第8節.監査役会
第1款.権限等
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監査役会の権限等(390条)
①監査役会は、すべての監査役で組織する。
②監査役会は、次に掲げる職務を行う。ただし、第3号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない。
一 監査報告の作成
二 常勤の監査役の選定及び解職
三 監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定
③監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない。
④監査役は、監査役会の求めがあるときは、いつでもその職務の執行の状況を監査役会に報告しなければならない。
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監査役・監査役会の設置
株式会社は、定款の定めによって、監査役または監査役会を置くことができるとされています(326条2項)。ただし、次の二つの場合を除いて、です。
ⅰ)監査役の設置義務(327条2項)
取締役設置会社は、原則として監査役を置かなければならないとされています(327条2項)。監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除く取締役会設置会社は、業務執行の決定を取締役会が行い、株主総会の権限が制約される等のことから、株主に代わる取締役の監視機関として監査役が必要とされます。
ⅱ)監査役会の設置義務(328条1項)
大会社である公開会社は、監査役会を置かなければならないとされています(328条1項)。
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監査役会について
監査役会設置会社では、監査役は半数以上の社外監査役を含む三人以上で構成され、全員で監査役会を組織します(390条1項)。監査役会設置会社は非公開会社であっても、定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する規定を設けることはできません(389条1項)。
※半数以上の社外監査役
上記の通り、監査役会の構成員である監査役のうち半数以上は社外監査役でなければなりません。この「半数以上」という言い方は、よく似ている言い方の「過半数以上」とは違ので注意が必要です。過半数というのは半数をすぎるということで半数は含みません。従って、監査役が3人の場合には、社外取締役は2名以上必要です。それでは、監査役が4人の場合を考えてみましょう。「半数以上」というとであれば、半数は含まれるので、最低2人の社外監査役が必要ということになります。これに対して「過半数以上」ということになると、半数を含めず、半数を越えなければならないので。2人という半数を越えなければならないので、3名以上の社外監査役が必要ということになります。
そもそも監査役ではなく監査役会という組織体にしたには、大会社において監査役の員数が3人以上とされて、取締役が3人以上で取締役会が設置できるのと同じように監査役会も設置できるようにするのが自然ということ。また社外監査役の導入も併せて決まったことに関連して、監査役の間で役割を分担し、かつ、それぞれが担当した調査の結果を監査役全員の共通の情報として、組織的、効率的な監査をすることができるようにするためということ。そしてまた、監査役会として業務執行陣に意見を述べることにより、監査役が個々に意見を述べるより、経営陣に対する影響を強められること。これらの理由からです。
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常勤監査役について(390条3項)
監査役会設置会社は、監査役の中から常勤監査役を選定しなければなりません(390条3項)。
常勤監査役とは、他に常勤の仕事がなく、会社の営業時間中原則としてその会社の監査役の職務に専念する者です。監査役会の設置が義務付けられる公開会社である大会社の監査役の仕事量は常勤者を必要とするという認識に基づき、その選定が要求されています。ただし、常勤監査役に選定された者の勤務状態が常勤の名に値しなくても、その選定またはその監査が無効になるわけではなく、監査役の善管注意義務違反の問題が生ずることになる。
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監査役会の権限
監査役会設置会社では、監査役の全員で監査役会を組織します。しかし、監査役会制度の下でも監査役の独任制は維持されており、監査役会の機能は、各監査役の役割分担を容易にしかつ情報の共有を可能にすることにより、組織的・効率的監査を可能にするものです。監査役会の職務は以下の3点であり、監査役会の権限はその職務の遂行に関わるものとなります。それ以外については個々の監査役の権限として残されています。例えば、業務監査の権限自体は、独任制の個々の監査役にあり、ただ監査報告書の作成権限は監査役会にあるということです。
ⅰ)監査報告の作成
ⅱ)常勤の監査役の選定及び解職
ⅲ)監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定(390条2項)
例えば、上記ⅲ)について、監査役会は、その決定(決議)をもって、監査の方針、会社の業務・財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項を定める権限を持っています。しかし、その決定により各監査役の権限の行使を妨げることはできないとされています(390条2項但書)。それは、個々の監査役が自己の判断で行う取締役の責任通級の提訴、業務調査権等を制限することはできないということです。
※監査役会による各監査役の職務分担の決定の意義
監査役会の決定により各監査役の分担を定めることは、調査の重複を避けた組織的・効率的な監査を可能にします。しかし、各監査役が分担された職務以外の権限を行使することを阻止できないから(390条2項但書)、監査役会の決定により職務分担を定めることの法的意義は、定められた分担が合理的と判断される限り、各監査役は、自己の分担外の事項については職務遂行上の注意義務が経験される点にあります。
具体的な監査役会の権限を以下にあげていきたいと思います。
・取締役及び会計監査人から報告を受け、または取締役から計算書類・附属明細書を、会計監査人からは監査報告書を受領する権限。
すなわち、取締役が会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合に、取締役から報告を受ける権限、会計監査人が取締役の職務遂行に関し不正の行為または法令等に違反する重大な事実を発見した場合に会計監査人から報告を受ける権限、取締役から計算書類・附属明細書を受領する権限、及び会計監査人から監査報告書受領する権限
・会計監査人の選任、不再任、解任に関する権限
すなわち、取締役会に会計監査人の選任、不再任及び解任の議案を株主総会に提出させる権限、会計監査人の解任権
・監査役の選任議案に同意する権限
・監査報告書の作成に関連する権限
・監査役の職務の執行に関する事項の決定権限
・監査役に職務の執行の状況を報告するように求める権限
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監査役会の職務(390条2項)
ⅰ)監査報告の作成
監査役会は、監査報告書の作成を、各監査役の報告に基づいて行います(390条2項、会社法施行規則130条、会社計算規則123条、128条)。監査役会による監査報告の作成は、各監査役が自己の調査の結果または他の監査役の調査の結果に基づいて、監査役会において自己の監査の結果についての意見を表明し、監査役会は、その各監査役の監査の結果に基づいて監査報告書を作成します。
監査役会の監査意見は多数決により形成されます(399条1項)。しかし、ある事項に関する監査役会監査報告の内容と自己の監査報告の内容とが異なる場合には、各監査役は、監査役会監査報告の内容を付記することができます(会社法施行規則130条2項)。
ⅱ)常勤の監査役の選定及び解職
ⅲ)監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定(390条2項)
監査役会の決議で、監査の方針、業務・財産状況の調査の方法その他の職務の執行に関する事項について定めます。これによって、例えば監査役の全員が個々的に会社の業務執行の全部にわたって調査するのではそれぞれが詳細に調査することができずに適当でない場合には、監査役会の決議をもって、それぞれの監査役について職務分担を定める。常勤の監査役とそれ以外とくに社外監査役のそれぞれの役割も、この決議によってさだめられ、組織的な監査を可能にします。ただし、この決議は、監査役の職務の執行の権限の行使を妨げることはできないので、例えば、職務分担の定めが提案された場合に、監査役の全員がそれに賛成して可決されたときは、監査役の全員がそれに拘束されるとともに、その定めが善管注意義務を尽くして相当である時は、その定めに従って職務を行えば免責されることになる。これに対して、この定めが多数決で可決されたが、1人の監査役が反対した時は、それに賛成した監査役は、その定めに拘束されるとともに、その定め従って職務を行えば免責されます。その意味で、この決議の効力が認められます。また、その定めに反対して監査役は、その定めに拘束されず、自らの判断でした調査の結果については、監査役会の求めにより監査役会に報告しなければならないことになっています。そこで各監査役としては、その報告を聞いて、善管注意義務を尽くして判断して相当と認めたときは、その結果に基づいて自己の監査の結果を発表して良い。しかし、さらに自ら調査の必要がある、あるいは担当監査役に調査させる必要があると判断したときは、自ら更に調査し、あるいは監査役会で定めるところにより、さらに調査することができ、また、そのようにする義務があると考えられます。
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監査役会への報告義務(390条4項)
監査役は、監査役会の求めがある時は、いつでもその職務の執行の状況を監査役会に報告しなければならない(390条4項)。これにより、監査役間の情報の共有が可能になる。監査役会において職務分担を定めた場合には、この報告を受けることによって、それぞれの監査役が分担した調査の結果をすべての監査役がの共通の知識として、それについて疑問があるときには、さらには監査役会において調査する契機とすることができます。なお、この義務は監査を終えた場合にも負うもので、この義務に違反したときは、任務懈怠の責任を負うことは言うまでもありません。
第2款.運営
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招集権者(391条)
監査役会は、各監査役が招集する。
監査役会は、各監査役が招集できるとされています(391条)。これは独任制の趣旨から、取締役会のような形で招集権者を限定する(366条)ことは認められません。仮に招集権者を社内規程等で定めた場合には、事実上の一応の拘束力は認めれますが、それは絶対的なものではなく、それ以外の者が招集した場合には、その招集も効力があり、その定めは拘束力を有しないと考えられます。
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招集手続(392条)
①監査役会を招集するには、監査役は、監査役会の日の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各監査役に対してその通知を発しなければならない。
②前項の規定にかかわらず、監査役会は、監査役の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
招集手続については、取締役会と実質的に同じです。
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監査役会の決議(393条)
①監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行う。
②監査役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
③前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
④監査役会の決議に参加した監査役であって第2項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
監査役会の決議は、監査役の過半数(現存する監査役の数が法令・定款に定める)をもって行います(393条1項)。取締役会の場合と異なり、定款に決議の省略(書面決議)ができる旨を定めることはできません。会議の省略を認めては、各監査役が独任制の機関であるというだけにとどまらない合議体の機関を設けた意味(密接な情景共有による組織的・効率的監査)が乏しくなるからです。
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議事録(394条)
①監査役会設置会社は、監査役会の日から10年間、前条第2項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
②監査役会設置会社の株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
③前項の規定は、監査役会設置会社の債権者が役員の責任を追及するため必要があるとき及び親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。
④裁判所は、第2項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該監査役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第2項の許可をすることができない。
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監査役会への報告の省略(395条)
取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が監査役の全員に対して監査役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を監査役会へ報告することを要しない。
取締役、会計参与、監査役または監査役会に報告すべき事項を監査役の全員に対して通知したときは、当該事項を監査役会へ報告することを要しない(395条)。取締役等には監査役会の招集権限がないことの関係で、法律関係を明確化する趣旨で定められた。
第9節.会計監査人
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会計監査人の権限等(396条)
①会計監査人は、次章の定めるところにより、株式会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する。この場合において、会計監査人は、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。
②会計監査人は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対し、会計に関する報告を求めることができる。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの
③会計監査人は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人設置会社の子会社に対して会計に関する報告を求め、又は会計監査人設置会社若しくはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
④前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。
⑤会計監査人は、その職務を行うに当たっては、次のいずれかに該当する者を使用してはならない。
一 第337条第3項第1号又は第2号に掲げる者
二 会計監査人設置会社又はその子会社の取締役、会計参与、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人である者
三 会計監査人設置会社又はその子会社から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者
⑥指名委員会等設置会社における第2項の規定の適用については、同項中「取締役」とあるのは、「執行役、取締役」とする。
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会計監査人設置会社について
会計監査人は1974年の商法改正により大会社に対して会計監査人による決算監査の制度を導入したことにより設置が義務付けられることになりました。現在の会社法では、大会社は会計監査人を置かなければなりません(328条)。それは株主や会社債権者など計算が適正であることに利害関係を有する者が多いからということです。監査等イ委員会設置会社及び指名委員会等設置会社も、会計監査人の設置を義務付けられています(327条5項)。また、それ以外の株式会社が定款の定めにより会計監査人を置いた場合(326条2項)には、監査役を置かねばならず(327条3項)、その監査役は業務監査権限を有するものでなくてなりません(389条1項)。これは会計監査人は、業務監査を行う機関とセットでなければ本来の機能を果たすことができないと考えられているからです。
これらの会計監査人設置会社は、その旨と会計監査人の氏名(名称)を登記します(911条2項19号、商業登記法47条2項11号、54条2項)。
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会計監査人の地位について
会計監査人は、監査役と同じく株主総会で選任されますが、監査役のような会社の機関を構成する者ではなく(329条1項)、会社の外部の者であって、会計監査人設置会社の計算書類を会社との契約により委任を受けて監査する専門職業人(436条2項、441条2項、444条4項)です。そのため外部監査人と呼ばれることもあります。会計監査人となる資格は、公認会計士または監査法人に限られる(337条1項)ことです。監査法人が会計監査人に選任された場合は、その社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、会社に通知しなければなりません(337条1項)。
なお、金融商品取引法の適用会社では、財務計算に関する書類(財務諸表)の監査証明をする公認会計士あるいは監査法人と会社法上の会計監査人とは、通常は同一です。上場会社では、その公認会計士あるいは監査法人は財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府例で定める体制について経営者が評価した「内部統制報告書」の監査証明も行います(金商法193条の2第2項)。
会計監査人の被監査会社からの独立性を維持し、監査の公正さを保障するとともに、会計監査人としてふさわしくない者を排除するため会計監査人の欠格事由を定めています。(337条2項)会計監査人としての資格を有しない者または欠格事由のある者を会計監査人に選任しても、その選任は無効であり、また選任後にそれに該当すれば、その時点から会計監査人の地位を失うことになります。そして、そのような者が監査報告書を作成しても法律上の効果を生じません。欠格事由の「公認会計士法の規定により、第435条第2項に規定する計算書類について監査をすることができない者」の具体的内容として、以下の者があげられます。
・その会社の役員(取締役又は監査役)であり、もしくは過去1年以内に役員であった者など、会社と著しい利害関係がある公認会計士(公認会計士法24条)
・その会社の株式を所有する監査法人なと、会社と著しい利害関係がある監査法人(公認会計士法34条の11)
・公認会計士または監査法人が虚偽または不当な監査証明をし、または公認会計士法またはそれに基づく命令に違反した等の理由により業務停止処分を受け、業務停止期間中のもの(公認会計士法29~31条、34条の21)
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会計監査人の職務と権限
会計監査人の基本的職務とそれに伴う権限は会社の連結及び計算関係書類を監査して、監査報告を作成することです(396条1項)。会計監査人の職務と権限の行使を行うために必要なものとして、次のような措置がとられています。
ⅰ)取締役及び使用人に対する報告請求権(396条2項)
いつでも、会社の会計帳簿、これに関する資料の閲覧・謄写をし、または取締役や使用人に対し会計に関する報告をもとめることができる。
ⅱ)会社及び子会社の業務・財産調査権(396条3、4項)
必要がある時は、子会社に対し会計に関する報告を求め、または会社・子会社の業務・財産の調査をすることができる。ただし、子会社は調査が権利濫用である等正当な理由があるときは、これを拒むことができる。
※会計監査人は、会社の内部統制の状況を把握した上で、監査対象の重要性・危険性等を考慮してその会社に適用すべき監査手続、実施時期、試査の範囲を決定し、監査計画を立てます。監査計画は、監査実施の過程において、事情に応じて修正されます。会計監査人である監査法人の各関与社員・補助者等がその会社の監査に従事する日数、報酬、経費の負担等は会計監査人と会社間の監査契約書に記載され、往査場所、時期、日程等は、それとは別に決定されます。
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監査役に対する報告(397条)
①会計監査人は、次章の定めるところにより、株式会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する。この場合において、会計監査人は、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。
②監査役は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができる。
③監査役会設置会社における第1項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。
④監査等委員会設置会社における第1項及び第2項の規定の適用については、第1項中「監査役」とあるのは「監査等委員会」と、第2項中「監査役」とあるのは「監査等委員会が選定した監査等委員」とする。
⑤指名委員会等設置会社における第1項及び第2項の規定の適用については、第1項中「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」と、「監査役」とあるのは「監査委員会」と、第2項中「監査役」とあるのは「監査委員会が選定した監査委員会の委員」とする。
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会計監査人の会計監査報告(397条1項)
会計監査人は会計に関する監査の職務・権限を有するのに対して、監査役は業務一般についての監査(その中には会計監査を含みます)の職務・権限を有しています。この点についての両者の職務・権限の関係として、会計に関する監査について、無意味な重複を避けるため、第一次的には会計監査人が監査を行い、その監査報告書を監査役会に提出し、監査役会は、その会計監査人の会計監査を前提として、会計監査人の監査の方法または結果についての各監査役の意見に基づき、会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認めた場合にのみ、その旨及び理由並びに監査役の監査の方法の概要または結果を監査報告書に記載するという構造をとっています。このことから、監査役と会計監査人との間には、緊密な連携関係が不可欠といえます。
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監査役の会計監査人に対する説明・報告請求権(397条2項)
上述のとおり、監査役は会計監査については、会計監査人の監査報告書の相当性を判断して自分の行った監査について監査役会に報告し、監査役会は、それに基づいて監査報告書作成します。そのため、監査役は、その判断にあたって、会計監査人に対して、その監査報告書について説明を求めることが当然必要になります。そこで、監査役にはその権利が与えられている(3971条2項)と言えます。
これに対して、会計監査人は監査役の指揮・命令を受けるわけではなく、独立の専門職業人として自己の監査計画に沿って監査を実施しているわけであるから、新たな調査を必要とする事項については、監査役から報告を求められた場合に監査計画を修正し監査役に協力するか否かは、会計監査人としての善管注意義務に従って判断することになります。
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会計監査人の報告義務(397条2項)
会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関して不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があることを発見したときは遅滞なく、これを監査役に報告しなければなりません(397条)。業務監査は会計監査人の職務ではありませんが、会計監査の際に取締役の不正行為等を発見する可能性があるので、このような報告義務が課せられています。
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定時株主総会における会計監査人の意見の陳述(398条)
①第396条第1項に規定する書類が法令又は定款に適合するかどうかについて会計監査人が監査役と意見を異にするときは、会計監査人(会計監査人が監査法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。次項において同じ。)は、定時株主総会に出席して意見を述べることができる。
②定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない。
③監査役会設置会社における第1項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会又は監査役」とする。
④監査等委員会設置会社における第1項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査等委員会又は監査等委員」とする。
⑤指名委員会等設置会社における第1項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査委員会又はその委員」とする。
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会計監査人の報酬等の決定に関する監査役会の関与(399条)
①取締役は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
②監査役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査役会」とする。
③監査等委員会設置会社における第1項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査等委員会」とする。
④指名委員会等設置会社における第1項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査委員会」とする。
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会計監査人の報酬等
会社が会計監査人に支払うべき報酬等は、定款あるいは株主総会で定める必要はありません。しかし、取締役がその報酬等を定める場合には、監査役(監査役が二人以上の場合にはその過半数)の同意を得なければなりません(399条1項)。会計監査人の監査を受ける立場の取締役(経営者)のみがその決定に関わると、会計監査人が会社に対して十分な質・量の役務を提供することが困難な低い水準に報酬等を抑制したいとのインセンティブが働くことを防止するための措置です。
※公開会社は、会計監査人の報酬等の額及びその報酬額について監査役が同意した理由を、非監査業務の内容と共に事業報告に開示しなければなりません(会社法施行規則126条)。