補充原則2−3.@ |
【補充原則2−3@】 取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害への危機管理など、サスティナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきてある。 【補充原則2−3@】 取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害への危機管理など、サスティナビリティ 〔改訂の背景〕 改訂前のコードは、原則2−3で「上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサスティナビリティー(持続可能性)を巡る課題について、適切な対応を行うべき」とするとともに、補充原則2−3@で、サスティナビリティをめぐる課題の対応のあり方について述べられていました。 サスティナビリティについては、持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サスティナビリティが重要な経営課題であるという認識が高まってきました。加えて、中長期的な企業価値の向上に向けては、リスクとしてのみならず収益機会としてもサスティナビリティをめぐる課題に積極的・能動的に対応することが重要であるという認識が、企業と投資家の双方で高まるなど、企業価値の向上という観点からもフォローアップ会議で議論されました。 さらに、新型コロナウィルスの感染拡大を経て、これまで気候変動をはじめとする「E(環境)」を中心として注目されてきたサスティナビリティについて従業員の健康・安全や人的資本への投資といった観点から「S(社会)」の要素を介しても注目が高まってきています。 こうした状況を踏まえて、フォローアップ会議では、サスティナビリティについて、将来的な企業価値につながる戦略づくりという観点からも必要性の認識ができあがりつつあり、そのような認識のもとで適切に対応していくためには組織の柔軟性や対応力、その前提としてのガバナンスの体制が重要という指摘や、取締役会はサスティナビリティ経営を監督する責務を負う等の議論が行われました。 〔変更された点〕 @地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害への危機管理など、 原則2−3の「サスティナビリティを巡る課題への対応」として、ここで「地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害への危機管理」が列挙されています。これはあくまでも例示であり、ここで列挙されたものに限られるわけではありません。サスティナビリティの要素として取り組むべき課題は、全企業に共通するものもあれば、各企業の事情に応じて異なるものもあります。各社が主体的に自社の置かれた状況を的確に把握し、取り組むべきサスティナビリティ要素を個別に判断していくことは、サスティナビリティへの形式的ではない、実質的な対応を行う上でも重要なことです。 この点に関連して、改訂版対話ガイドラインの1−3前段でも、「事業を取り巻く環境の変化が、経営戦略・経営計画において適切に反映されているか」とするとともに、事業環境の変化の例として、「ESGやSDGsに対する社会的要請・関心の高まりやデジタルトランスフォーメーションの進展、サイバーセキュリティ対応の必要性、サプライチェーン全体での公正・適正な取引や国際的な経済安全保障を巡る環境変化への必要性等」を記載しています。こちらについても、それぞれの会社で自らの事業を取り巻く環境の変化を個別に見極めていく必要があります。例えば、グローバルなサプライチェーンにおける人権問題等、昨今まさに課題となっているものもあるところであり、各社で適切・迅速に対処がされることが、リスクの減少・収益機会の獲得につながるものとされています。 Aリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題 この改訂版補助原則2−3@で求められている取組みが、環境・社会をめぐる課題が企業の財務状況や業績等に与える影響に焦点を当てた、いわば投資家目線のシングル・マテリアリティを想定しているのか、あるいはシングル・マテリアリティに加えて企業活動が環境・社会に与える影響にも焦点をあてた、いわばマルチ・ステークホルダー目線のダブル・マテリアリティを想定しているのかは必ずしも明らかではありません。 コーポレートガバナンス・コード第2章が株主以外のステークホルダーとの適切な協働について規律しているのであることを考えると、ダブル・マテリアリティを主眼にサスティナビリティをめぐる課題に取り組むことは否定できるものではないと考えられます。しかし、第2章を含めたコーポレートガバナンス・コードの最終的な目標は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上であることや、サスティナビリティをめぐる課題への取組みについて情報開示を通じた投資家との対話によって実効化していくことが期待されていることを考えると、基本的には、シングル・マテリアリティを想定していると考えてもよいと言えるでしょう。 特に、わが国の上場企業のサスティナビリティをめぐる課題への取組みについては、自社の環境・社会貢献的なCSRの活動領域を示すにとどまり、投資家が求めるビジネスモデルの持続性に関する重要なリスクと機会の課題が明確化されていないという指摘が機関投資家から上がっているため、企業は審議の視点にまず重点を置いて取組みを実践することが期待されていると思います。 〔サスティナビリティ対応に関するガバナンス体制の整備〕 現在、サスティナビリティ課題に積極的に対処しようとする日本企業は少しずつ増えてきているようです。そのような企業では、ESGに対する考え方と事業戦略を統合する中長期の経営戦略の中でサスティナビリティに関する目標をせっていする、社内の取組みを強化するための専門部署や委員会を設置する、基本的なフレームワークや具体的な活動内容を開示するなど、様々な対応がとられています。一方で、そのような経営を推進する失行側を監督する立場にある取締役会の取組みは限定的です。 まずは、サスティナビリティに関する企業の対応として、取締役会と経営陣の取組みを考えてみたいと思います。参考として、海外企業の取締役会はどのような取組みをしているかを見ていきたいと思います。一つの典型例として国連環境開発計画・金融イニシアチブ(UNEPF1)で「統合ガバナンス─サスティナビリティのためのガバナンスに関する新しいモデル」と題された報告書において、ガバナンスにおける3つのフェーズを紹介しています。その中で、取締役会がサスティナビリティ経営に対する監督機能を発揮し始めるフェーズ2では、次の3つの取組みが記載されています。 (1)取締役会の議題にサスティナビリティが取り上げられる。 (2)サスティナビリティに関連する委員会を取締役会に設置するか、その責務をCSO(チーフ・サスティナビリティ・オフィサー)に割り振る。 (3)サスティナビリティに関する指標・KPIを設定する。 さらに進化したフェーズ3では、次の状況になるとされています。 (1)取締役会の議題にサスティナビリティな戦略を監督する。 (2)サスティナビリティのリスクと機会が企業の戦略課題の一部分となりシームレスな状況となる。 (3)サスティナビリティ委員会が必要でなくなる。 (4)統合報告が財務及び非財務の目標を測る手段として使われる。 このようなモデルを踏まえて、実際の海外の主要企業ではどのような取組みが行われているか、大雑把に概観してみると、主要なものとして次の5つの対応が代表的なものとして挙げることができると思います。 (1)取締役会におけるサスティナビリティに関する議論 (2)サスティナビリティの知見を持つ社外取締役の就任 (3)報酬におけるサスティナビリティ関連の指標の設定 (4)サスティナビリティに関する委員会の設置 (5)取締役会と投資家のサスティナビリティをめぐる対話 ここであげた例は、日本企業の取締役会が、コーポレートガバナンス・コードに基づきサスティナビリティに関する方針を定めていく上で、参考になると思われます。 以下では、上記のうち、サスティナビリティ委員会と報酬のための評価指標について取り上げてみます。 @サスティナビリティ委員会の設置 改訂版対話ガイドライン1−3後段で「取締役会の下または経営陣の側に、サスティナビリティに関する委員会を設置するなど、サスティナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか」と記しているサスティナビリティ委員会は、指名・報酬・監査に次ぐ第4の委員会として、欧米企業で設置される例が増えています。企業として取り組むべきサスティナビリティ課題は幅広いテーマに及ぶケースが多く、それにすべてについて取締役会で直接議論・検討し、さらに適切な監督を行うことは必ずしも容易ではなくなってきています。そこで、サステナビリティ委員会を設置することによって、事業分野を横断するテーマを含め、必要に応じて多様なステークホルダーの視点も取り入れながら、集中的に議論・検討を行うことで、より実効性の高い取組みにつなげていくことができると考えられ、日本でも設置する企業で出てきています。 日本企業の場合、CSRの役割を担う委員会が設置されている例もありますが、CSRとサステナビリティとでは、その目的や位置づけが異なっており、自社の中長期的な企業価値の向上の観点から、単なる社会貢献ではなく本業として戦略的に取り組むことが重要になるサステナビリティ戦略を実効的に進めていくためには、社内の意識改革も必要となります。CSR委員会等を設置している企業でも、そのような委員会をサスティナブル戦略を担う委員会として改組することは、社内の意識改革を進める観点から、一つの効果的な対応策になり得るものと考えられます。 このようにサステナビリティ委員会を設置することで、社内外に自社の取組み姿勢の変化を見える化し、社内でサスティナブル戦略を進めていくための推進力を得ながら、機関投資家やESG評価機関等の社外からの評価を高めていくことも期待できると考えられます。 A役員報酬制度のサスティナビリティ対応 サスティナビリティ課題への対応に際しては、会社としての取組方針や具体的な計画及び目標を明確に定めること等を通じて、会社としてのコミットメントを示していくことがまず重要になりますが、その上で、そのようなコミットメントに対する信頼性をより高める観点からは、設定された目標を役員インセンティブ報酬の評価基準と連動させることが効果的です。 このような対応については、コーポレートガバナンスコードの文言のンかには明示的に示されてはいませんが、機関投資家にはこの点についての関心が高まっているようです。近年、欧米企業に限らず、日本企業でもサスティナビリティに関する目標を役員インセンティブ報酬の評価基準と連動させる例が増加傾向にあり、コード改訂を踏まえたガバナンス体制の整備の一環として、このような対応を検討してもよいのではないか。 〔サスティナビリティ委員会の設置・運営〕 サスティナビリティ委員会には様々なバリエーションがあり得るので、その設置に当たっては、委員会のガバナンス体制上の位置づけや、委員会が担う役割、メンバー構成、開催時期・頻度等。その具体的に設計や運営を検討する必要があります。また、関連する取組みを実効的に進めていくためには、多様なステークホルダーの視点を取り入れるための工夫についてもあわせて検討することが必要となると考えられます。そこで、項目ごとに考えてみていきます。 @委員会のガバナンス体制上の位置づけ サスティナビリティ委員会のガバナンス体制上の位置づけについては、執行側に位置付けるか、監督側に位置付けるか、という大きく2つの選択肢があります。 欧米企業では、サスティナビリティ委員会が、モニタリング・ボード型の取締役会を支える監督側の委員会として位置づけられている例が多いようです。監督型のサスティナビリティ委員会は、執行側おいて策定された重要なサスティナビリティ課題への対応に向けた取組方針やそれに基づく具体的な計画の進捗状況等を、モニタリングする役割を担うものです。他方、日本企業の場合、マネジメント・ボード型の取締役会または経営観ぎ等に紐付けられた執行側の委員会としてサスティナビリティ委員会が設置されている例が比較的多いようです。執行型のサスティナビリティ委員会では、サスティナビリティ戦略自体の具体的な内容について検討を深め、実質的に会社のサスティナビリティ戦略の議論を主導する役割を担うケースもあります。 実務上は、サスティナビリティ委員会に対して期待する役割を含め、その設置目的を踏まえてガバナンス体制上の位置付けを検討することになると考えられますが、執行と監督のどちらの機能も兼ね備えたハイブリッド型の委員会を設置することも考えられます。 A委員会の役割 サスティナビリティ委員会が担う役割はその設置目的等によって様々ですが、欧米企業によく見られる監督型の委員会では、執行側で策定された重要なサスティナビリティ課題への対応に向けた取組方針や具体的な計画、さらには各サスティナビリティ課題への取組みに関する目標(KPI)の達成状況等について、進捗度合い等をモニタリングする役割を担うケースが多く見られます。 他方、日本企業に多く見られる執行型のサスティナビリティ委員会では、例えば、自社が取り組むべき重要課題の特定に向けた検討プロセスをサスティナビリティ委員会が主導している例や、サスティナビリティ戦略に関する具体的な方向性等を検討し、その結果を取締役会や経営会議等へ報告することによって、実質的にサスティナビリティ戦略について議論を主導する役割を担っている例も見られます。 これらの他、執行と監督のどちらの機能も兼ね備えたハイブリッド型のサスティナビリティ委員会では、自社のサスティナビリティ活動に関する目標や戦略等について実質的な審議を行う役割を担いつつ、あわせて各重要課題への取組状況をモニタリングする役割も担っているケースも見られます。 B委員会のメンバー構成 サスティナビリティ委員会のメンバー構成については、欧米企業でや役設置されている監督型の委員会では、独立社外取締役を中心に構成されている例が多く見られます。また、たとえば、自社で特定した重要課題の中でも、特に議論を深める必要があると考えられる課題への取組みに対するモニタリングを強化する観点から、外部有識者をメンバーとする例なども見られます。 他方、日本企業では比較的多く設置されている執行型の委員会では、社長や担当取締役等を中心に、その他執行側の取締役や執行役員・関連部署の部長等で構成される例が多く見られます。 C委員会の開催時期・頻度 サスティナビリティ委員会の開催時期や頻度についても、重要な検討ポイントの一つとなります。特に開催時期については、具体的な事業戦略やサスティナビリティに関する対応方針等を策定するプロセス全体を意識して、サスティナビリティ委員会を開催する適切なタイミングを検討する必要があります。 たとえば、毎年ある一定の時期に会社またはグループ全体の事業戦略を策定する会議等が予定されている場合には、その前のタイミングでサスティナビリティ委員会を開催し、事業戦略についての議論が、委員会での議論を踏まえたかたちで行われるようにすること等が考えられます、具体的には、たとえば、取締役会で翌年のサスティナビリティに関する対応方針等の決定等の決定前にサスティナビリティ委員会を開催し、このような決定が委員会における議論を反映した形で行われるようにしている例が見られます。
取締役会は、サスティナビリティー(持続可能性)を巡る課題への対応は重要なリスク管理の一部であると認識し、適確に対処するとともに、近時、こうした課題に対する要請・関心が大きく高まりつつあることも勘案し、これらの課題に積極的・能動的に取り組むように検討すべきである。
〔形式的説明〕 原則2−3.のサスティナビリティー課題に関して、とくにリスク管理として対処することに関して、補充原則として取り上げています。ここでは、原則2−3.においてサスティナビリティー課題に対して適切な対応をするだけでなく、取締役会で適確な対処を求めています。これは、重要なリスク管理は取締役会の権限と責任で行なわれていることに含めて考えるということになると考えられます。 いわゆる、会社法や金商法の内部統制において、リスク管理は取締役会で行なうことになっていますから、その考えを敷衍すれば、これについては、各企業はコンプライと言えることになるはずです。 〔実務上の対策と個人的見解〕 @「サスティナビリティー」開示の意義 ESG(環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G))情報は、企業の信頼性にかかわる非財務情報として、とくに中長期的な視点の投資家には重視されるようになってきています。業種や企業によっては、この情報が企業価値を説明する上で不可欠になっている場合もあります。例えば、グローバル化を進めている鉱山会社にとっては、従業員がストを起こしてオペレーションがストップすると事業存続にもかかわるのです。だから、この会社をフォローしているアナリストは鉱山企業との対話において真っ先にS要因について聞くのです。これは鉱山会社への中長期投資において重要だからです。製薬会社であれば、規制や薬品事故、あるいは製造に係る環境対応の問題は、それぞれ大きなリスクです。 一方、企業の側でも、このようなリスクに対しては、それぞれ個別に対応していたものを事業継続に関わるものとして経営戦略上、統一的に対応していくことで大きなメリットが生まれるはずです。そして、これらについて主体的な開示を行なうことは非財務情報の開示として高い評価を受けることになると思われます。 これに対して、株主や投資家の側では、もはやCSRという社会・環境のための企業活動ではなく、企業活動を持続させるため、社会・環境問題への対応は避けられないと捉えています。企業のサスティナビリティーを巡る取り組みとは、社会貢献的な取り組みではなく、自社の存続のために直接影響し得る社会・環境問題に対する取り組みであり、まずは、課題が何であるかを検討することが求められていると言えます。 Aサスティナビリティーを巡る課題の認識 サスティナビリティーを巡る課題は多様です。まずは、どの課題が自社にとって重要な課題であるかを把握することから始めなくてはなりません。例えば、国際的なサスティナビリティ・レポートのガイドラインであるGlobal Reporting
Initiative(GRI)4.0に準拠したCSR報告書作成のための、自社にとって何が重要な課題七日を把握する「マテイアリティ分析」を実施するやり方もあります。この方法によって課題認識を行う場合は、以下のように専門家やステークホルダーとの対話を含めて課題を認識していくことになります。 (1)課題把握、抽出 SRIインデックス調査機関などからアンケートやレビューの対応、業界や他社の取り組み状況の情報収集等により、課題を把握・抽出。 (2)各課題の重要性、取り組み状況の把握 社員の認識・取り組み状況の社内調査や、NPO/NGOや専門家等とのステークホルダー対話に加えて、SRIインデックス調査機関やESG投資を行う機関投資家のアナリスト等との対話を踏まえ、それぞれの課題、重要度等を整理。 (3)各課題のマテリアルマップ分析 (2)で整理した各課題をマテリアルマップ上に重要度をもとにプロットする。 (4)レビューによる重要な課題の特定 取締役会等でマテリアリティな課題、経営に影響する重要性の高いサスティナビリティーの課題として特定。具体的なアクションプランを策定。 以上のように課題認識をすることのできるのは、上場企業の中でも先進的な取り組みをして、投資家にも理解されている企業で、それ以外の企業では難しいと思います。ただ、そういうプロセスを踏んでいるということを認識して、自社で考えていくことが重要ではないかと思います。実際のところ、(1)の課題把握のところで、そもそも何が課題なのかピックアップするところで、どうすればいいか途方にくれてしまうのがほとんどの場合ではないかと思います。 BESG関連リスクに関する開示の現状 日本の企業は、ESG関連リスクに対する取組状況に関する開示を行なった場合、機関投資家をはじめとしたステークホルダーから、かえって問題が生じているまたは取組が不十分であるとの誤解や批判を受けることをおそれて、情報開示を躊躇してしまいがちです。 しかし、この後で紹介しますが欧米企業は、規制の導入やESG投資の拡大を踏まえ、非財務情報の開示を行なわざるを得ない状況になっています。これらの企業はブランドイメージ向上のために戦略的に非財務情報の開示を利用していくようになってきています。その一方で、日本企業は情報開示を怠れば取組を実施していないまたは情報を隠蔽していると誤解される危険性が高くなってきており、投資先としての魅力を削がれることにもなりかねません。 ここで、欧米の企業が情報開示をする際の規制が参考になると思います。 (1)英国現代奴隷法 英国現代奴隷法は、次の6点の開示を企業に求めています。 @)企業の組織、事業及びサプライチェーン A)現代奴隷に関する方針 B)自社の事業およびサプライチェーンにおける現代奴隷に関するデューデリジェンスのプロセス C)現代奴隷が発生しているリスクのある自社の事業及びサプライチェーンの部分及び企業がリスクを評価・対処するために実施した手続 D)適切と考える業績指標で測定した、自社の事業またはサプライチェーンで発生していないことを確実にする手続の実効性 E)従業員に対する現代奴隷に関する研修状況 (2)EU非財務情報開示指令 EU非財務情報開示指令は、環境、労働、人権尊重、贈賄禁止というESG分野について、以下の点を開示することを求めています。 @)ビジネスモデル A)方針とデューデリジェンス B)結果 C)重要なリスクとその管理 D)重要事項評価
〔開示事例〕 大東建託 「低炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」を柱に、持続可能な社会の形成を目指し、事業特性を活かした総合的な取り組みを推進しています。 低炭素社会に向けては、事業所における節電活動の推進、廃棄物最終処分量の削減や賃貸住宅を活用した太陽光発電にも力を入れています。また、2014
年度から、オーナー様、入居者様及び取引先様等にも呼びかけ、ライトダウン運動を年2回実施しています。 循環型社会に向けては、高耐久と環境性能を両立させた新技術「エコプレカット工法」やリサイクル材の活用など、木材の効率的使用を進めています。 自然共生社会に向けては、輸入木材のほか、国産杉材を使用する取り組みを継続するとともに、森林管理・保護を推進する事業者から積極的に木材を調達しています。 (当社の環境への取り組み:http://www.kentaku.co.jp/corporate/csr/environment/index.html)
基本原則2. 原則2−1. 基本原則4. 基本原則5. へ |