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第759条 株式会社に権利義務を 承継させる吸収分割の効力の発生 |
Ø 株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生(759条) @吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。 A前項の規定にかかわらず、第789条第1項第2号(第793条第2項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定により異議を述べることができる吸収分割会社の債権者であって、第789条第2項(第3号を除き、第793条第2項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の各別の催告を受けなかったもの(第789条第3項(第793条第2項において準用する場合を含む。)に規定する場合にあっては、不法行為によって生じた債務の債権者であるものに限る。次項において同じ。)は、吸収分割契約において吸収分割後に吸収分割会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、吸収分割会社に対して、吸収分割会社が効力発生日に有していた財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。 B第1項の規定にかかわらず、第789条第1項第2号の規定により異議を述べることができる吸収分割会社の債権者であって、同条第2項の各別の催告を受けなかったものは、吸収分割契約において吸収分割後に吸収分割承継株式会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、吸収分割承継株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。 C第一項の規定にかかわらず、吸収分割会社が吸収分割承継株式会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って吸収分割をした場合には、残存債権者は、吸収分割承継株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、吸収分割承継株式会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。 D前項の規定は、前条第八号に掲げる事項についての定めがある場合には、適用しない。 E吸収分割承継株式会社が第四項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、吸収分割会社が残存債権者を害することを知って吸収分割をしたことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。効力発生日から十年を経過したときも、同様とする。 F吸収分割会社について破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、吸収分割承継株式会社に対して第四項の規定による請求をする権利を行使することができない。 G次の各号に掲げる場合には、吸収分割会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、当該各号に定める者となる。 一 前条第4号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主 二 前条第4号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者 三 前条第4号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者 四 前条第4号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者 H前条第五号に規定する場合には、効力発生日に、吸収分割契約新株予約権は、消滅し、当該吸収分割契約新株予約権の新株予約権者は、同条第6号に掲げる事項についての定めに従い、同条第5号ロの吸収分割承継株式会社の新株予約権の新株予約権者となる。 I前各項の規定は、第789条(第1項第3号及び第2項第3号を除き、第793条第2項において準用する場合を含む。)若しくは第799条の規定による手続が終了していない場合又は吸収分割を中止した場合には、適用しない。 吸収分割承継会社が株式会社の場合の、吸収分割の効力が生ずると、どのような効果生ずるかを規定しているのが759条です。 吸収分割契約において吸収分割による承継の対象とされた吸収分割会社の権利義務は、吸収分割契約の定めに従い、個別の権利移転行為や債務引受行為を要することなく、法律上当然に吸収分割承継会社に承継されます(759条1項)。 ü
吸収分割の効果(759条1項) 会社分割の効果は、一般的に、会社分割の効力発生日、つまり、吸収分割契約で定められた日に、会社分割の対象とされた分割会社の権利義務が、法律上の効果として、個別の承認であれば必要とされる個々の権利義務に関する手続きや行為を要することなく吸収分割承継会社に包括承継(一般承継)されることとされます。このような権利義務の包括承継(一般承継)は、合併の効果と同じようなものですが、合併の場合は消滅会社は解散し、その権利義務が包括的に存続会社に承継されるのに対して、会社分割の場合は、分割会社は効力発生後も引き続き存続するため、承継されるのは会社分割の対象とされた権利義務に限られ、その結果承継の効果が合併の場合よりも複雑になっていまい。 ü
吸収分割の効力発生時(759条1項) 吸収分割の効力は、効力発生日に生ずると定められています(759条1号)。効力発生日は吸収分割契約の必要的記載事項です(758条7号)。吸収分割の効力が生じた日から2週間以内に、分割会社および承継会社による変更登記が必要となります(923条)。 効力発生日に、吸収分割承継株式会社は、吸収分割契約の定めにしたがい、吸収分割会社の権利義務を承継します(759条1項)。また、吸収分割会社は、効力発生日に、吸収分割契約のさだめに従い、分割対価として付与された株式・社債・新株予約権・新株予約権付社債について、それぞれの権利者となります(759条4項)。 吸収分割承継会社が、吸収分割に際して、分割会社の新株予約権に代わる承継会社の新株予約権を交付する旨を定めた場合には、効力発生日に分割会社の新株予約権は消滅し、その新株予約権者は吸収分割契約の定めにしたがい、吸収分割承継会社の新株予約権者となります(759条5項)。 ü
権利義務の承継 ・一般承継 吸収分割の効力発生日に、吸収分割契約に基づき、吸収分割による承継の対象とされた吸収分割会社の権利は、吸収分割承継会社に、個別承継であれば必要とされる権利移転行為や権利移転のための条件を充たすことなく承継されます。また、吸収分割による承継の対象とされた吸収分割会社の債務は、効力発生日に、債務引受けの必要なく、法律上の効果として自動的に吸収分割承継会社に承継されます。同じような一般承継の法的効果が認められる吸収合併の場合とは異なり、吸収会社分割の場合には、吸収分割会社は消滅することなく存続するので、権利義務の一部は残ります。したがって、吸収分割による承継の対象となった権利義務だけが承継される点で異なります。そのため、吸収分割会社のどの権利義務が吸収分割により吸収分割承継会社に承継され、どの権利義務が残るかを吸収分割契約で特定しなければなりません。 ※公法上の権利義務の承継 分割会社が有していた許認可等の公法上の権利義務について、会社分割によって承継させることができるか否かは、その公法上の権利義務の根拠法令の規定に従うことになります。したがって、個別の検討が必要になります。また、税法上の権利義務については分割会社の租税債務を承継会社に承継させることは認められませんが、人的分割により分割対価である承継会社の株式が分割会社の株主に交付連れる場合は、承継会社は、分割会社から承継した財産の価額を限度として分割会社の租税債務について連帯納付の責任を負うことになります(国税通則法9条の2)。 ・労働契約の承継 会社分割の対象となる労働契約については、それ以外の一般契約とは異なる例外的な法律上の取扱いが適用されます。すなわち、労働契約以外の一般の契約では、会社分割契約に会社分割の対象として記載された場合にのみ承継会社への承継が行われるのに対して、労働契約の場合には、会社分割の対象となる事業に主として従事している労働者とそれ以外の労働者を区分して、会社分割の対象となる事業に主として従事している労働者については、会社分割契約に会社分割の対象として記載されていなくても、労働者本人が対象から除外されていることについて異議を述べれば承継が認められます。また、会社分割の対象となる事業に主として従事している労働者以外の労働者については、会社分割契約に対象として記載されていても、労働者本人が異議を述べれば対象から除外されることとされています(労働承継法4条、5条)。 ※労働協約の承継 吸収分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約については、そのうち吸収分割承継会社が承継する部分を吸収分割契約において定めることができます(労働承継法6条1項)。分割会社は、吸収分割契約を承認する株主総会の会日の2週間前の日の前日までに、労働協約を締結している労働組合に対して、労働協約を承継する定めがあるかどうか等の法定事項を書簡で通知しなければなりません(労働承継法2条2項)。 ・担保権の承継 担保権は根抵当権を除き、担保権が担保している被担保債権とともに処分する場合でなければ処分できないものとされていて、これは担保権の随伴性の原則と呼ばれています。この随伴性の原則は会社分割の際にも適用されます。したがって、会社分割の対象に担保権とその被担保債権の両方がともに含まれている場合にのみ分割会社から承継会社に承継されます。もっとも、仮に会社分割契約に被担保債権が会社分割による承継の対象として記載されているにもかかわらず、担保権についての記載がない場合でも、通常は解釈により、担保権は被担保債務に付随するとして、承継の対象とされるとしています。 @)根抵当権の承継 一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度で担保する根抵当権は、特定の被担保債権とともに処分を行うことが予定されていないので、会社分割における取扱いについては法律上特別な定めが置かれています。すなわち、まず、@分割会社が根抵当権者である場合、根抵当権の被担保債権の元本が確定する前に、会社分割が実行されると、この根抵当権は、会社分割の実行時点で存在する分割会社の債権に加え、会社分割実行後に分割会社と承継会社の各々が取得する債権も根抵当権の被担保債権となります(民法398条の10第1項)。また、A分割会社が根抵当権の被担保債権の債務者である場合、根抵当権が設定されている不動産が会社分割の対象となるか否かに関わりなく、会社分割の実行時点で存在する分割会社の債務に加え、会社分割実行後に分割会社と承継会社の各々が負担する債務も根抵当権の被担保債務となります(民法398条の10第2項)。このように根抵当権設定者は不安定な地位に置かれるため、根抵当権設定者が根抵当権の被担保債権の債務者ではない場合には。会社分割に対して、元本の確定を請求することができ、請求があった場合には会社分割が実行された時点で元本が確定したものとみなすとされています(民法398条の10第3項)。 A)企業担保権の承継 株式会社が発行する社債を担保するために社債を発行する会社の総財産を担保権の対象として設定される企業担保権については、担保権の対象となる債務を会社分割により承継させることはできないとされています(企業担保法8条の2)。企業担保権が担保する債務を承継させる旨を定めた会社分割契約の条文は無益的記載事項となります。 ü
債権者異議手続の瑕疵の効果─吸収分割当事会社の連帯責任 ・趣旨 債権者異議手続において各別の催告が行われるべきであるのに、その催告を受けなかった吸収分割会社の債権者は、吸収分割契約において吸収分割後に吸収分割会社に対して債務の履行を請求できないとされている場合でも、吸収分割会社に対して、同社が効力発生日に有していた財産の価額を限度として、債務の履行を請求することができます(759条2項)。また、各別の催告を受けるべきであったのに受けられなかった債権者は、吸収分割契約において吸収分割後に吸収分割承継会社に対して、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができます(759条3項)。 吸収分割は、分割当事会社の資産や負債の状況が変動し、また純資産の部も変動することもあり、会社債権者に大きな影響を与える可能性があります。吸収分割承継会社には、合併の場合の存続会社の債権者に生ずるのと同じような危険、すなわち、分割会社から承継した権利義務の財務状態が悪ければ債権回収が困難となるリスクが増大することになり、債権者にとって不利益となります。一方、吸収分割会社の債権者にとっては、相手方当事会社の経営状態の良し悪しにかかわらず、不採算部門を分割会社に残して他の部分を救済するような吸収分割が行われた場合には、固有のリスクが発生します。合併のような完全な包括承継とは異なり、会社分割の場合、部分的一般承継がかのうであるため、たとえば不採算部門の分社化や反対に不採算部門を吸収分割会社に残し業績の良好な事業部門を吸収分割承継会社に承継させる吸収分割のように、分割会社の権利義務が分割会社や承継会社のいずれかに一方的に有利または不利に承継されるおそれがあります。合併の場合には、複数の当事会社の権利義務が一体化されることになるので、仮に合併が失敗した場合一蓮托生になるのに対して、会社分割の場合は、一部の当事会社が破綻しても他の当事会社が継続していくことがありえるため、会社債権者の危険性は合併の場合よりも定型的に大きいと考えられます。そこで、吸収分割の場合は、債権者を保護するために、債権者異議手続をはじめとする債権者保護のための諸制度が設けられているのです。 債権者が異議を述べれば、分割会社は。債権者を害するおそれがないことを立証しないかぎり、債権者に対して弁済もしくは担保を提供し、または弁済を目的として相当の財産を信託会社等に信託しなければなりません(789条5項)。 ところが、各別の催告を受けなかった債権者は、異議を述べ救済を機会を逸する可能性が高いので、吸収分割後、分割会社か承継会社のいずれか一方の当事会社に対してしか履行を請求できないとされている場合であっても、他方の当事会社に履行を請求できることを認めることにより、債権者の保護が図られています。 ・連帯責任を追及できる債権者 759条2項及び3項の保護を受けることができる債権者は、異議を述べることができる吸収分割会社の債権者であって、各別の催告を受けるべき債権者です(759条2項括弧書)。債権者異議手続中にまたは異議申述期間経過後に債務発生原因が発生し、効力発生日までに生じた債務の債権者は、不法行為債権者を除き、債権者異議手続開始時点で会社に知られていない場合を除き、含まれていません。 吸収分割会社の債権者でもある金融機関や取引相手は、債務者である会社の公告に注意を払うべきこと、もしくは吸収分割を行うような場合はそれを通知させることを約させる、自衛措置を講ずることなどが期待できるという理由から、官報に加え日刊新聞紙への掲載または電子公告をすれば、不法行為債権者を除き、各別の催告を省略することができます(789条3項)。 ・責任の性質 @)不真正連帯債務 各別の催告をすべきであったのに、その催告を受けなかった分割会社の債権者の債権については、吸収分割会社と吸収分割承継会社の双方が物的有限責任を負います。この責任は、吸収分割契約において債務を負担するものとされた会社が負う本来の債務と同一の内容ですが、双方の会社の間に内部的な意思の連絡がなく、不真正連帯債務の関係になると解されています。 したがって、吸収分割会社の債権者は、分割会社と承継会社の双方に対して債務の全額を請求することができ、連帯債務者の1人に生じた事由は、弁済や相殺などの債権を満足させるものを除き絶対的効力を有しない。 A)物的有限責任 吸収分割会社と吸収分割承継会社の双方が負う責任は、物的有限責任である。すなわち、各別の催告が為されるべきであるのに催告を催告を受けなかった吸収分割会社の債権者は、吸収分割契約において吸収分割後に吸収分割会社に債務の履行を請求できない場合であっても、吸収分割会社に対して、吸収分割の効力発生日に、有していた財産の価額を限度として(759条2項)、また、吸収分割契約で会社分割後承継会社に債務の履行を請求できないとされていても、吸収分割承継会社に対して、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求できます(759条3項)。 ü
吸収分割の効力不発生(759条6項) 債権者異議手続が終了していない場合、または、吸収分割を中止した場合には、これまでの事項(759条1〜5項)は適用されません(759条6項)。759条6項の規定は、効力発生日までに債権者異議手続が終了していない場合には吸収分割の効力が発生しない旨を定めることにより、効力発生日の前日までに債権者異議手続を終了しておかなければならないことを明確にしたものです。効力発生日までに債権者異議手続が終了しておらず、吸収分割の効力が発生しなかった場合には、効力発生日後に債権者異議手続を終えたとしても、吸収分割の効力が生ずることはなく、効力発生日の変更手続きが必要となります。 吸収分割を中止した場合にも、759条1〜5項までの規定は適用されません。この吸収分割の中止については、会社法に規定はなく、解釈の問題となります。吸収分割の中止は、通常の契約と同様に、当事会社の代表者が単独で、または他の当事会社との合意により決定することとなりますが、その段階においてすでに株主総会承認決議が為されているときは、中止についても株主総会の承認決議が必要となります。また、吸収分割契約のなかで中止事由を決めておくことも可能です。 計算書類等の監査等(436条) 計算書
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