@消滅株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。
A前項の規定にかかわらず、吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社でない場合において、吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(以下この条及び次条第1項において「合併対価等」という。)の全部又は一部が持分等(持分会社の持分その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)であるときは、吸収合併契約又は株式交換契約について吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の総株主の同意を得なければならない。
B吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等(譲渡制限株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)であるときは、吸収合併又は株式交換は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。
C吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部又は一部が持分等であるときは、吸収合併又は株式交換は、当該持分等の割当てを受ける種類の株主の全員の同意がなければ、その効力を生じない。
D消滅株式会社等は、効力発生日の20日前までに、その登録株式質権者(次条第二項に規定する場合における登録株式質権者を除く。)及び第787条第3項各号に定める新株予約権の登録新株予約権質権者に対し、吸収合併等をする旨を通知しなければならない。
E前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
会社法783条は、吸収合併、吸収分割または株式交換の当事会社のうち、吸収合併消滅株式会社、吸収分割消滅株式会社または株式交換完全子会社の株主の総意の決定のため、同時に、株主保護のため、吸収合併契約、吸収分割契約または株式交換契約を株主が承認する手続きについて規定しています。783条1項は原則規定で、消滅会社等は効力発生日の前日までに株主総会の決議によって、吸収分割契約等の承認を受けなければなりません。これは原則として特別決議事項となります。第2項は、消滅会社等が種類株式発行会社でない場合に、合併対価の全部または一部が持分等であるときは、吸収分割契約等について総株主の同意を得なければならないことを規定しています。第3項は、消滅会社等が種類株式発行会社である場合に、合併対価等の全部または一部が譲渡制限株式等であるときは、種類株主総会での承認がなければ吸収分割契約等の効力を生じない旨を規定しています。第4項は、同じく合併対価が持分等のときは種類株主のすべての同意が必要であることを規定しています。そして、第5、6項は、登録株式質権者または登録新株予約権質権者を保護するために、効力発生日の20日前までに吸収合併等が行われる旨の通知または公告が必要である旨を規定しています。
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株主総会による承認
会社法は、吸収合併等を会社の基礎構造の変更として捉え、原則として、消滅会社等の株主総会の特別決議による承認が必要としています。ただし、例外として、株主総会の特別決議を要しない簡易合併制度や略式合併制度を設けています。これらの場合、取締役会の決議により(指名委員会等設置会社の場合は執行役の決定)、吸収合併等を行うことができます。
吸収合併等は、会社の基本構造に重大な影響を与えるため、消滅会社等において、原則として株主総会の特別決議による承認が必要とされています(783条1項)。譲渡性の低い対価を交付される場合、株主の権利保護のため、株主総会の決議要件が加重され、総株主の同意が求められる場合もあります(783条3項)。これらの場合には、略式合併はできません。さらに、種類株式発行会社は、譲渡性の低い対価を交付される種類株主の利益を誇ずるため、種類株主総会の承認ないし総株主の同意が要求されます(783条3、4項)。
・原則─特別決議
吸収合併消滅会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければなりません(783条1項)。この吸収合併契約等を承認する株主総会の決議は特別決議、すなわち株主総会において議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります(309条2項)。
@)株主総会参考書類等
株主総会の決議方法において書面投票および電子投票を採用する場合には、招集通知に株主総会参考書類を添付しなければなりません。
取締役が吸収合併契約の承認に関する議案を株主総会に提出する場合は、株主総会参考書類に、次の事項を記載しなければなりません。
ア.吸収合併を行う理由
合併を行う理由は、各合併のケースにより異なりますが、合併の理由を株主に説明・開示という点から相当と認められる程度に記載することになります。
イ.吸収合併契約の内容の概要
実務上は、合併契約の全文を掲載することが多いようです。
ウ.消滅会社が、株主総会の召集を決定した日において合併の事前開示事項(債務の履行の見込みにかんする事項及び備置開始日後の変更事項は除く)があるときは、その内容の概要
合併対価の相当性に関する事項、合併対価について参考となるべき事項、吸収合併に係る新株予約権の定め相当性に関する事項および計算書類等に関する事項であり、これらの事項の内容の概要が参考書類に記載されることになります。
・譲渡性の低い対価が交付される場合─総株主の同意・特殊決議
@)総株主の同意(783条4項)。
吸収合併消滅会社の株主に交付される合併対価の全部または一部が持分等であるときは、吸収合併契約について、吸収合併消滅会社の総株主の同意が必要となります(783条2項)。これは、譲渡制限株式以上に流動性が低下するおそれのある持分等が交付されるので、株主保護の観点から総株主の同意が必要とされたものです。
持分等というのは、持分会社の持分その他これに準ずるものとして法務省令で定められているものです。かなわち、会社法施行規則185条で、譲渡制限株式を除き持分会社の持分などの権利の移転または行使に債務者その他第三者の承諾を要するものです。
なお、総株主の同意を得るために、株主総会を開催する必要はありません。総株主から個別的同意を得ることができればよいと考えられます。
A)株主総会の特殊決議(783条4項)。
吸収合併消滅会社が公開会社で、その株主に対して譲渡制限株式等を交付する場合には、吸収合併消滅会社の株主総会における吸収合併契約の承認の決議要件は、その発行する全部の株式の内容として譲渡制限の定めを定款に新たに設ける場合と同様の、特殊決議が必要となります。すなわち、議決権を行使できる株主の半数以上の出席があり、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。
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種類株主の承認
会社法上、一定の場合には株主総会の承認に加えて、種類株主総会の承認が必要とされています。種類株主総会が必要とされる場合およびその場合の決議要件は、下表のとおりです。

・種類株主総会の決議
@)種類株主総会の特殊決議(783条3項)。
吸収合併消滅会社等が公開会社で、かつ、種類株式発行会社である場合、合併対価の全部または一部が譲渡制限株式等であるときは、無吸収合併契約等は、株主総会の特別決議に加えて、譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じません(783条3項)。ただし、譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式が譲渡制限株式である場合には、そのような種類株主をとくに保護する必要はないため、種類株主総会の決議を加えることを免除されます(783条3項括弧書)。さらに、これに該当する種類株主にかかる種類の株式が2種類以上ある場合には、その2種類以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会において、それぞれ決議がなされなければなりません(783条3項但書)。この場合の決議要件は、特殊決議、すなわち、議決権を行使できる株主の半数以上の出席があり、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。
これは、流動性のより低い株式を交付されることとなる種類株主保護の観点から、定款に新たに株式譲渡制限の定めを設ける場合と同様の要件を課したものであって、合併前からすでに譲渡制限が付されていた種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会が除外されているのも、この趣旨によるものです。
A)種類株主総会の特別決議(783条3項)。
上記以外でも、吸収合併消滅会社等で種類株式が発行されている場合、吸収合併等によって特定の種類株式を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類株式を有する種類株主によって構成される種類株主総会により承認を受けることが必要となります(322条1項)。この場合は、種類株主総会の特別決議事項となります(324条2項4号)。これは、譲渡制限株式等が割り当てられるかどうかにかかわらず、特定の種類株主に対して損害を及ぼすおそれのある場合一般についての規制です。
・合併対価等が持分等の場合
吸収合併消滅会社等が種類株式発行会社である場合、合併対価の全部または一部が持分等であるときは、吸収合併契約等は、783条1項の規定による株主総会の特別決議のほか、持分等の割当てを受ける種類株主の全員の同意がなければ、その効力を生じることはありません(783条4項)。この場合、吸収合併消滅会社等か公開会社であるかどうかにかかわりありません。これは、譲渡制限株式以上に流動性が低下するおそれがある持分等が交付されることから、持分等の割当てを受ける種類株主保護の観点から全員の同意が必要とされたためです。
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登録質権者に対する通知・公告
吸収合併消滅会社等は、吸収合併等の効力発生日の20日前までに、登録株式質権者および登録新株予約権質権者に対して吸収合併等を行う旨の通知をしなければなりません(783条5項)。なお、消滅会社等の便宜のため、通知は公告をもって代えることができるものとされています(783条6項)。この通知・公告制度は、登録株式質権者または登録新株予約権質権者に対して、質権の対象物である株式または新株予約権が消滅・移転するなど、その権利内容が変動することについて周知を図ることを目的とするものです。