私はどうしようとしているのか。事業戦略の著作の中でも、対象を絞り込むことの大切さを説いています。(例えば「ストーリーとしての競争戦略」)もっと言えば、敢えて切り捨てることの大切さでしょうか。これは、IRの原則であるフェア・ディスロージャつまり、情報を公平に出していくことに反するように見えます。前段でいったように株式市場は全企業が、企業自身を買ってもらう(投資してもらう)ための競争をしているのですから。ここでターゲットを絞り、極端な場合切り捨ても辞さないということは、企業の側から投資家に向かって、「あなたはターゲットではないから、この会社の株式は買わなくてもいい」というようなことはできません。私は、そんなことを言っているのではありません。しかし、株式を買う人(投資家)には様々な人がいます。また投資をする動機も様々です。その中で、私の勤め先の実情と比較的シンクロしやすい投資の動機を持つ人たちに向け重心を絞った企業のアッピールをしていこうという考えているわけです。情報はすべての投資家に向けて発信するけれど、重点を絞ったターゲットによりアッピールするような発信のやり方を考えていくというものです。そこで、ターゲッティングです。前段で紹介した私の勤務先の性格からすると、短期的に株価がどんどん上がっていくことは期待できないので、短期的なキャピタルゲインを稼ごうとする投資家の投資の対象とはなりにくい。また、市場での毎日の株式の取引出来高が少ない、つまり流動性に難があるため、たとえ小額でも短期的に大量の売買をすることによって売買利益を出していくような投資対象にはならない。ということは、中長期的な投資を考える人をターゲットとせざるを得ないということです。私の勤務先は堅実な経営をしているので、短期的な投資には面白みがないということは確かです。しかし、安定性というから見ると、株式投資のポートフォリオ、つまり、株式投資をする際に一社の株式だけを買うのではなくて、数社の株式をまとめて買って、その中で一発当てるようなリスクが高いが当たると大きい株や万が一に備えて安定的に利益を得られるような株式を組み合わせて買う方法です、そのポートフォリオの中に安定的な株式として私の勤め先の株を混ぜてもらう。あるいは、長く保有してもらって配当を安定的に受け取ることを考える。あるいは、長く株式持っていて、長期的な企業の成長を見越して投資をするような投資家の人。その他を対象として優先的に考えてみる、ということになります。でも、この程度のことなら、どの会社も内心では考えていることではないかと思います。ただ、多くの場合は、そう考えていても、「そうなればいいな」程度で、企業から積極的にそのようにターゲットを絞って動くことをしようとしないのが、ここで私の考えているところと異なってくると思います。ターゲッティングのところで、あまりこだわっていると先が続かなくなるので、では、実際にどうするのかを考えて見ます。しかし、ターゲッティングについては、この先でも、折々にフィードバックされるので、その都度、検討を加えることになると思います。
(2)方法の差別化 へ