4.株主総会の実務(2)〜文書
(4)事業報告 IRの面から
 

 

●IRやコーポレート・ガバナンスの視点の記載事項

事業報告は株主総会において報告事項となる項目、つまり、取締役の株主に対する説明義務に入る書類です。この内容に誤りがあったり、記載すべき事項が記載されていなかった場合には、株主総会の運営に欠けている部分があった、株主に対する説明が不十分であったとして株幣総会決議取消事由になってしまう可能性があります。したがって、事業報告は企業の都合にしたがって自由に作成していいものではないのです。あくまでも会社法をはじめとした関係法令に則っていなければなりません。

一方、企業に投資をする投資家や既に投資している株主の側からすれば、企業やその事業の状況や将来に向けて取り組んでいる方向性など知りたいことは沢山あります。そのようなニーズに対して法令で説明するように定められている項目は、必ずしも応えきれていないと言えると考えられています。法令で定められているのは、いわば、これだけは説明しなければならない最低限度という考え方が急速に普及してきていると思います。そのため、企業の側の姿勢が、法令に従って規定されている項目の説明だけしていればよいというものから、法令で規定されている項目を最低基準としてプラスアルファの説明を上乗せしていくという方向に転換してきていると考えられます。ただし、その姿勢には企業によって格差があって、現時点では説明に積極的な企業から消極的な企業に分かれてきていると考えられます。

ここでは、そのうち説明に積極的に取り組んでいく方向で項目の記載について考えて行きたいと思います。なお、積極的に説明しようとする企業の事業報告は、従来の形式にとらわれず、記載事項も法定事項以外の事項を記載しているケースもあります。ここで、それらを網羅的に考えていくことは無理なので、ひとつの視点として、法定記載事項を最低基準として、まずは、その記載方法、どのように説明していくかを、まず、考えていきたいと思います。その中で派生的に、法定記載事項ではないけれど、プラスアルファとて考えられる記載事項にも言及していきたいと思います。

1.会社(企業集団)の現況に関する事項

会社法施行規則120条では「会社の現況に関する事項」として、@主要な事業内容(会社法施行規則1項1号)、A主要な営業所および工場ならびに使用人の状況(同2号)、B主要な借入先(同3号)、C事業の経過およびその成果(同4号)、D直前3事業年度の財産及び損益の状況(同6号)、E重要な親会社および子会社の状況(同7号)、F対処すべき課題(同8号)のほか、G当該事業年度における次に掲げる事項についての状況、ただし重要なものに限る、として⒜資金調達、⒝設備投資、⒞事業の譲渡、吸収、分割または新設分割、⒟事業の譲受け、⒠吸収合併または吸収分割による他の法人等の事業に関する権利義務の承継、⒡他の会社の株式その他持分または新株予約権等の取得または処分(同5号)、さらに、上記のほか株式会社の現況に関する重要な事項(同9項)をあげることができる。なお、このような会社の現況に関する事項は、会社が、その事業年度に連結計算書類を作成している場合には、その会社と子会社からなる企業集団、つまり、連結決算の企業グループ、の現況に関する事項にして記載することができます(会社法施行規則120条2項)。これが法定の記載項目であることは、法定記載項目のところで説明しました。

(1)事業の経過およびその成果(会社法施行規則1項4号)

全般的な事業の状況の説明として、その事業年度における次のような内容を記述します。

@会社(企業集団)をめぐる経済環境

A業界の状況

B会社(企業集団)の状況(売上高、受注高、損益の状況を含む)

というところで、説明に消極的な企業であれば、“当期におけるわが国経済は…”という文章で定形的に説明されます。果たして、この説明をよく読んで企業の状況が理解できる株主、とくに個人株主はどれだけいるでしょうか。もう一方で、説明に積極的な企業は、ここぞとばかりに工夫した説明を様々に行なっています。その事例を追いかけるだけで1冊の本ができてしまうほど様々に試みられています。

ここでは、説明の手法は別に措いて、株主に理解してもらう、その背後には会社の所有者である株主に対して経営者が自身の経営の実績をしってもらい、そのベースとなっている基本方針を理解してもらうという、そもそもの目的を実現していくことを考えていきたいと思います。

では、実際のところ、どのように説明していけばいいのか。招集通知や事業報告について書籍や雑誌などで様々に説明や解説がありますが、実際の具体的なやり方について書かれたものは皆無と言っていいと思います。せいぜいのところが、上で少し述べた抽象的な在るべき論のようなものか、各社の実例をサンプルとして集めてきて提示するという程度です。その理由は簡単です。別に中傷や批判をするつもりはありませんが、そういう解説を執筆している人は学者や弁護士で、企業がどのように事業戦略を策定し、実際の事業活動でどのように実績を積み上げていくかを知らないからです。書くべき内容がどのようなものか分かっていないから、どのように書くべきかを考えることはできないからです。それに、このようなことは各企業の事業内容や経営スタイルによって様々で、一律の方法論で処理できるものではないからです。

そこで、ここでは特定のケースを想定して、そこでの事業報告をどのように作成していくかというプロセスを具体的に追いかけて、それを素材にして考えてみたいと思います。

@事業報告の主体は誰か

具体的な実際に沿って考えようとしたのに、最初から抽象的な話になりました。しかし、避けて通れないことで、通常は等閑にされている印象が強いので、再確認の意味合いをこめて敢えて考えることにします。

端的に言えば、実務的な方面から考えていくと、事業報告の説明の文章を書いていく際に、この文章の主語は誰なのかということです。日本語の文章は主語を省略することが多いので、この点が曖昧なまま文章を作っているケースが多いかもしれません。例えば、常套句となっている“当期におけるわが国経済は…”という文章では、形式的にはわが国経済がどのような状態という内容の文章ということにはなります。

しかし、この文書は会社の持分オーナーである株主に対して会社の事業を報告するものです。わが国経済がどのような状況にあるかというのは、そのような事業の報告をする際に、“このような事業環境で経営した”という説明です。したがって、この報告の中心は“経営した”ことの報告です。“このような事業環境”というのは、その経営したという報告のためのものです。当然、経営を実行するためには、その環境がどのようなものかを認識するわけで、“このような事業環境”というのは、そのような認識のことです。このとき、認識するのは誰なのか、つまり経営判断をする人は誰なのか、それが、この事業報告の文章の隠れた主語です。端的に言えば、経営の責任者です。

これは海外、例えばアメリカのニューヨーク証券取引所の上場企業の場合には、年次報告書(アニュアル・レポート)の作成が義務付けられていますが、そのなかで日本の事業報告の「事業の経過およびその成果」にあたるものとして、経営者が株主に対して通称「株主への手紙」という経営者による株主への自身の言葉での報告、業績アピールがあります。これは海外、例えばアメリカのニューヨーク証券取引所の上場企業の場合には、年次報告書(アニュアル・レポート)の作成が義務付けられていますが、そのなかで日本の事業報告の「事業の経過およびその成果」にあたるものとして、経営者が株主に対して通称「株主への手紙」という経営者による株主への自身の言葉での報告、業績アピールがあります。

これは多くの企業のCEOにとっては自身のアピールの場になるので、自らペンを執って経営の信条や方針、あるいは戦略を語っているケースが多いのです。なかには、長大な株主への手紙を執筆し、株主が楽しみにしているところもあれば、かつてのGEのCEOのジャック・ウェルチの執筆した株主への手紙がまとめられて出版されたケースもあります。参考として、JPモルガン・チェースのCEOジェイミー・ダイモンの執筆したものバークシャー・ハサウェイのCEOウォーレン・バフェットの執筆したもの  (オーソライズされた翻訳はないので、私が個人的に訳したのはこちら)などは個性的なものとして挙げられます。これらの例は極端かもしれず、日本企業の事業報告では実際のところ参考としてパクることのできるものではないでしょう。しかし、事業報告とは、このような精神で作成するものであるということを、作成者は肝に銘じておく必要があるのではないかと、私は考えています。ここから先は、そのような考えを前提に、こうしたいいのではないか、という議論を展開していきます。ですから、ここで意見を異にするようであれば、この先は読んでも無駄になると思います。先に断っておきます。

精神論に終始しても議論が先に進まないのですが、もう少しだけお付き合い願います。事業報告の文章の主語は経営者であるということを述べました。そしてアメリカの有力なCEOは本当に自分で文章を書いているということも紹介しました。では、日本の企業ではどうか、社長自ら文章を書くというケースは皆無ではありませんが、ある程度歴史のある企業では、法務とか経理とかあるいはIRの部署で、あるいはその責任者(とはいっても担当が下書きをしたりするのでしょうが)作成するのが多数ではないかと思います。その時に、経営者となって語るということです。単純に言えば。これは、言葉で言うのは簡単ですが、実行はかなり難しい。まず、経営者の視点で自社の業績を見ることが果たしてできているのかという点が第一。次に仮に、奇跡的にそれができたとしても、それで作った文章に対して社内でコンセンサスを得ることができるか。そして、さらに奇跡が起こってそれを公表した場合に、それに対して対外的に議論がうまれたり、質問や意見が寄せられたときに、それに対応できるか。簡単に予想しただけでも、これだけの困難がすぐに予想できてしまいます。現在の、事業報告の文章を主語がなくて、それだけ無責任に思えてしまうのは、そうした困難を越えられないでいるからではないか、と個人的な偏見ですが考えています。事業報告などとこだわることなく、虚心坦懐にさきほど参考としてあげたCEOの文章を読むと、惹き込まれてしまい、その執筆しているCEOに魅せられてしまいそうなりますが、日本企業の事業報告の文章からは、そういうことはあり得ません。そんなことは事業報告という文書とは関係ないことだという意見もあるかもしれません。しかし、事業報告というのは誰が読むのかといえば、企業に投資している株主です。株主に企業や経営者を好きになってもらい、信頼してもらい、そして投資を続けたり、増やしてもらうためです。また、投資家に対して企業に興味を持ってもらい、投資をしてもらうことを目標としているはずです。そのように株主や投資家を説得することを目標として、その説得する主体がハッキリせず、責任をとらずに逃げ腰であれば、説得等できないのは常識といってもいいでしょう。だから、敢えて、ここで精神論を長々と述べたわけです。

A経営者を主語とする事業報告の作成を試みる

説教みたいなことは、このくらいにしましょう。ここでは、偏ったものになるかもしれませんが、ひとつの例を想定して事業報告の文章を考えていきたいと思います。なお、最近では、この事業報告の作成について、グラフや図表を割り付けたり、カラー印刷にして読みやすくしたりと、全体として会社をシスを親しみ易く紹介する体裁を試みる企業も多くなってきました。ここでは、あとで、その実例を少し見ていきたいと思いますか、そのように見易くする前に、何を株主に対して説明するのか、それに伴って、どのように説明するのか、を考えていきたいと思います。

●ゴールは業績数値という客観性ではなく、評価という主観

では、始めましょう。説明する主体は経営者です。そして説明を受けるのは株主(投資家)です。そこで、株主は経営者から事業の経過及び成果の説明を受ける際に、何を一番教えて欲しいと思うでしょうか。売上とか利益といった結果の数字でしょうか。そういう結果の数字はもちろん大切ですが、経営者から説明を受けるのであれば、その数字の評価をむしろ聞きたいのではないでしょう。つまり、売上や利益がこのような結果だったが、それは本来の実力を超えたフロックだったのか、本来はもっといけるはずなのが数字に出てこず不満が残ったのか、結果はよい数字ではなかったが現時点では健闘したとして納得しているのか、そういったことではないかと思います。それによって、企業の今後の姿勢が見えてくるからです。そして、その説明をするためには、単に満足したという説明であるならば、その理由として、今期は、このような施策を進めて、このようなところまで達成したという説明がなければ、納得できないでしょう。

それでは、法定文書の条件として最初に概観した“全般的な事業の状況の説明として、その事業年度における次のような内容を記述します。@会社(企業集団)をめぐる経済環境、A業界の状況、B会社(企業集団)の状況(売上高、受注高、損益の状況を含む)” と変わらないではないかと思われるかもしれません。しかし、違うのです。大きな違いは経営者の主観がはいっているか、いないかです。つまり、事業を推進している当事者として経営者が自身の責任のもとに、自分の目で見、自分で動いたことを、自分で語る(もちろん、説明を作成するのは担当者です)わけだす。だから、業績結果に対しての評価と結びつくのです。それでも違いが分からないという方は、もう少し我慢してお付き合いして下さい。具体的なレベルに持っていくと、違いが明らかになってくると思います。

●ゴールからスタートに遡る

先ほど述べましたように、事業の結果として業績の数字は客観的ですが、それは数字を見ればいいことで、いちいち説明してもらう必要はないのです。では、わざわざ説明を数字とは別に求めるかといえば、数字では分からないことを知りたいからです。例えば、同じ1億円の売上という結果でも、ぎりぎりの状態で無理して上げた数字か、好調で次年度に余裕を持たせて出た数字かは、数字を見るだけでは分かりません。たしかに前期比較や伸び率などの分析で傾向を推測することは可能ですが、中長期の傾向であって、短期的にタームでは経営者の説明を聞く以上のことはありません。しかも、抜きん出た経営者であればあるほど客観的なデータや論理を超えた決断をすることがあります(アップルのスティーブ・ジョブスは極端な例かもしれませんが)。その方向性は、その経営者の主観とか方針といったものが反映していると考えられます。株主や投資家は、そういう経営者の行動のヒントを、実は一番知りたいと思うのです。

そこで、事業報告を作成する担当者は、戸惑うことになると思います。それでは、経営者に今期の業績の自己評価を真摯にやってもらって、それを教えてもらわなくてはならないか。実際のところ、経営者と頻繁にコミュニケーションを交わすことは限界があると思います。ここでは、実践的な説明を試みていますが、ここだけはそれを放棄して、理不尽かもしれませんが、それはIRを担当したり、事業報告として会社の事業の報告を株主に向けて説明するものを制作する立場の人間である以上は、そのような視点に立てることは条件でとしてかならず備えていなければならないのではないか、ということを指摘しておきます。本来であれば当然のことなのですが、それを敢えて理不尽と断ったのは、そうでない担当者が実際にたくさんいるからです。しかし、それを備えているか、いないかによって会社を見ることのできるステージが全く違うのです。その段階を昇っていくのは、担当にとって必要なことです。おっと話が脱線しました(別のところで、そのためにはどうすれば良いのかを考えてみたいと思います)。

さて、実際に担当者は経営者ではないので、経営者が株主に語りかける手紙を書けるというと難しい。そこで、経営者ではない担当者が経営者が書くべきことを、まがりなりにも書くようにするにはどうすればよいか。一番良いのは、立場は担当者であっても、経営者と同じマインドで同じように考えることができればいいのですが、なかなかそうはいきません。そこで、考えられる方法として、ゴールである業績の結果に対する評価を確定させて、その理由を遡るように考えて説明の内容を考えていくという行き方です。つまり、業績の結果として売上なり利益の数字が客観的に出てきますが、それに対する経営からの評価をゴールにするわけです。数字に不満か満足かでもいいです。そして、その満足か不満かの理由を遡るためには、経営者の方針なり戦略あるいは、会社の対する考え方が底流しているはずです。それはその会社独自のものであるから、紋切り型の説明はできない。というより、このようなことをやっている会社はないので、パクリようがない。したがって、オリジナルで考えざるを得ないので、深堀りせざるを得なくなる。紋切り型の生半可な姿勢では説明をつくることはできないので、相当の覚悟が必要となるでしょうが、ある程度、作成の筋道があるので、それに従って苦労すればいいというわけです。

そこで、まず第一関門は結果に対する経営者の評価を知ることです。ただし、これは事業会社で事業推進の幹部であれば、経営者の意向は伝達されていると思います。次年度の経営計画や事業目標の設定において、経営者の考えが反映されているはずなので、そこから推測できると思います。もし、それが行なわれていないような会社であれば、経営として難しい状態にあるのではないかと思います。補完するための副次的な情報手段は、いくつか考えられると思います。例えば、会社と労働者との春闘における賃上げや賞与の妥結額とか、社内における年度予算の目標とか、もちろんこれらは前期比較などにより今年度の位置づけを相対的に考えていくわけです。

 

 

(2)設備投資の状況(会社法施行規則1項5号ロ)

法定記載事項、すでに記したように次のとおりです。@当年度中に完成した主要設備、A当年度において継続中の主要設備の新規拡充、B生産能力に重要な影響を及ぼすような固定資産の売却、撤去または災害による滅失など、全社的に見た生産能力の大幅な増減につながる設備の状況を記述します。事業部門が分かれているときは、その属する事業部門の名称も明示します。これは、会社法に規定された記載事項で、最低限としての記載内容を規定しています。

そこで、視点を変えて、そもそも設備投資の状況を掲載する目的はどこにあるのかという点です。法律で決められているからではなく、株主が会社の状況を把握する際に必要な情報だからです。それはどのような必要性なのでしょうか。このことが掲載されることで、会社のどのような状況が分かるのでしょうか。それは、IRという視点で見ても、決算説明会や投資家とのミーティングで設備投資の状況は必須の説明事項になっています。それを参考に、最低限である、法定の記載に対するプラス・αを考えてみたいと思います。

例えば、製造業の場合には、設備投資は製品を生産するために必要不可欠です。新たな設備を導入するということになれば、生産量が増える可能性が高いわけです。従って、設備投資は将来の業績見通しに密接に関係しています。ただし、設備投資の目的は生産設備の増強だけとは限りません。研究開発のために機械が必要とか、従業員の福利厚生や建物の地震対策、あるいは、現行の生産設備が老朽化してしまって更新するなどの様々な目的があります。

<記載事例:セグメント別に主な設備投資の内容を記載する例>

当期におきましては、地設・地産・地消を基本とした生産能力の拡大投資、次世代パワー半導体(SiC、第7世代IGBT等)の開発投資、パワエレ機器の研究開発および鉄道車両機器事業の拠点統合のための建屋投資の実施を設備方針として、リースを含め総額○億円を実施しました。

新技術・新製品開発のため、東京工場(全社研究)・松本工場(パワー半導体)で開発棟を竣工させ、鈴鹿工場においてはパワエレクテクニカルセンターの建設に着手しました。

主な内容は次のとおりです。

発電・社会インフラ分野では、スマートメータの新製品投資、自動化ラインの合理化投資を行いました。また、発電部門では、機械加工設備の更新投資を行いました。

産業インフラ・パワエレ機器分野では、グループ内の□□社(タイ)にコスト競争力強化に向けた生産ラインを増設投資しました。鈴鹿工場に小型モータの国内生産回帰に向けた自働組立ラインの投資を行いました。器具事業では、新製品のための生産設備投資を行いました。

電子デバイス分野では、津軽工場での生産機種拡大のため、半導体前工程の設備投資を行いました。また海外においてはIPM(電力用半導体素子)を増産するための設備投資をフィリピンで実施しました。

食品流通分野では、国内では組立ラインの自働化投資を実施し、中国においては飲料市場の伸長に対応した自販機増産のための設備投資を行いました。

設備投資の内容について、細かく説明されていると思います。しかし、これで業績への影響が分かるでしょうか。例えば、新製品の開発のための設備投資と増産のための設備投資は、設備投資全体での比重はどのくらいなのでしょうか。また、生産設備の増強によって、どの程度増産されるのでしょうか。生産量が増えるということは、売上も増えることに関係してくるでしょう。また、コストダウン効果も出てくるのでしょうが、それは利益と密接に関係しているはずですが、どのくらいなのでしょうか。規模の大きな設備投資というのは中長期の事業戦略と密接に関係しているのですが、そのことを織り込んで、増産やコストダウン効果について説明があれば、株主や投資家にとって、非常に参考になるはずです。

<記載事例:2期比較のグラフする例>

 

設備投資額を単に提示されただけでは、それが会社にとって多いのか少ないのか分かりません。また、設備投資は中長期の見通しで実施されるものですから、単年度の投資額だけでは、その意義がつかめません。そのため、何年かの推移を説明されると概要を把握しやすくなります。記載例は前期との比較ですが、前期より増えたということが分かるだけでも、理解が進みます。

会社法では設備投資の状況の説明を求めています。設備投資を実行すれば、それによって導入した設備は固定資産となります。固定資産は会社の資産として、減価償却されますが、購入した年度だけに限らず、存在し続けます。従って、設備投資の結果、会社の固定資産はどうなっているのか。それは会社全体の生産能力を知る目安にもなります。また、設備については設備投資によって導入するだけでなく、老朽化した設備を廃棄することや、すでにある設備を改良して能力を向上させることもあります。したがって、設備投資を知るだけでは、生産能力がどのように変化したのか全体の傾向を知ることはできません。また、連結のグループ内で、生産子会社間で工場を整理したり、すれば生産性は改善されます。そういったことは設備の状況を概観しないと分かりません。つまり、設備投資の結果として、設備がどうなったのか、それによって会社の能力(生産能力、開発能力など)がどうなったのか。それについての説明があれば、会社への理解は大幅に進むのではないかと思います。

 

(3)資金調達の状況(会社法施行規則1項5号イ)

当年度中の主要な設備投資に充当するための増資、社債発行及び巨額の長期借入などを記述します。経常的な資金調達は含めません。これが会社法に基づき記載すべきとされている内容です。会社法の条文を読む限り求められているのは、事業年度中にあった重要な事柄の中で設備投資とか資金調達などを記載するということになっています。それは、事業年度の特記事項、つまりイベントのようなことで、その報告ということですが。これだけで企業集団の現況を理解することになるのでしょうか。つまり、スポット的に設備投資やそのための資金調達をしたということ、それを報告するわけですが、前項の設備投資が、結局は設備状況がどのように変化したかということが会社の実力を理解できるものであるのと同じように、株主にとっては、資金調達をする力がどれだけあるのかとか(それには自己資本や借入の状況、あるいは資金調達についての基本的な方針に至ることになると思います)、現在の状況、例えば支払い能力がどれたけあるのか、といった内容に行き着くのではないかと思います。

事業報告では計算書類として貸借対照表、損益計算書、そして資本等変動計算書を作成しなければならないことになっていますが、キャッシュフロー計算書は除外されています。しかし、株主や投資家にとっては会社の本質的な財務力として支払い能力でもあるキャッシュフローは、必要な情報でもあります。商法が制定され、この項目が記載事項に入れられた時点では、そのようなニーズはなかったかもしれませんが、現在では、ある意味必須になってきていると考えられます。財務諸表においてキャッシュフロー計算書は当然作成されているし、IR説明会でも必ず報告されています。もし、任意にキャッシュフロー計算書の報告をしないのであれば、その内容を報告することができるのは、この項目以外にはありません。

 

(4)対処すべき課題(会社法施行規則1項8号)

 

(5)財産および損益の状況の推移(会社法施行規則1項6号)

@受注高(長期契約または受注に依存している会社の場合)A売上高B当期純利益C1株当たり当期純利益D総資産または純資産について、当年度を含めた4期について対比の図表を表示するというのが、株懇モデルというスタンダードなものです。

ほとんどの場合、企業集団の業績の推移ということで連結ベースの数値を記載していますが、うち4割で単体の業績推移も併記しています。また、記載する指標として、上記以外には、営業利益、経常利益、1株当たり純資産、自己資本比率、ROE、連結子会社数、ROA、1株当たり配当金、配当性向、フリー・キャッシュフロー、研究開発費、設備投資額、減価償却費、為替レートなど。

また、売上や利益をセグメント別に記載しているケースもあります。

 

(6)重要な親会社および子会社の状況(会社法施行規則1項7号)

親会社の持株数および出資比率ならびに親会社との事業上の関係を記載する。企業集団を構成する連結子会社のうち、上場会社など重要な子会社について、その会社名、主要な事業内容、資本金、資本金、会社の出資比率を記載するところです。

これは有価証券報告書であれば企業集団の状況として、連結の企業グループの概要を説明する項目ということになります。実際のところ、初めて株主になったような人にはそれほど会社や企業グループのことを知らないでしょう。とくにどのような子会社があって、グループの構成はどうなっているのかということは、事業の将来やリスクを考える上で重要な要素になるでしょう。したがって、この記載事項は会社法においては親子関係の確認とか利益相反の確認といったことに焦点を当てていますが、株主や投資家はむしろ企業集団全体の事業体制を把握したいわけで、そのニーズに応えていくことが重要になってくると思います。

<記載事例:拠点展開国・地域を世界地図に示す例>

ジェイテクト(リンクの18ページに該当事例あり)

https://www.jtekt.co.jp/ir/pdf/report_160531.pdf

日東電工(リンクの32ページに該当事例あり)

https://www.nitto.com/jp/ja/others/ir/shareholdersmeeting/file/151_notice.pdf 

これは、この後の記載項目である主要な事業内容、主要な営業所・工場をまとめて説明しているケースもあります。

〔参考資料〕有価証券報告書における関係会社の状況の記載事項

最近連結会計年度に係る提出会社の関係会社(非連結子会社、持分方を適用していない関連会社を除く)について、親会社、子会社、関連会社及びその他の関係会社に分けて、その名称、住所、資本金又は出資金、主要な事業の内容、議決権に対する提出会社の所有割合及び提出会社と関係会社との関係内容(例えば、役員の兼任等、資金援助、営業上の取引、設備の賃貸借、業務提携等の関係内容をいう)を記載すること。ただし、重要性の乏しい関係会社については、その社数のみを記載することに留めることができる。

住所については、市町村(政令指定都市にあっては区)程度の記載で差し支えない。また、主要な事業の内容については、セグメント情報に記載された名称を記載することで差し支えない。

関係会社の議決権に対する提出会社の所有割合については、提出会社の他の子会社による間接議決権がある場合には、当該関係会社の議決権の総数に対する提出会社及び子会社の所有する当該関係会社の議決権の合計の割合を記載すると共に、間接所有の議決権の合計の割合を内書きとして記載する。

自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係にあることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意しているものが存在することにより、子会社又は関連会社として判定された会社等がある場合には、これらの者が所有する議決権の割合を併せて記載する。

1.連結子会社のほか、親会社、持分法適用の関連会社及びその他の関係会社の状況を記載する。したがって、非連結子会社及び持分法非適用関連会社については不要です。

2.記載内容は、会社名、住所、資本金又は出資金、主要な事業の内容、議決権の所有(被所有)割合及び関係会社との関係内容(例えば、役員の兼任等、資金援助、営業上の取引、設備の賃貸借、業務提携等の関係内容)さされる。主要な事業の内容は、セグメント情報に記載された名称を記載することができる。

3.重要性の乏しい関係会社については、その社数のみを記載することに止めることが出来るが、重要性の判断にあたっては当該関係会社の、企業グループ全体の中に占める位置、業績への貢献度、会社の規模、将来性を勘案して判断することが適当。

4.関係会社の議決権に対する所有割合は、提出会社の直接所有と間接所有の合計の割合を記載し、間接所有の割合は内書として記載する。

 

(7)主要な事業内容(会社法施行規則1項1号)

事業部門別に主な製品名または商品名を記載します。

これは、有価証券報告書の第1部企業情報の第1.企業の概況の3【事業の概況】の内容に通じるところがあると思います。

〔参考資料〕有価証券報告書における事業の概要の記載事項

届出書提出日の最近日現在における提出会社及び関係会社において営まれている主な事業の内容、当該事業を構成している提出会社又は当該関係会社の当該事業における位置づけ等について、セグメント情報との関連を含めて系統的に分かり易く説明すると共に、その状況を事業系統図等によって示すこと。なお、セグメント情報に記載された区分ごとに、当該事業に携わっている主要な関係会社の名称を併せて記載する。

提出会社と提出会社の関連当事者との間に継続的で緊密な事業上の関係がある場合には、当該事業の内容、当該関連当事者の当該事業における位置づけ等について系統的に分かり易く説明するとともに、その状況を事業系統図に含めて示す。

1.セグメント情報との関連を含め系統的に分かり易く説明すると共に、その状況を事業系統図等によって示す。

2.事業の内容の記載は、業種、業態、規模等により異なるが、投資情報としての有用度を高めるため、創意工夫が求められている。

3.グループを構成する子会社数は任意事項。子会社及び関連会社の数に代えて、連結子会社及び持分法適用会社の数を記載する方法も考えられる。

4.グループ経営会議等を組成している場合には、投資情報の有用性を考慮して、その組織図などを記載することが望ましい。

会社法では記載事項になっていませんが、IRの視点からいえば、投資家に企業の事業の紹介をする際に、事業内容だけでなく市場の説明を必ずといっていいほどしていると思います。また、有価証券届出書などでは、記載すべき項目になっていると思います。市場の規模、成長性、その会社の市場でのシェア、競合している企業、競合企業に対する自社の強みと弱み、このようなことは「事業の経過と成果」や「対処すべき課題」の中で触れることもできますが、それでは、補助的な説明にとどまり一部しか言及されないことになります。このことを単独でまとめての説明は株主や投資家にとっては、会社の評価をする際のベーシックな情報となるものです。なお、事例を探してみましたが、事業報告で単独にまとまった形で説明しているケースは見つかりませんでした。

 

(8)主要な営業所および工場(会社法施行規則1項2号)

企業集団を構成する各社の主要な営業所および工場の名称とその所在地を記載します。

<記載事例:拠点展開国・地域を世界地図に示し、地域ごとの売上を記載>

 

(9)従業員の状況(会社法施行規則1項2号)

連結か異例年度末における企業集団の従業員数および前連結会計年度末比増減を記載します。有価証券報告書にも同じように従業員の状況の記載が求められています。参考として以下に、その記載の説明をあげておきます。

〔参考資料〕有価証券報告書における従業員の状況の記載事項

最近日現在の連結会社における従業員数(就業人員数をいう)をセグメント情報に関連付けて記載すること。また提出会社の最近日現在の従業員について、その数、平均年齢、平均勤続年数及び平均年間給与(賞与を含む)を記載すると共に、従業員数をセグメント情報に関連付けて記載する。

連結会社又は提出会社において、臨時従業員が相当数以上ある場合には、最近日までの1年間におけるその平均雇用人員を外書きで示す。ただし、当該臨時従業員の総数が従業員数の100分の10未満である時は、記載を省略することができる。

最近までの1年間において、連結会社又は提出会社の従業員の人員に著しい増減があった場合にはその事情を、労働組合との間に特記すべき事項等があった場合にはその旨を簡潔に記載する。

1.従業員数(就業人員数)は、セグメント情報に関連付けて記載する。なお、本社の管理部門に所属する従業員等、特定のセグメントに区分して記載することができない場合には。「全社(共通)」等、適当な名称を付した区分を設けて記載することが適当。

2.従業員数は就業人員数を意味するため、他社からの出向社員については従業員数に含めて記載されるが、他社への出向社員は出向先の従業員数となるので、留意が必要。

3.従業員の定義、臨時従業員の範囲等に関する基準が明定されていないので、例えば、人材会社からの派遣社員、契約社員、準社員等はそれらの名称にかかわらず、各社の実態に応じて記載することとされている。そのような場合は、従業員数の算定方法等に関する内容を重要性を判断の上、脚注において記載することが適当。

4.従業員の人員に著しい増減があった場合には、増減の原因となった事由(事業の拡大・縮小、合併、事業の譲渡・譲受等)及び増加あるいは減少した人物等を記載することが適当。大量の人員の出向等があった場合も同様。

5.平均年間給与は賞与を含む。

6.臨時従業員が相当数以上いる場合には、年間平均雇用人員を外書で記載する。その場合には、主要な経営指標等の推移にも記載する必要がある。

さて、俗に経営は「ヒト」「モノ」「カネ」をいかに動かすのかに行き着くといいます。これらの三つの要素のうち、「ヒト」については、ここで説明することになるわけです。会社法で求められているのは従業員数や増減、その他に平均年齢、勤続年数などですが、そのような定量的情報に加えて定性的情報として、どのような人々が働いているのか、社内の雰囲気はどのようなものなのか、といったことは実は会社の好不調を見る際のキーポイントとなるものです。機関投資家やアナリストが企業を訪問するのは、そういう点を感じ取ることが大きな目的のひとつでもあるはずです。

欧米の企業のアニュアル・レポートには、サスティナビリティの報告として、従業員の定着率を向上させたりモラル・アップのためにいくら投資したとか、どのような施策を行ったとかいったことを詳しく説明するケースが見られます。それは、企業の事業を継続させていくために、従業員の忠誠心とか意欲的に事業に取り組むという要素が大きいということが、投資家にも認知されてきているということです。ということは、これを怠った企業にとっては従業員がリスク要因となってくるということでもあります。例えば、労働争議が発生するとか、工員にやる気がなくて手抜きの製品が生産されてしまうとかいったことです。

例えば、事業報告ではありませんが、富士ゼロックスのサスティナビリティレポート

http://www.fujixerox.co.jp/company/public/sr2016/highlight/

大日本印刷の「誠実な行動」:人類の尊厳と多様性の尊重についての開示

http://www.dnp.co.jp/csr/dignity/index.html

<記載事例:地域別従業員構成比をグラフにして記載>

<記載事例:従業員数の推移をグラフにして記載>

 

2.会社の株式に関する事項

会社法施行規則では、当年度の末日における発行済株式(自己株式を除く)の総数に対するその有する株式の割合が高いことにおいて上位となる10名の株主の氏名または名称、その株主有する株式の数(種類株式発行会社の場合には、株式の種類および種類ごとの数を含む)およびその株主の有する株式の割合の記載が定められています(会社法施行規則122条1号)

(1)発行済株式の総数(会社法施行規則122条2号)

発行済株式の総数とは、会社が発行することをあらかじめ定款に定めている株式数(授権株式数)のうち、会社が既に発行した株式数のことです。これが、株主や投資家にとって有益な情報となるのは、一株当たり利益や実体としての実質の株価を計算する時に使う程度でしょうか。会社法においては、株主総会の定足数や決議の際の議決権総数が分からないといけないから、発行済み株式総数を開示しておけば、議決権数は、それに準じた数となるので目安となるということでしょうか。(単元株制度を取っていない場合には、発行済み株式総数が議決権数となる)

それよりも、発行済み株式総数は企業の規模を企業自身がどのように資金調達をしてコントロールしてきたか結果と見ることができます。ちょっと分かり難いかもしれませんが、そのためには特定の時点の発行済み株式総数というストックの視点ではなくて、過去からどのように発行済み株式総数が推移してきたかというフローの視点で見ると、何時、どの程度増資をしたのか、そのほかにも株式分割、自己株消却その他の施策、広い意味での資本政策、それも資本の規模をどのようにしていくかという経営の基盤となることです。それが分かれば、企業が資金調達をする際の傾向が掴めてくることになると考えられます。それゆえ、会社設立から、増資などの経緯を経て、現時点の総数となった自社の成長の軌跡を明らかにすることできるわけです。会社法では、そういうことを求めているわけではありませんが、そのような考え方に立てば、発行済み株式総数の推移を見せてもらうことは、投資家や株主にとって有益な情報となってくると思います。

また、有価証券報告書で株式の内容や株主構成を記載することになっています。参考までに、その要領を以下に掲載します。

〔参考資料〕有価証券報告書における株式の状況の記載事項

株式の総数等

「発行可能株式総数」の欄には、当事業年度末現在の定款に定められた発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数を記載する。会社が書類株式発行会社である時は、株式の種類ごとの発行可能種類株式総数を記載し、「計」の欄には、発行可能株式総数を記載する。なお、当事業年度の末日後報告書の提出日までの間に定款に定められた発行可能株式数に増減があった場合には、その旨、その決議があった日、株式数が増減した日、増減株式数及び増減後の株式の総数を欄外に記載する。

「発行済株式」には、発行済株式の種類ごとに「種類」、「事業年度末現在株式数」、「提出日現在発行数」、「上場金融商品取引所名又は登録認可金曜商品取引業協会名」及び「内容」を記載する。

「内容」の欄には、単元株式数を含め、株式の内容を具体的に記載する。この場合において、会社が種類株式発行会社である時は、会社法108条1項各号に掲げる事項について定款、株主総会決議又は取締役会決議により定めた内容及び同法322条2項に規定する定款の定めの有無を記載する。

「発行数」の欄には、当事業年度末現在及び報告書提出日現在の発行数を記載する。なお、新株予約権又は新株予約権付社債を発行している場合の「提出日現在」の欄に記載すべき発行数については、当該新株予約権の行使によるものに限り、報告書の提出日の属する月の前月末のものについて記載することができる。たたじ、その旨を欄外に記載すること。

1.「内容」欄には、単元株式数を含め、株式の内容を具体的に記載することとされており、会社が会社法107条1項各号に掲げる事項を定めている場合にも、その具体的な内容を記載することとされている。また、会社が種類株式発行会社であるときは、会社法108条1項各号に掲げる事項について定款、株主総会決議又は取締役会決議により定めた内容及び同法322条2項に規定する定款の定めの有無を記載する。

2.会社が会社法108条1項各号に掲げる事柄について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行している場合であって、株式の種類ごとに異なる数の単元株式数を定めているとき又は議決権の有無若しくはその内容に差異があるときは、その旨及びその理由を欄外に記載する。この場合において、株式の保有又はその議決権行使について特に記載すべき事項がある場合には、その内容を記載する。

3.単元株制度を採用していない会社の場合は、「内容」欄にその旨を記載する。

発行済株式総数の推移、資本金の推移

最近5事業年度における(この間に発行済株式総数、資本金及び資本準備金の増減がない場合には、その直近の)発行済株式総数、資本金及び資本準備金の増減について記載する。また、当事業年度の末日後報告書の提出日までに発行済株式総数、資本金及び資本準備金の増減がある場合には、その旨、増減があった日及び増減の内訳を注記する。なお、新株予約権の行使による発行済株式総数、資本金及び資本準備金の増加については、当事業年度の末日後報告書の提出日の属する月の前月末までのものについて注記する。

新株の発行による発行済株式総数、資本金及び資本準備金の増加については、新株の発行形態、発行価格及び資本組入額を欄外に記載する。新株予約権の行使による発行済株式株式総数、資本金及び資本準備金の増加については、事業年度ごとにそれぞれの合計額を記載し、その旨を欄外に記載する。利益準備金、資本準備金若しくは再評価積立金その他法律で定める準備金を資本金に組み入れた場合又は剰余金処分による資本組入れを行った場合における資本金の増加については、その内容を欄外に記載する。

1.期末日後有価証券報告書提出日までに「発行済株式総数、資本金等」に増減があった場合には、その増減の起因となった事実(例えば、一般募集、第三者割当増資、株式分割等)を注記する。

2.当事業年度において、有価証券届出書、発行登録追補書類又は臨時報告書に記載すべき手取金の総額並びにその使徒の区分ごとの内容、金額及び支出予定時期に重要な変更が生じた場合には、その内容を欄外に記載する。

(2)大株主(同1号)

上位10位までの大株主を記載します。大株主の記載の意味は、会社に対する支配関係を明らかにするという点です。例えば、オーナー経営者やそのファミリーが実権を握っている同族会社かといったことは、大株主の顔ぶれを見渡せば一目瞭然です。また、最近は減少傾向にありますが、歴史の古い企業であれば株式の持ち合いをしているケースがあって、その相手は事業においても関係が近い場合が多い、例えば主要取引先であったり、といったことが推測できます。有価証券報告書でも大株主が記載事項となっていますので、参考に、その要領を以下にあげておきます。

〔参考資料〕有価証券報告書における大株主の状況の記載事項

当事業年度末現在の「大株主の状況」について記載する。

「所有株式数」の欄に、他人名義で所有している株式数を含めた実質所有なより記載する。

大株主は所有株式数の多い順に10名程度について記載し藻会社法施行規則67条の規定により議決権を有しないこととなる株主については、その旨を併せて記載する。ただし、会社が二つ以上の書類の株式を発行している場合であって、株式の種類ごとに異なる数の単元株式数を定めているとき又は議決権の有無に差異があるときは、所有株式に係る議決権の個数の多い順に10名程度についても併せて記載する。

当事業年度において主要株主の異動があった場合には、その旨を注記する。

会社が大量保有報告書等の写しの送付を受けた場合であって、当該大量保有報告書等に記載された当該書類の提出者の株券等の保有状況が株主名簿の記載内容と相違するときには、実質所有状況確認して記載する。なお、記載内容が大幅に相違している場合であって実質所有状況の確認ができないときには、その旨及び大量保有報告書等の記載内容を注記する。

1.大株主については、いわゆる実質主義によって10名程度を記載することとなっていますが、例えば持株割合が同一の株主が第10位に複数いるような場合には、10名に限定されずに11名、12名を記載することが必要とされています。なお、大株主が個人である場合の個人株主の住所の記載に当たっては、市区町村までの記載で差し支えない。

2.外国人株主を記載する場合には、我が国の常任代理人についても記載を行なうことが一般的に慣例化されています。また、外国人株主の氏名又は名称及び住所は、カタカナやローマ字等を用いて、正確にわかりやすく表現することが望ましいとされています。

3.当事業年度の末日後、有価証券報告書提出日までに商号変更などで株主の氏名又は名称が変更された場合、又は住所に変更があった場合には、注記などによりその旨を記載することが望ましい。

4.当事業年度に主要株主の異動(主要株主であったものが主要株主でなくなること又は主要株主でなかった者が主要株主になること)があった場合には、その旨を注記する必要がある。なお、主要株主の異動が提出会社若しくは連結子会社の業務執行を決定する機関により決定された場合又は異動があった場合(当該異動が当該提出会社又は連結子会社の業務執行を決定する機関により決定されたことについて臨時報告書を既に提出した場合を除く。)には、臨時報告書を提出する必要がある。(開示府令19条2項4号)

5.会社が大量保有報告書等の写しの送付を受けた場合で、その保有状況が株主名簿の記載内容と相違するときには、実質所有状況を確認して記載することとされている。また、記載内容が大幅に相違しており、その確認ができない場合には、その旨及び大量保有報告書等の記載内容を注記することとされている。

6.信託銀行については、年金信託設定分、投資信託設定分等がそれぞれ大株主に該当する場合であっても、「大株主の状況」欄では、これら信託業務分を含んだ合計値で記載し、当該信託業務分は脚注で記載することが適当と考えられる。また退職給付信託分の株式についても同様な扱いとなる。この場合、当該信託業務分の内訳を記載することは差し支えない。なお、当事業年度末日現在における信託業務分の株式数を確認できない場合は、その旨記載することが適当と考えられる。

7.提出会社が「大株主」に該当する場合も開示が必要とされており、その場合、「大株主の状況」欄に記載する(「氏名又は名称」欄に自社名を記載する)か、自社が保有する自己株式数を注記することが適当とされている。

では、そういう大株主の記載について、株主や投資家は、それだけで十分満足と言えるでしょうか。とりあえず、大株主が上位10位までということについて、それが妥当であるかということは、ここでは問いません。そこで、それ以外で記載の方法とか、付随して記載してほしいことといった議論になりますが。例えば、大株主の現在の状況だけでなく、過去からの大株主の変化の推移を知りたいと思う人は少なくないと思います。

また、大株主の記載により法人株主が明らかになれば、支配関係かあるいは持ち合い関係が推測できますが、持ち合い関係であれば自社が所有している株式を開示することもあると思います。これは、コーポレートガバナンス・コードでは政策保有株式とその方針を開示することを求めています。実際に、事業報告に記載している企業も少数ながらあります。また、有価証券報告書でも投資目的以外の保有株式を開示するように求められています。

(3)その他株式に関する重要な事項(同2号)

その他の事項として、自己株式の取得や消却を行った場合には、その説明。最近では従業員に対してESOPという株式報酬の制度を自己株式を振り返ることで行なっている会社がありますが、その説明を行なうなどの事例が見られます

3.会社の新株予約権等に関する事項

新株予約権の状況は会社法に則って記載すればいいと思います。

4.会社役員に関する事項

事業報告に記載すべき会社役員は、原則として、当期(事業報告で報告している事業年度)の開始後、事業報告作成時点までに在任したことのある役員を指します。会社法において、その記載する項目が細かく規定されています。

役員の情報とは、つまり経営陣に関する情報ということで、そうであれば、役員という個人に限らず、取締役会という経営陣、経営体制、あるいは経営システムとして、企業の経営が、どのような人たちによって、どのように担われているのかということが理解されるというもの、そういうことが、株主や投資家にとってほしい情報ではないかと思います。その指針はコーポレートガバナンス・コードで提示されているので、その項目を押えておけばいいのではないかと思います。

(1)取締役および監査役の氏名等(会社法施行規則121条)

ここで記載する取締役・監査役は、直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していた者に限られます(会社法施行規則121条1号カッコ書き)が、年度の末日に在任していない者も含まれます。

氏名、地位及び担当、重要な兼職の状況を、表形式で記載する(年度の末日に在任していない取締役・監査役についても表に含めて記載する)のが一般的です。

なお、社外役員について、他の法人等の重要な兼職がある場合は、「(3)社外役員に関する事項」に会社と他の法人等との関係を記載します(会社法施行規則124条1号、2号)。

社外取締役や社外監査役である旨、監査役が財務及び会計に関する相当程度の知見を有している場合はその事実を注記します。

表に記載されている取締役・監査役が事業報告作成時点までに辞任している場合は、その旨を注記します(辞任以外の理由で退任している場合は、「●●により退任いたしました」と記載します。)このほか、その事業年度に辞任した役員については、表に記載していない者についても(直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していた者に限られていないため)、氏名等を注記します。

(2)当事業年度に係る取締役および監査役の報酬等の額(会社法施行規則121条3号、124条6号)

@当事業年度に係る報酬等の額

当事業年度の取締役及び監査役の報酬等の総額及び員数を記載します。社外取締役および社外監査役に支払った報酬等は、分別できるように記載します。

記載されるべき取締役・監査役の員数は、当事業年度中に退任した者も含め、報酬等を支給された取締役・監査役の員数を記載します。ただし、無報酬の取締役・監査役は含めません。

使用人兼務取締役の使用人給与(賞与を含む)については注記するのが一般的です。

なお、ストックオプションについても報酬等に含まれるため、報酬等の額として、新株予約権の価値として算定した金額(費用として計上した額)を記載する。

各会社役員の報酬等の具体的金額に係る決定や、報酬等の額の算定方法に係る決定に関する方針を定めていた時は、当該方針の決定の方法及びその方法の概要を記載します(会社法施行規則121条5号)。

また、役員退職慰労金を毎年引当金計上している場合は、当事業年度に計上した額を本項に含めるものとします。この場合、その旨を注記することが望ましいとされています。

役員賞与や業績連動報酬については、各社の考え方や会計処理方法によっては、当事業年度に係る報酬等の額に含めるのか、次のAとして記載するのか、検討が必要になります。

ここで「報酬等」というのは、会社法361条で、報酬、賞与その他その職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益とされています。この場合、役員が会社から受け取るのは金銭には限りません、例えば株式のようなものもあります。だから報酬“等” と言います。そして、報酬は原則として株主総会で決められることになっていて、次のような種類に分けられます。

一報酬等のうち額が確定しているものについては、その額

二報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法

三報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

さて、このような「報酬等」の定義から、記載すべき事項である「当事業年度に係る報酬等」の内容について考えてみましょう。役員の報酬等は職務執行の対価であり、記載すべきは当事業年度に係るというわけですから、これをまとめると“役員の当事業年度の職務執行の対価”が、事業報告で記載すべき報酬等の額ということになります。ということは、単純に当事業年度に受け取った額ではないということなのです。例えば、業績連動報酬として事業年度の確定した業績を基に報酬額を計算する場合には、年度中に支給することはできません。その場合には、計算額を引き当てることになります。この場合には、事業年度中には受け取っていませんが、事業年度の職務執行の対価には含まれます。このように、考えていくと、事業報告の記載事項である報酬等の額については、いつの業務執行に関して支払われたのかを確認する必要があります。

また、ここで記載する役員の人数については、同じ事業報告の中の役員の状況において一覧で示される役員の人数と必ずしも一致しないので、注意する必要があります。例えば、事業年度中の6月に定時株主総会があって、取締役が1名退任し、後継として新たな取締役が選任された場合、ここで記載される人数は退任1名と新任1名の2名がカウントされることになります。つまり、この事業年度という期間に報酬を受けた役員の数で、途中での就任、退任を含めるという数え方です。また、役員に就任していたとしても無報酬であれば、個々での人数にカウントされません。

A当事業年度において取締役および監査役が受けた(または当事業年度において受ける見込み額が明らかになった)報酬等の額(上記@の報酬等の額を除く)(会社法施行規則121条4号)

@の他、当事業年度において受けた取締役・監査役の報酬等がある場合は、その総額及び報酬額を受けた取締役・監査役の員数を記載します。当事業年度において受ける見込みの額が明らかになった場合は、その見込み額の総額及び報酬等を受ける取締役監査役の員数についても記載します。

当事業年度に係る報酬として@で記載された報酬等及び前事業年度に係る事業報告の内容とした報酬等は除外されます(会社法施行規則121条4号カッコ書)。

記載対象となる例としては、当該事業年度中の株主総会で決議された役員退職慰労金ですでに支払い済みのもの(当事業年度中に支払われたのであれば、当事業年度開始前に退任した者への退職慰労金も含まれます。)、当外事業報告を報告すべき定時株主総会において決議する退職慰労金で、当該事業年度末日までに内規等により見込み額が明らかになっているもの等が想定されます。

この代表的な例は、退職慰労金を廃止した場合に、その時点の役員に対しては退職慰労金の引当金が規程に従って積み立ててあったわけで、その積み立てた分についての打ち切り支給を株主総会で承認を受けている場合、その時点の引当金を確定した支給見込み額として、一度事業報告に記載してしまうと、次回から記載する必要がなくなります。さらに、実際にその対象となった役員が退任した時に、打ち切り支給承認を受けた退職慰労金を支給されることになりますが、支給を受けたことは、既に引き当てて事業報告で報告されているので、支給時の報告は必要ないということになるわけです。

B社外取締役または社外監査役が当社の親会社または親会社(親会社がない会社にあっては当社)の子会社から当事業年度において受けた役員としての報酬等の総額(会社法施行規則121条8号)

社外役員については、親会社等から役員としての報酬等を受けているときはその総額(社外役員であった期間に受けたものに限る。)を記載することとされています。本来社外役員に関する事項であり、また当社からの報酬ではないが、会社役員への報酬等ということで、本項で記載するものとします。

Aとして当事業年度に退職慰労金が支払われた場合、Bとして親会社から役員の報酬等を受けている場合は、@の「当事業年度に係る報酬の額」の記載と併せ、報酬等を一括して記載するタイトルとして「(2)取締役および監査役の報酬等の額」に修正し、以下のように記載することも考えられます。

この三項目に分けた記載例としての、次のようなモデルのバリエーションもあります。

(2)取締役および監査役の報酬等の額

@当事業年度に係る取締役および監査役の報酬等の額

取締役●名  ●●千円

(うち社外  ●名 ●千円)

監査役●名  ●●千円

(うち社外  ●名 ●千円)

注:上記報酬等の額には、平成●年●月●日開催の取締役会決議により、ストックオプションとして取締役●名に付与した新株予約権●●千円(報酬等としての額)を含んでおります。

A当事業年度において取締役および監査役が受けた退職慰労金の額(上記@の報酬等の額を除く)

取締役●名  ●●千円

(うち社外  ●名 ●千円)

監査役●名  ●●千円

(うち社外  ●名 ●千円)

B社外役員が当社の親会社から当事業年度において役員として受けた報酬等の総額

●●千円

(3)社外取締役および社外監査役に関する事項(会社法施行規則124条)

社外取締役または社外監査役ごとに以下の事項を記載します(なお、E、F、G(会社法施行規則124条6〜8号)の記載は、上記(2)において記載しています)。ただし、以下の@からDの項目については、直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していた者に限られています(会社法施行規則124条1号カッコ書)。このために、Hの事項がある場合は、(3)に記載されている社外役員以外の者が記載対象になる場合もあることから、(3)とは別に(4)として記載します。

@他の法人等の業務執行取締役、執行役、業務を担当する社員もしくは持分会社の職務執行者その他これに類する者または使用人であることが重要な兼職に該当する場合は、会社と当該他の法人等との関係(会社法施行規則124条1号)

この「関係」については重要性の基準がないので、重要な兼職の該当性の判断に係らない関係(電力やガスの供給契約のような定型取引等)については対象とならないとされています。記載すべき関係がない場合は、本項目を記載したうえで「開示すべき関係はありません。」と記載するのが一般的です。

A他の法人等の社外役員その他これに類する者を兼任していることが重要な兼職に該当する場合は、会社と他の法人等との関係(会社法施行規則124条2号)

B社外取締役または社外監査役が会社または会社の特定関係事業者の業務執行取締役、執行役、業務を執行する社員もしくは持分会社の職務執行者または使用人の配偶者、3親等以内の親族その他これに準ずるものであることを当社が知っている時はその事実(重要でないものを除く。)(会社法施行規則124条3号)

※ここでいう特定関係事業者とは、以下に当てはまる者を言います(会社法施行規則2条3項19号)。

イ 当該株式会社の親会社ならびに当該親会社(当該株式会社に親会社がない場合にあっては、当該株式会社)の子会社および関連会社(当該親会社が会社でない場合におけるその子会社および関連会社に相当するものを含む。)

ロ 当該株式会社の主要な取引先である者(法人以外の団体も含む)

※ここでいう「知っている時」とは、当該事項が開示事項とされていることを前提として行なわれる調査の結果として知っている場合を指し、十分な調査を行なうことなく「知らない」とすることを許容するものではないとされています。

C各社外取締役または社外監査役の主な活動状況(取締役会等への出席状況(出席率等により具体的に記載することが望ましい)、取締役会等における発現状況(具体的に記載することが望ましい。)当該社外役員の意見により会社の事業の方針または事業その他にかかる決定が変更されたときはその内容(重要でないものを除く)、当事業年度中に法令または定款違反の事実その他不当な業務の執行(社外監査役である場合は、不正な業務の執行)が行なわれた事実(重要でないものを除く。)があるときは各社外役員が当該事実の発生の予防のために行なった行為および当該事実の発生後の対応として行なった行為の概要等)(会社法施行規則124条4号)

D責任限定契約の内容の概要(会社法施行規則124条6号)

当該契約によって当該社外取締役および社外監査役の職務の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合は、その措置の内容を記載します。

E当該事業年度に係る社外役員の報酬等(会社法施行規則124条6号)

F当事業年度において受け、または受ける見込みの額が明らかとなった社外役員の報酬等(会社法施行規則124条7号)

G社外取締役または社外監査役が会社の親会社または親会社の子会社(いわゆる兄弟会社)から当事業年度において役員として報酬等を受けているときは、当該報酬等の総額(社外役員であった期間に受けたものに限る。)を記載します(会社法施行規則124条8号)。親会社がない会社にあっては、子会社から当事業年度において役員としての報酬等を受けているときは、当該報酬等の総額(社外役員であった期間に受けたものに限る。)を記載します。

H社外役員についての事業報告記載事項の内容に対して当該社外役員の意見があるときは、その意見の内容を記載します。

5.会計監査人の状況(会社法施行規則126条)

会計監査人の氏名・名称、報酬等の額、非監査業務の対価を支払っているときはその非監査業務の内容、責任限定契約を締結しているときは当該契約の内容の概要、責任限定契約を締結しているときは当該契約の内容の概要、当社及び当社子会社が支払うべき金額その他の利益の合計額、当社の会計監査人以外の公認会計士または監査法人が当社の重要な子会社の計算関係書類の監査をしているときはその事実等を記載します。

上記の「支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額」とは、当事業年度に係る連結損益計算書に記載すべきものに限られます。当事業年度終了後に支払う予定のもの(見込み額)も、含まれます。

金融集品取引法に基づく監査業務の報酬と会社法に基づく監査業務の報酬を区別していない場合は合算で記載することでもよいのですが、その場合には、その旨を注記することになります。

また、会計監査人の解任または不再任の決定の方針を記載します。とくに、会社法の改正により、監査役会設置会社では監査役会に権限が移りましたので、記載には注意が必要です。

6.取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制その他業務の適正を確保するための体制(会社法施行規則118条2号)

いわゆる内部統制システムに関する記載です。

取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制、取締役の職務の執行に係る情報の保存および管理に関する体制、損失の危険の管理に関する規程その他の体制、取締役の職務の執行が効率的に行なわれることを確保するための体制、使用人の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制、会社ならびにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制、監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項、当該使用人の取締役からの独立性に関する事項、監査役及び使用人が監査役会または監査役に報告するための体制その他の監査役への報告に関する体制、その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制を記載します。

7.会社の支配に関する基本方針(会社法施行規則118条3号)

当社における、財務および事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針として、基本方針の内容の概要、当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み、基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの各具体的な内容の概要、これらの取組みが、基本方針に沿っており、株主の共同の利益を損なうものでなく、会社役員の地位の維持を目的とするものではないことに関する取締役会の判断及び、その理由を記載します。

典型的な具体例として、いわゆる敵対的買収に対する防衛策を構築する場合の基本方針などが該当します。

8.剰余金の配当等の決定に関する方針(会社法施行規則126条10号)

定款に基づく取締役会による剰余金の配当等を定めた会社は、「当該定款の定めにより取締役会に与えられた権限の行使に関する方針」を記載します。

つまり、定款の定めにより、剰余金の配当について取締役会の決議により決定できるとした会社は、剰余金の配当を株主総会の議案にかける必要がなくなります。株主としては、自ら議場で剰余金の配当の決定に参加できなくなる(ただし、株主提案により株主総会に剰余金の配当を提案することはできますし、取締役会の決定した配当については株主総会において報告されます)こととなりますので、取締役会がどのような方針で剰余金の配当を決めているのか、また、今回の配当はどのような考え方のもとで決められたのかを知っておきたいはずです。それに応えたのが、この項目ということになります。従って、剰余金の配当を株主総会の議案として決定している会社は、この項目を省略してもかまいませんし、任意に会社の基本方針として記載することもできます。

なお、これを独立した項目にせずに、「1.企業集団の現況に関する事項(4)対処すべき課題」の箇所に記載することも考えられます。

この項目に、どのような内容を記載するかについては、有価証券報告書では第4【提出会社の状況】の3【配当政策】という同じような記載項目があり、これについて内閣府令のガイドラインでは、次のように記載を求めているので、参考になると思います。また、有価証券報告書と事業報告の記載内容を揃えておくことも、ひとつの方法であると思います。


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