ホームページをそれ単独で考えるのではなくて、他の媒体との連携も考えているということを少しだけ触れたいと思います。これには、当然、他の媒体もホームページとの連携をしていくことにより、自身のあり方を見直すことになってくるということも含みます。
例えば、説明会については、説明会の動画と配布資料をアーカイブとしてホームページに掲載しています。これなど、やっている会社は多いのではないかと思います。それに加えて、当日の質疑応答を記録してアーカイブに加えています。また、毎回の説明会の出席者とその内訳、アナリスト、機関投資家、ジャーナリズム関係、その他と分けた内訳を載せ、別にFAQの中でも、毎回の説明会の概要を説明しています。これは、説明会に出席できなかった人への補完の意図と、説明会を開いているというのは企業情報として投資の対象として企業をみるときどの程度のことをしているのかというが重要な情報であるということ考えているためです。今、課題として考えているのは説明会の動画です。今年の英国IR協会のガイドライン等をみると動画の活用ということを強く推奨していて、動画を多く使ったサイトを表彰しているようですが、むしろ、ネットユーザーにとって動画というコンテンツで企業の情報を伝えることが適切か疑問なのです。動画というコンテンツ自体を否定するのではありません。ニコニコ動画の興隆や、そこに投稿して多くの人の支持を受けてメジャーとしてデビューした人もいるという事実もあるわけですから。しかし、例えば、ソニーのホームページで経営者が企業の方針や戦略を動画で語るなどというのは、果たして投資情報を得るために訪問した人に有効なのか、また、アップしているソニーはそれを検討して動画を作っているのか、私には、どうも、そうは見えないのです。しかも、スマートフォンでも見ることができるようにしている、と聞くとなおさら疑問を感じます。というのも、少なくとも企業の方針をCEOが語るということになれば、内容が伴っていなければ意味がありません。しかし、そういう内容がこもった動画を視聴するということは目と耳の注意を集中することが必要です。これに対して、パソコンで視聴するという場合、たとえ短時間であるにせよ、そこまで集中するのに適した環境なのか、説明は時間とともに流れていくので、大事なところを聞き逃してしまうと、視聴した意味が無くなってしまうのです。そして、スマートフォンともなれば、尚更です。スマートフォンを静かな室内の集中できる環境で注意深く視聴するということ、普通では考えられないことです。移動中とか、ちょっとした時間についでに視聴するというときに、緊張と集中を迫られる動画を見せるメリットがどこにあるのか。それを克服する手法のようがあるのか。私は、この疑問が解けないでいます。そして、このような動画を推奨する英国IR協会はそういう実務的な理由を何一つ説明していません。それはまた、バッと見て、分かりやすいという、それまでの主張と論理的な矛盾があると私には思うのですが、その場合のロジックが一言も説明されていないので、疑問を募らせています。これを紹介している日本の学者も知らん顔のようです。
ただ、私の勤め先の場合に、たしかに説明会の動画を集中して見て下さる方がいらっしゃるのです。それは、実際に数人のアナリストの人から聞きました。だから、この説明会動画に関しては必要とされているものではあるとして、当面このまま続けるというので十分ではないか、と思っています。
そして、印刷媒体とホームページの連携の一つの試みとして、株主通信のウェブ版をつくり、印刷したものと連動させて、相互に補完させることはできないか、ということを試みようとしています。