査役全員の共通の情報として、組織的、効率的な監査をすることができるようにするためということ。そしてまた、監査役会として業務執行陣に意見を述べることにより、監査役が個々に意見を述べるより、経営陣に対する影響を強められること。これらの理由からです。 ü
外部監査として会計監査人 上述の通り、昭和49年の商法改正によって会計監査人による決算監査が大会社に義務付けられました。会計監査人は、監査役と同じく、株主総会で選任されますが、監査役とは異なり、会社の機関を構成するものではなく、会社の外部の者であって、会社との契約によって会計監査の委託を受ける者と解されています。会計監査人の監査を外部監査というのは、そのためです。 大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であるか、または最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上のどちらかの要件を充たす会社です(2条6号)。このような大会社は、公開会社であろうとなかろうと、会計監査人を置かなければなりません(328条2項)。これは会社の規模が大きくなると計算関係も複雑になることが予想され、また債権者等の利害関係人も多岐にわたると考えられます。そこで、計算書類について独立した会計に関する職業的専門家の監査を受けることが必要であると考えられました。 なお、大会社以外の会社でも会計監査人をおくことは可能ですが、その場合には必ず監査役を置かなければなりません(327条3項)。なお、指名委員会等設置会社では、大会社でなくても会計監査人を置かなければなりません(327条4項、5項)。 ü
監査役会の設置義務(328条1項) 公開会社で大会社は監査役会の設置が義務付けられています(328条1項)。これは、規模が大きく、株主数が対数に及び、しかも株主の変動が頻繁に見られる大会社にあっては、株主自ら経営監督を行うことが難しいので、会計監査人による監査とともに、相互補完の役割を果たす監査役を3名以上選任し、会議体を設けて取締役会への影響力を強化するためです。 これに対して、大会社であっても非公開会社は、規模の大きさゆえに計算関係が複雑となることから会計監査人の監査を要求していますが、閉鎖的な会社であれば、株主自身の監督も不可能ではないことから、あえて監査役会の設置を義務付けないとしています。もちろん、非公開会社であっても、定款に規定することによって、会社の判断で監査役会を設置することは可能です。ただしその場合は取締役会を設置する義務が生じます(327条1項)。 関連条文
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