【原則1−5.いわゆる買収防衛策】
買収防衛の効果をもたらすことを企図してとられる方策は、経営陣・取締役会の保身を目的とするものであってはならない。その導入・運用については、取締役会・監査役は、株主に対する受託者責任を全うする観点から、その必要性・合理性をしっかりと検討し、適正な手続きを確保するとともに、株主に十分な説明を行うべきである。 |
〔形式的説明〕
@この原則で求められていること
この原則の文言にある「買収防衛の効果をもたらすことを企図してとられる方策」というのは、いわゆるライツ・プランのような特定の買収防衛策のみを指すわけではなく、その言葉通りに、買収防衛の目的でとられる全般を言っていると思われます。しかし、代表的なものが買収防衛策で、企業がその買収防衛策の導入を決定は、株主や投資家に大きな影響を与えるものです。それは、防衛策が発動された時には株式の稀釈化が起こり株主にとって不利な状況を招くといったリスクを抱えることになり、その可能性があるということで株価にも少なからず影響を与えることにもなります。
それゆえ、この原則では買収防衛策が現経営陣や取締役の保身を目的とするものでないことを、企業に自覚させ、そのことを含めて、買収防衛策を導入する、あるいは既に導入している場合には運用するさいに、企業価値の維持という本来の必要性にかなった適正に行なわれるということ、また、それについて開示することを求めている、というものです。
〔実務上の対策と個人的見解〕
@この原則は対象が限定される
まず、この原則は買収防衛策が株主や投資家に与える影響を懸念してのものであるため、そもそも、当初から買収防衛策を導入していない、かつ、今後も導入しない企業には関係のないものです。だから、この原則は、対象となる企業が、買収防衛策を導入している企業、あるいは今後導入しようとしている企業に限定されます。
A実務的には導入時に強い規制がある
制度的な規制として、買収防衛策は、経済産業省・法務省が平成17年5月27日付で公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」に従って導入・運用されることになっています。また、株式を上場している東証では、市場への影響が大きいことから、買収防衛策の導入に際しては、@開示の十分性、A透明性、B流通市場への影響、及びC株主の権利の尊重という四つの事項を遵守することが義務付け、さらに、この遵守事項に違反した場合には、公表措置、さらには上場廃止とするというような罰則まで定めています。そして、会社法や金融商品取引法において、買収防衛策の基本方針やライツ・プランの内容について、事業報告及び有価証券報告書における開示が求められているわけです。
したがって、買収防衛策を導入している企業は、これらの規制をクリアしていることになります。だから、この時点で、形式的に適正な手続きを踏んでいることになります。また、法律上、株主に対しても適切な説明を行なっているものと見なされることになるわけです。つまり、この手続きを踏んで、そこに懈怠があったり逸脱がない限り、この原則に従っていると見なすことができます。
買収防衛策のあり方の基本方針の試み
実例からは乖離しているようですが、コードの趣旨により沿うように、企業の姿勢を株主や投資家の理解を深めることができるのではないかと考えてみました。これは、コーポレート・ガバナンス報告書でも買収防衛策について任意の報告ができると思います。
当社は、公開企業として当社株式の自由な売買を認める以上、特定の者の大規模な買付行為に応じて当社株式の売却を行うか否か、ひいては会社を支配する者の在り方は、最終的には企業価値の向上に資するものであるか否かを基準として判断されるべきもので、株主の皆様の意思に基づき決定すべきものと考えます。したがって、買収防衛策を導入することはありません。一方で、当社は、企業理念である「技術と信頼」の裏打ちされた独自技術や長期にわたる顧客との信頼関係といった経営資源が企業価値の源泉となっていることから、当社の事業の継続及び推進には中長期的観点からの安定的な経営及び蓄積された経営資源に関する十分な理解が不可欠であると考えています。したがって、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者に、これらに関する十分な理解なくしては、当社の企業価値及び株主共同の利益が毀損されるおそれがあると考えています。このことは、株主や投資家の皆様をはじめ広く市場の理解を得るためにIR活動をはじめとした公報、啓蒙に努めてまいります。 |