補充原則2−3.@
 

 

 【補充原則2−3.@】

取締役会は、サスティナビリティー(持続可能性)を巡る課題への対応は重要なリスク管理の一部であると認識し、適確に対処するとともに、近時、こうした課題に対する要請・関心が大きく高まりつつあることも勘案し、これらの課題に積極的・能動的に取り組むように検討すべきである。

 

〔形式的説明〕

原則2−3.のサスティナビリティー課題に関して、とくにリスク管理として対処することに関して、補充原則として取り上げています。ここでは、原則2−3.においてサスティナビリティー課題に対して適切な対応をするだけでなく、取締役会で適確な対処を求めています。これは、重要なリスク管理は取締役会の権限と責任で行なわれていることに含めて考えるということになると考えられます。

いわゆる、会社法や金商法の内部統制において、リスク管理は取締役会で行なうことになっていますから、その考えを敷衍すれば、これについては、各企業はコンプライと言えることになるはずです。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

@「サスティナビリティー」開示の意義

ESG(環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G))情報は、企業の信頼性にかかわる非財務情報として、とくに中長期的な視点の投資家には重視されるようになってきています。業種や企業によっては、この情報が企業価値を説明する上で不可欠になっている場合もあります。例えば、グローバル化を進めている鉱山会社にとっては、従業員がストを起こしてオペレーションがストップすると事業存続にもかかわるのです。だから、この会社をフォローしているアナリストは鉱山企業との対話において真っ先にS要因について聞くのです。これは鉱山会社への中長期投資において重要だからです。製薬会社であれば、規制や薬品事故、あるいは製造に係る環境対応の問題は、それぞれ大きなリスクです。

一方、企業の側でも、このようなリスクに対しては、それぞれ個別に対応していたものを事業継続に関わるものとして経営戦略上、統一的に対応していくことで大きなメリットが生まれるはずです。そして、これらについて主体的な開示を行なうことは非財務情報の開示として高い評価を受けることになると思われます。

これに対して、株主や投資家の側では、もはやCSRという社会・環境のための企業活動ではなく、企業活動を持続させるため、社会・環境問題への対応は避けられないと捉えています。企業のサスティナビリティーを巡る取り組みとは、社会貢献的な取り組みではなく、自社の存続のために直接影響し得る社会・環境問題に対する取り組みであり、まずは、課題が何であるかを検討することが求められていると言えます。

Aサスティナビリティーを巡る課題の認識

サスティナビリティーを巡る課題は多様です。まずは、どの課題が自社にとって重要な課題であるかを把握することから始めなくてはなりません。例えば、国際的なサスティナビリティ・レポートのガイドラインであるGlobal Reporting Initiative(GRI)4.0に準拠したCSR報告書作成のための、自社にとって何が重要な課題七日を把握する「マテイアリティ分析」を実施するやり方もあります。この方法によって課題認識を行う場合は、以下のように専門家やステークホルダーとの対話を含めて課題を認識していくことになります。

(1)課題把握、抽出

SRIインデックス調査機関などからアンケートやレビューの対応、業界や他社の取り組み状況の情報収集等により、課題を把握・抽出。

(2)各課題の重要性、取り組み状況の把握

社員の認識・取り組み状況の社内調査や、NPO/NGOや専門家等とのステークホルダー対話に加えて、SRIインデックス調査機関やESG投資を行う機関投資家のアナリスト等との対話を踏まえ、それぞれの課題、重要度等を整理。

(3)各課題のマテリアルマップ分析

(2)で整理した各課題をマテリアルマップ上に重要度をもとにプロットする。

(4)レビューによる重要な課題の特定

取締役会等でマテリアリティな課題、経営に影響する重要性の高いサスティナビリティーの課題として特定。具体的なアクションプランを策定。

以上のように課題認識をすることのできるのは、上場企業の中でも先進的な取り組みをして、投資家にも理解されている企業で、それ以外の企業では難しいと思います。ただ、そういうプロセスを踏んでいるということを認識して、自社で考えていくことが重要ではないかと思います。実際のところ、(1)の課題把握のところで、そもそも何が課題なのかピックアップするところで、どうすればいいか途方にくれてしまうのがほとんどの場合ではないかと思います。

BESG関連リスクに関する開示の現状

日本の企業は、ESG関連リスクに対する取組状況に関する開示を行なった場合、機関投資家をはじめとしたステークホルダーから、かえって問題が生じているまたは取組が不十分であるとの誤解や批判を受けることをおそれて、情報開示を躊躇してしまいがちです。

しかし、この後で紹介しますが欧米企業は、規制の導入やESG投資の拡大を踏まえ、非財務情報の開示を行なわざるを得ない状況になっています。これらの企業はブランドイメージ向上のために戦略的に非財務情報の開示を利用していくようになってきています。その一方で、日本企業は情報開示を怠れば取組を実施していないまたは情報を隠蔽していると誤解される危険性が高くなってきており、投資先としての魅力を削がれることにもなりかねません。

ここで、欧米の企業が情報開示をする際の規制が参考になると思います。

(1)英国現代奴隷法

英国現代奴隷法は、次の6点の開示を企業に求めています。

@)企業の組織、事業及びサプライチェーン

A)現代奴隷に関する方針

B)自社の事業およびサプライチェーンにおける現代奴隷に関するデューデリジェンスのプロセス

C)現代奴隷が発生しているリスクのある自社の事業及びサプライチェーンの部分及び企業がリスクを評価・対処するために実施した手続

D)適切と考える業績指標で測定した、自社の事業またはサプライチェーンで発生していないことを確実にする手続の実効性

E)従業員に対する現代奴隷に関する研修状況

(2)EU非財務情報開示指令

EU非財務情報開示指令は、環境、労働、人権尊重、贈賄禁止というESG分野について、以下の点を開示することを求めています。

@)ビジネスモデル

A)方針とデューデリジェンス

B)結果

C)重要なリスクとその管理

D)重要事項評価

 

〔開示事例〕

大東建託

「低炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」を柱に、持続可能な社会の形成を目指し、事業特性を活かした総合的な取り組みを推進しています。

低炭素社会に向けては、事業所における節電活動の推進、廃棄物最終処分量の削減や賃貸住宅を活用した太陽光発電にも力を入れています。また、2014 年度から、オーナー様、入居者様及び取引先様等にも呼びかけ、ライトダウン運動を年2回実施しています。

循環型社会に向けては、高耐久と環境性能を両立させた新技術「エコプレカット工法」やリサイクル材の活用など、木材の効率的使用を進めています。

自然共生社会に向けては、輸入木材のほか、国産杉材を使用する取り組みを継続するとともに、森林管理・保護を推進する事業者から積極的に木材を調達しています。

(当社の環境への取り組み:http://www.kentaku.co.jp/corporate/csr/environment/index.html

 


関連するコード        *       

基本原則2.

原則2−1.

原則2−3.

基本原則4.

基本原則5.

 
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