補充原則1−2.C
 

 

 【補充原則1−2.C】

上場会社は、自社の株主における機関投資家の比率等も踏まえ、議決権の電子行使を可能とするための環境づくり(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳を進めるべきである。

 

〔形式的説明〕

@この原則で求められていること

この補充原則は、原則1−2が株主総会を企業と株主との対話(エンゲージメント)の場として、どのように生かしていくかということについて、企業の側で考えていくための具体的なものと言えます。そのため、基本的な方向性は、実質株主と企業との対話を、他の株主とのバランス(公平さ)や影響を考慮に入れつつ、企業に適した道を模索していこうというものであると思います。

とくに、海外の機関投資家は株主総会に出席することは難しく、株主総会の場で議決権を行使することはできません。そこで、それに代わるものとして電子的な議決権行使(電子投票)を検討する。そして、電子的な議決権行使のためには招集通知の内容を十分に理解する必要がある。そのために日本語だけでなく英文で招集通知を作成することをセットで検討するということが課題となってきます。

この件に関しては、当然ですが、法令上の義務はありません。

一方で、招集通知を英文で作成することになれば、日本語と英語では語感や背景となる文化も違うので、日本語の文章をそのまま英語に翻訳しただけでは内容に食い違いが起こるリスクが生じるので、チェックなどの手間、外注するのであれば相応のコストが付加されることになります。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

@この補充原則で求められていること

この補充原則では、“議決権の電子行使を可能とするための環境づくり(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳を進めるべき”と書かれているので、このようなことを進めているか実施していればコンプラインで、実施していないのであればエクスプレイン、その理由を説明しなければならないことになります。

これは外国人株主が存在しない企業でも、将来外国人株主が現れ、増える可能性があるので、実施の検討をしなくてもいいというわけではありません。当然、エクスプレインをしなければなりません。その場合には、現時点では、必要性を認められないが、今後、外国人株主が、どの程度現れたら検討する、という説明になると思います。

A議決権電子行使プラットフォームの現状

2015年の株主総会の開催に関する全株懇調査の集計結果の右表を見て下さい。これは、過去3年間の電子投票を採用している会社の電子投票の行使率の分析です。表の一番上の列のパーセントは、議決権を有する総株主数を分母として議決権電子行使を行った株主数を分子とした比率です。これを見ると、500社前後の会社が議決権電子行使プラットフォームを含めた電子投票を採用して、年々、採用社数は増加していますが、その採用している会社の中で、実際に電子投票を行っている株主は、全体の5%に満たないということです。つまり、電子投票を採用している会社の9割以上は、全体の中のたった5%に満たない数の株主のために、わざわざ多大な費用と手間をかけて電子投票を採用しているのです。

では、なぜそこまでして電子投票を採用しなければならないかというと、多数の議決権を持っている機関投資家に投票してもらうためです。右下の表は、同じような集計を株主数ではなく、議決権数で集計したものです。この表を見ると、電子投票により議決権の30%以上が行使されている会社が多くなっています。

つまり、電子投票の採用を検討する場合、株主構成を分析して、機関投資家の議決権数が全体の総議決権数に占める割合を考慮する必要があるということです。

B招集通知の英文作成の前に

招集通知の英文作成には高いハードルがあり、少しずつ英文の招集通知を作成する企業が増えているとは言いますが、外国人投資家の議決権数が多いところや、規模の大きな企業で先端的な姿勢があって潤沢な予算とメンバーに恵まれたケースに限られているでしょう。実際に英文で招集通知を作成するといっても、法定文書ですから、単に日本語で作成した書類を英文に翻訳するだけでは不十分で、法律文書としてリーガルリスクをクリアさせておかないと、トラブルの原因となります。だからこそ、費用と労力が必要となるというわけです。

しかし、そもそも論でかんがえてみてはどうでしょう。海外の機関投資家は招集通知が日本語で書かれていて、外国人には読めないというのが、その理由でしょう。そうであれば、とにかく何が書かれているか分かればいいのでしょう。それなら、わざわざ英文の招集通知まで作らなくても、招集通知をホームページに掲載する時に、PDFファイルとしてではなく、htmlでページを作ればよいのではないでしょうか。htmlのページであれば、ウェブ翻訳でページ全体を自動翻訳できるので、最低限何が書かれているか程度は分かります。

というと、私には各企業が、そろいも揃って招集通知の掲載をPDFファイルで載せている理由が分かりません。Htmlのページにすれば、また、招集通知の議案の説明を、わざわざページを作る必要がなく、例えば取締役選任議案であれば、事業報告の役員の状況の箇所にリンクを張ることが出来るので、事業報告と参考書類で重複して説明する手間をかける必要がなくなるというメリットがあります。さらに、昨年の該当箇所にリンクを張れば容易に前期比較ができるので、株主にとってはフレンドリーな招集通知を労なく作めことができると思います。

そして、加えて、そのような英文に翻訳されることを前提に招集通知の文章を作ることを考えてみて下さい。例えば、営業の概況の説明を日本語独特の定型的で曖昧な文章では、翻訳の意味が伝わりません。どうしても、具体的で明確な文章にせざるを得なくなります。その意味で補充原則3−1.@のひな型開示ができなくなることにもなります。

試しに、検討してもよいのではないでしょうか。

 

〔Explainの開示事例〕

亀田製菓

現在、当社の株主における海外投資家の比率は相対的に低いと考えており、今後20%以上となった時点で、議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知等の英訳を進めてまいります。

 

本多通信工業

招集通知の英訳は、20153月末時点で外国法人等の持ち分が5%のため、業務、効率面から未実施。20%を超えた段階で実施します。

 

日比谷総合設備

■機関投資家、海外投資家を含め株主が議決権を行使しやすい環境提供は必要と認識しております。

■株主構成議決権電子行使プラットフォームの利用については、議決権行使率が9割弱あることから、機関投資家、海外投資家の比率等を勘案しながら、導入するか否かを判断いたします。

■同様に、招集通知の英訳についても海外投資家の比率を勘案し判断いたします。

■なお、海外投資家に会社概況を理解していただく決算概要を中心とした英文でアニュアルレポートを発行、ウェブページに掲載しています。

 

〔2016年に開催された定時株主総会の実際の状況と今後の傾向〕

・招集通知の英訳

招集通知の英訳に関しては、まだ一部の企業での実施にとどまるが、一部分の英訳も含めると3割程度が実施している。その一部は狭義の招集通知、参考書類(実施した企業の8割以上)で事業報告や計算書類まで実施している企業は少ない。

・議決権行使の電子化

電子投票やICJの議決権行使プラットフォームなど電子化を実施した企業の割合は大幅に増えて4割を越えそのうち約8割がICJの議決権行使プラットフォームを利用。

※議決権行使の電子化については、株主総会の招集を取締役会で決議する際に、その旨を決議すれば移行可能で、株主総会の承認や定款への記載の必要はないため、導入に手間はかからない。


関連するコード        *       

基本原則1.

原則1−2.

補充原則1−2.@

補充原則1−2.A

補充原則1−2.B

補充原則3−1.A

 
コーポレートガバナンス・コード目次へ戻る