英国ロマン派展 バーン=ジョーンズのフォロワーたち エドワード・ポインター、ストラッドウィック、ド・モーガンン |
バーン=ジョーンズは後期ラファエル前派の主要な画家で、それなりに有名な画家で、象徴主義的な画家たちの先駆者でもありますが、今回は習作とかスケッチの類しか展示されていなかったので、ここで取り上げて見たいと思うものはありません。ここで、彼のフォロワー、あるいは強く影響を受けたと見える画家たちの作品が展示されていたので、その参考のために、今回の展示にはありませんでしたが、バーン=ジョーンズの作品を(左図)一点だけ小さく出しておきます。 ■ジョン・メリッシュ・ストラッドウィック 「イザベラとバジルの鉢」(右図)という作品ですが、ラファエル前派のミレイやハントといった人たちも題材としたキーツのものがたりを題材にして、初期ルネサンス風の舞台装置に、描かれた女性はロセッティのティストを少し加味しつつも、バーン=ジョーンズの描く女性によく似ています。細部の描写等は、バーン=ジョーンズよりも精緻で技巧の面では、かなり達者に人だったのかもしれず、全体に、バーン=ジョーンズよりは明解な印象はあります。ただし、それはバーン=ジョーンズとどこが違うのかと探したからこそ言える程度のものです。 ■メアリー・イーヴリン・ド・モーガン サンドロ・ボッティチェリを称賛し、細部の精密さと神話主題への好みを特徴とするということですが 「カドモスとハルモニア」(左下図)という作品をみると、女性の顔はバーン=ジョーンズの作品のものに少し繊細な印象を加えたという感じで、背景の舞台装置のような描き方もバーン=ジョーンズのやり方をうまく消化している感じです。口の悪い言い方をすれば、バーン=ジョーンズの手法をうまく使って、際物のロリコンヌードを、芸術産品に仕上げているといった作品です。 「木の精ドリュアス」(右下図)はなおさら顔がバーン=ジョーンズ風です。 ■エドワード・ジョン・ポインター ポインターは単なるバーン=ジョーンズのフォロワーに収まるだけの人ではなく、アカデミーの会長も務めた当時の大家で、正統的な美術教育を収めた人で、独学のバーン=ジョーンズとは土台が違います。古代の神話を好んで取り上げた新古典主義的歴史風俗画の大家ということです。 「アンドロメダ」(下右図)という作品は、バーン=ジョーンズ(下左図)も描いていますが、バーン=ジョーンズの場合はアンドロメダは後姿で描かれ、同じ画面にペルセウスを並べて対照とした構図にしていますが、ポインターはアンドロメダに焦点を当てて正面から描いています。当時は、アンドロメダという題材が割合に多く取り上げられていたようですが、その中でも構成が全く異なってはいるものの、ポインターとバーン=ジョーンズの作品によく似た印象を私の場合は、個鈍的に持っています。それは、アンドロメダのとっているポーズだったり、背景を舞台装置の書き割りのように最小限に描いて、作品全体を平面的にして、空間というものを感じさせないところだったりというところです。そして、何よりも、アンドロメダの存在感が、神話上の登場人物として女性の理想的な姿を追うという古典主義的なものではなく、かといってモデルを写生して現実の個性を持った生身の女性とするのでもなく、一種のキャラクター・ピースのような女性の記号のように扱いをしているように思われるところです。つまり、ここでのアンドロメダはポインターやバーン=ジョーンズは他の作品でも、違った舞台に同じ女性像を衣装や髪型を変えて使いまわすものとして使うように造形されていたように見えます。抽象化されてはいますが、理想化というのではなく、画家の個性をうまく表しているような一種の着せ替え人形のような存在となっている。そのような点で両者はよく似ていると思います。
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